EP51 原龍王ドラゴゲネシス
ドラゴイードルに乗り移ったドラゴギヴィルは、優秀な三人の水の使徒、もとい、青き血のドラゴニュートに、自らの力の一部を分け与えた。三人のドラゴニュートは闇の三賢人となった。
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宇宙の中心を形成する十三銀河団の一つ、マジラ銀河団。ここに向かった騎士は自らをマジラと名乗った。
マジラ銀河団においても、星の連鎖崩壊の波は到達していなかった。しかし、マジラは感じていた。銀河団内の高温化を。銀河団内の温度は、指数関数的に上昇していた。
マジラはまず、太陽の異変を疑った。そして銀河団内にある3927個の太陽を一つずつ確認して回った。だが、これといった変化は観測されなかった。温度はさらに上昇する。
次に、マジラは恒星の異変を疑った。しかし放たれる光量に特出すべき変化はなかった。ついに氷の衛星が溶け始めた。
銀河団内の温度は上昇を続ける。このまま上昇が続けば、やがて分子間力は失われ、結合できなくなった分子は四方八方に飛び散り、物質が形状を維持できない恐れがあった。
異変はマジラにも起きていた。銀河団内に蔓延るあまりの熱量に、マジラの肉体が耐えられなくなっていた。身体の表面がジリジリと焼け、視界は二転三転し、今にも意識が溶け出そうとしていた。
薄れゆく意識の中で、マジラはチャトゥラ銀河団側の温度の上昇具合が激しいことに気づいた。
マジラは死に物狂いでチャトゥラ銀河団へと向かった。
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マジラ銀河団と共に、チャトゥラ銀河団に隣接するインドラ銀河団。そこに派遣された騎士は自らをインドラと名乗った。
インドラ銀河団内においても、星の連鎖崩壊の波は到達していなかった。しかし、インドラ銀河団では、大規模な太陽フレアが観測されていた。銀河団内に吹き付ける超強力な
衝撃波とプラズマの噴出により、インドラは銀河の端へと飛ばされた。
原因は不明だが、発生元は把握していた。チャトゥラ銀河団の方向から半円状にフレアは発生していた。チャトゥラ銀河団に何かがあることは明らかであった。しかし、衝撃波の力は凄まじくインドラは全く近づくことができずにいた。
インドラは光を放った。しかし光は衝撃波とぶつかり、干渉を受けて減退し、やがて衝撃波の向きに垂直円状に広がり、ついには衝撃波と同じ向きに沿って消滅した。
次にインドラは小惑星を押し固めて強固な盾を作った。盾は押し寄せる衝撃波をいなした。そして翼を創造し、自らの背中に結合させた。ドラゴゲネシスより生まれた原初の十二神将にも、原子を操る力が宿っていた。
盾により作り出される無風の空間での翼の細かな動きによりインドラは少しずつ発生源へと進んでいた。
しかし、発生源に近づくにつれ衝撃波の勢いは増し、小惑星でできた盾にも、端の側から少しずつひびが走った。
インドラがその翼で空間を押した瞬間、ついに盾は粉々になり飛ばされた。しかし同時に、インドラを妨げる衝撃波は止んだ。不思議に思ったインドラは辺りを見渡してすぐに気づいた。至る所で輝いていたはずの星たちは消え失せ、漆黒の闇のみがそこにあった。彼は未知の空間にいた。
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現在観測されている宇宙の中心、レグーノ銀河団に接する三つの銀河団のうちの一つであるチャトゥラ銀河団。ここに向かった騎士は自らをチャトゥラと名乗った。
チャトゥラ銀河団において、星の連鎖崩壊が始まってしまっていた。そしてチャトゥラは気づいていた。この異常な放射線量の原因も、星の連鎖崩壊の原因も。
レグーノ銀河団隣接部分に、巨大な塔が浮かんでいた。その塔が人工物であることは明らかであった。塔の先端からは、レグーノ銀河団に向けて赤色のレーザー光線が常に照射されていた。そのレーザー光線の周囲の放射線量は、チャトゥラ銀河団内のそれを遥かに凌駕していた。
この光線を止めれば事態は収まる。そしてこの光線は塔を破壊すれば止められる。チャトゥラはそう考えた。
チャトゥラは塔への攻撃を開始した。
塔はチャトゥラの身長の何百倍も巨大であった。殴る蹴るという単調な攻撃では傷一つつけることすらできなかった。次にチャトゥラは小惑星を塔に投げつけた。これも効果はあまり見込めなかった。
しかし塔から、一人の男が現れた。
「お前は何者だ」
チャトゥラは尋ねた。
「我はシヴァル。主の命によりこの塔を造り、そして管理する者だ。邪魔者は排除する」
シヴァルはチャトゥラに襲いかかった。チャトゥラも標的をシヴァルに定めた。なにより、巨大な塔の相手をするよりも、自分と近しい物の相手をする方が容易いからだ。
しかしシヴァルは強敵であった。少なくとも、創られたばかりのチャトゥラは苦戦を強いられていた。
チャトゥラの拳や蹴りはガードされ、逆にシヴァルの攻撃をもろに受けてしまった。
『どこにいる、チャトゥラ』
脳内にマジラの声が響いた。二人の意識が繋がった。
『見つけた。レグーノ方面だな。今行く』
シヴァルの拳がチャトゥラの腹にめり込んだ。
『戦っているのか。チャトゥラ、何がなんでもそいつを押さえるんだ』
『…ああ、何がなんでもだ』
チャトゥラはシヴァルの腕を掴み、持ち上げて自らの背中に回した。そして身体を折り、腕だけを押さえて背中のシヴァルを正面へと持ってきた。開いたシヴァルの脇下に両腕を通し、シヴァルの肩を押さえつけた。続けて両足を腹と足に絡ませた。
『今だ、マジラ』
全身が燃え盛るマジラが、亜光速でシヴァルの腹に蹴りを入れた。
戦いは終わった。
「吐け、貴様の主人は誰だ。どうすればこれを止められる」
「ダメだ、死んでいる」
チャトゥラはシヴァルの肉体を放り投げた。
突如として、塔が大爆発を起こした。
「何だ?」
二人が呆気に取られていると、黒煙の中から一人の騎士が飛び出してきた。
「インドラ!」
塔を破壊したその正体はインドラであった。
「インドラ、何があった?」
「分からない。とにかくチャトゥラ銀河団の方向から物凄い衝撃波が噴き出していたんだ。俺はそれに抗いながらチャトゥラ銀河団を目指した。だが盾も破壊されて諦めた瞬間、俺は未知の空間にいた」
「未知の空間?」
「ああそうだ。そこには何もなかった。星の輝きすら。とにかく、俺はその空間を調査しようと一歩進んだだけだった。気がつくと俺はチャトゥラ銀河団で、塔を破壊していた」
「なるほど。とりあえず星の連鎖崩壊は収まった。今はそれでよしとしよう」
「そうだな」
「帰ろう。主様のいるレグーノ銀河団へ」
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「実験第五十七万二千九百三十六回目開始します」
「メタスタード注入開始」
「了解。メタスタード注入開始」
「出力安定。セカンドエンジン点火せよ」
「了解。エンジン点火」
噴射口から青白い炎が噴き出す。
「試験機、亜光速に到達。予定速度まで残り0.02739%」
「大変です!エンジン温度が危険域に到達。このままでは!」
モニターに試験機が爆発する様子が映し出された。
「実験第五十七万二千九百三十六回目、失敗」
「やはり不可能なのだ。救銀記、インドラの瞬間移動などという神話の再現など」
この実験な否定的な研究者はそう吐き捨てた。
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




