EP50 水龍王ドラゴイードル
ドラゴギヴィル――闇の力に取り込まれたドラゴプロクスは、宇宙を滅亡の寸前にまで追いやった。
宇宙の危機を悟ったドラゴゲネシスは、闇に対抗できる唯一の力、ドラゴフォースの力を求めた。
ドラゴゲネシスは宇宙全域を探し回った。そして拡張を続ける宇宙の端と同じ速さで進むことで、ようやくドラゴフォースの魂との接触に成功した。
「主なる存在、ドラゴフォースよ。あなたが必要だ。どうか力を貸して欲しい。ドラゴギヴィルに抗う術は、もうあなたにしか残されていないのです」
『ダメだ』
「何故ですか!?」
『争いは次の争いを生むだけだ。私はもう戦わない』
「しかしこのままでは、宇宙が破壊されかねませんよ!」
『この宇宙は私の意思で始まったものではない。終わりの時を迎えるならば、それもまた運命だ。憂いはない。それに終わりは始まりの始まりだ。どうして貴様は維持に固執する?』
「新たなる始まりに、私がいる保証はないではないですか。私は宇宙に安定をもたらした。何もかも全て私から生まれた。私はそれを守りたい、守らなければならない。それだけです」
『まさに傲慢だ。己の闇を光の仮面で偽っておるな』
「あなたこそ、自分の弱さを、己の罪を棚に上げて現実から逃避している。あなたが我を通すなら、私も自分の正義を貫きます」
ドラゴゲネシスは一本の剣を創造し、その中にドラゴフォースの魂を固定した。その瞬間、宇宙の拡大は止まった。
森羅光封剣――ドラゴゲネシスは剣をそう呼んだ。
ドラゴプロクスが全てを焼き尽くそうとした瞬間、ドラゴゲネシスは森羅光封剣をドラゴプロクスに突き刺した。
「グァァァァァァァァァァァァァァァァ」
咆哮とともにドラゴプロクスの動きは止まった。
これにて八億年に渡る争乱は終結した。
争いを終わらせたドラゴゲネシスは宇宙の王となった。
王は使徒をドラゴニュートと呼んだ。ドラゴニュートはドラゴゲネシスを王として称えた。
宇宙の中心から遠く離れたドラゴイードルの銀河において、ドラゴギヴィルはドラゴイードルと接触した。
「決着はついた。あなたには礼を言おう」
「その必要はない。代わりに貴様の体を貰おう」
ドラゴギヴィルはドラゴイードルの中へと入った。
「復讐を始めよう」
突如として宇宙の中心地であるレグーノ銀河団において星の連鎖崩壊が発生した。
ドラゴゲネシスは調査を開始した。そして星々の分子間の結合が不安定化していることを発見した。ドラゴゲネシスは自らの力で分子を抑えつつ、12体の騎士を創造した。そして調査の為、十三ある銀河団のレグーノ銀河団を除いたそれぞれに派遣した。
これが後に十三の厄災と称される大異変の始まりであった。
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ドラゴイードルの銀河のあるアンディラ銀河団。十三銀河団の端であるここにやってきた騎士は、自らをアンディラと名乗った。
この銀河団にはまだ連鎖崩壊の波は到達していなかった。しかし、アンディラは温度が異常に低いことに気づいた。発生源はやはりドラゴイードルの銀河であった。その銀河だけ、さらに低温だった。絶対零度を下回る温度下で、原子の斥力と引力が反転していた。このまま全ての引力が斥力へと反転してしまえば銀河は爆散してしまう。アンディラはどうにかして宇宙の温度を安定状態に戻さなければならなかった。
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アンディラ銀河団に隣接するシンドゥーラ銀河団。そこに派遣された騎士は自らをシンドゥーラと名乗った。
シンドゥーラ銀河団では同時多発的ガンマ線バーストが発生していた。数々の恒星がエネルギーを放出してその生涯を終えていた。そのためシンドゥーラ銀河団内においてエネルギーが漸飽和状態となっていた。このままガンマ線バーストが続けば、いづれエネルギーが飽和し、臨界点を突破してしまう恐れがあった。その先の事象は誰にも想像がつかなかった。しかしこのことが危機以外の何でもないことはシンドゥーラも悟っていた。
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アンディラとシンドゥーラは互いに状況を把握し合った。
「シンドゥーラ将軍、状況は?」
「恒星のガンマ線バーストが同時多発的に発生しています。このままエネルギーが飽和状態に到達して臨界点を突破すれば、何が起こるか全く予想できません」
「なるほど」
「アンディラ銀河団においては?」
「ああ、銀河内の温度が絶対零度を下回っている。このままではドラゴゲネシス様と共に創られた因果が破綻してしまう」
そしてシンドゥーラは、シンドゥーラ銀河団内の恒星をアンディラ銀河団内へ移動させる作戦を立てた。
「では、シンドゥーラの恒星達をアンディラに差し上げましょう。これでうまくまとまる」
「それはありがたい。早速手筈を整えましょう」
これが、いわゆる“星運び“神話の起源である。
シンドゥーラの力により放たれた恒星はガンマ線バーストによってエネルギーを放出し、それが熱エネルギーへと変換され、アンディラ銀河団内部を急速に温めていった。一方、ガンマ線バーストの発生源である恒星を取り除かれたシンドゥーラ銀河団では、エネルギー供給を飽和状態になる前に断ち切ることができた為、危機は回避された。
しかし、ドラゴイードルの銀河から飛び立った黒い影の存在に、シンドゥーラもアンディラでさえも気づかなかった。
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「いやだ。まだねむたくないもん」
「しょうがないわね。お母さんがお話を読んであげるから、終わったら寝るのよ」
「うん」
青い瞳の少女は頷いた。
「昔々、あるところに二人の神様がいました」
一人の神様は、私たちみんなのお父さん。もう一人の神様は、この宇宙の王様。
王様にはたくさんの子どもがいました。
二つの銀河に危機が迫った時、王様は二人の子どもをお遣わしになられました。二人の子どもは喧嘩ばかり。それでは状況は悪くなる一方です。
二人の子どもは話し合うようになりました。そして協力すること、共に手を取って助け合うことを約束しました。
二人の子どもは冷たく閉ざされた銀河に輝く星々を運びました。星の光によって銀河は温められ、今もこうして人が暮らせる銀河になりました。この運ばれた星を今の私たちは彗星と呼びます。
「――めでたしめでたし」
「すいせい…?おかあさん、すいせいってなに?」
「そうね、流れ星のことよ」
「ながれぼし…」
「年に一度、星運びのお祭りがあるでしょ?」
「うん。やたいがでるやつ」
「そうね。あのお祭りはね、助け合った二人の子どもをお祝いする為にやっているのよ。お空に星が流れたら、ニーナもお願い事をするでしょ?」
「うん」
「それが流れ星、彗星よ。あれは二人の子どもが協力したことで始まったことなの」
「そうなんだ。ふたりはなかよくなれたんだね」
「そうね。ニーナも、お友達と仲良くして、助け合っていくのよ」
「うん」
「さて、そろそろ寝ましょうか」
「うん。おやすみおかあさん」
「おやすみ、ニーナ」
夜空に二つの星が流れた。
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




