EP49 炎龍王ドラゴプロクス
何一つ存在しない無の空間に裂け目が開き、そこから光が差し込んだ。光は無を贄としてドラゴフォースとなった。
同時に、光に照らされなかった部分は闇となり、ドラゴギヴィルが誕生した。
ドラゴギヴィルという自らと異なる存在を知ったドラゴフォースは、すぐさま闇を包み込み、光の中に取り込んだ。それだけのことだが、概念が現実に影響を及ぼすという奇跡を伴って行われた事象であった。
長い年月をかけてドラゴギヴィルを封印したドラゴフォースは、休眠状態に入った。
ドラゴギヴィルを恐れるドラゴフォースの意思は光の使徒を生み出した。
闇への恐怖は、やがて憎しみへと変わった。ドラゴフォースの意思、光の使徒はドラゴギヴィルを支配しようとした。しかしその反面、和解の道を願う気持ちも確かにあった。その感情から、唯一ドラゴギヴィルを擁護する使徒が生まれた。
センセイと呼ばれたその使徒と他の使徒は意見の相違により対立した。センセイは対話の重要性を説きドラゴギヴィルに言葉を教えた。無意識のうちにセンセイは闇に魅入られていた。闇もまた、その光の使徒に好意を寄せていた。二人の繋がりは深くなり、センセイの反逆とドラゴギヴィルの強大化を恐れた使徒達はついにセンセイを処分した。
しかし、それが闇の覚醒のトリガーとなってしまった。ドラゴギヴィルは全てを破壊し、ドラゴフォースの束縛から抜け出した。
使徒達は闇を討つため自らを犠牲にした。予想されうる事態に備え、使徒の最後は決まっていた。
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光と闇の衝突。宇宙の始まり、ビックバン。ドラゴフォースは光そのものへと還元し、世界は光に包まれた。光輝く高温高圧の火の玉宇宙において、そのエネルギーの集合体、ドラゴプロクスが誕生した。
数万年の時を経て、始まりの光はやがて落ち着き宇宙の温度は下がり出した。
深い霧の中でドラゴプロクスは孤独であった。彼は自らのエネルギーの一部からドラゴメイドを創造した。
光の勢いが弱まると、代わって闇が台頭し始めた。宇宙は一気に寒冷化の道を進んだ。冷え切ったエネルギーのうねりから、ドラゴイードルが誕生した。
やがてドラゴプロクスとドラゴイードルは遭逢した。光より生まれしドラゴプロクスと、闇より生まれしドラゴイードル。対決は宿命であった。
宇宙全域を巻き込んだ二大龍王の決戦は数十万もの歳月を用した。宇宙は温暖化と寒冷化を繰り返した。
せめぎ合う二つの膨大なエネルギー。その衝突の末、宇宙は安定した温度に到達した。その瞬間、新たな龍王、ドラゴゲネシスが誕生した。
ドラゴゲネシスは元素を生み出した。光が直進できるようになり、霧が晴れた。宇宙の晴れ上がりである。
ドラゴゲネシスは元素から物質を創造し、ドラゴプロクスとドラゴイードルの存在を固定した。ドラゴゲネシスから肉体という束縛を受けた二大龍王に、ついに決着はつかなかった。
宇宙は晴れ上がり、光子に結合していた粒子であるエスタルダストが光と共に宇宙全域に広がった。エスタルダストはドラゴゲネシスと同時に誕生した。龍王のエネルギーの結晶であった。
エスタルダストは集合し、他の元素を取り込み、やがて巨大な恒星を形成した。その恒星が寿命を迎え超新星爆発を起こした際の膨大な熱や圧力のエネルギーが、さらなる元素を生み出し、エスタルダストと共に数多の恒星の原子核を形成した。
こうして宇宙に星が誕生した。星は集まり銀河を形作った。さらに銀河間はエスタルダストによって結ばれ、銀河の生死をエスタルダストが媒介する今の宇宙の基礎が出来上がった。この頃には、ビックバンから100億年が経過していた。
ドラゴゲネシスはドラゴプロクスとドラゴイードルを当時の宇宙の果てと果てに保管した。そこからドラゴプロクスとドラゴイードルを主とした二つの銀河が誕生した。
始まりの光として散ったドラゴフォースとは異なり、ドラゴギヴィルは宇宙を放浪していた。そしてドラゴイードルの銀河へと辿り着いたのであった。
「我が下僕ドラゴイードルよ。お前の望みはわかっている」
「望み?」
「そうだ。ドラゴプロクスとの決着をつける。そうだろう?」
「その通りだ。奴を倒して俺の優位を知らしめる」
「ドラゴプロクスのもとまでは俺が導いてやろう。今こそ決着をつける時だ」
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一方ドラゴプロクスは、ドラゴメイドと共に悠久の時を過ごしていた。ある時、二人は星の創造を眺めていた。星に近づいたドラゴメイドの一部がエスタルダストと結合し、千切れた。二人はその事を笑い合ったが、ドラゴメイドの一部を伴って形成されたその星で、生命が生まれた。ドラゴプロクスには命を生み出す力があった。ドラゴプロクスより生まれたドラゴメイドにもその力はあった。
二人はその生命体を育て始めた。最初の生命は細菌のように小さかった。そこから成長と分裂を繰り返し、やがて集合して一つの生命体となった。
炎の使徒の誕生の瞬間であった。
炎の使徒は自己分裂によってその数を増やしていった。ドラゴプロクスは炎の使徒に星を与えた。
そこへ、ドラゴイードルが襲来した。
ドラゴイードルは炎の使徒の一人を自らの銀河に連れ去った。
「貴様はなんだ」
使徒はまだ完全な肉体を持ってはおらず、喋ることなど尚更できなかった。
ドラゴイードルは使徒に言葉を教えた。さらに宇宙や銀河の歴史、ドラゴプロクスとの因縁、エスタルダストの特性など、ドラゴイードルの知りうる知識を全て与えた。
ドラゴイードルは、戦力の確保の為、使徒を自らの分身として仕立て上げようとした。ついに、自らの体の一部を使徒へと移植した。使徒の体に、ドラゴイードルの青い血が流れた。水の使徒の誕生の瞬間であった。そして自らに似せて、水の使徒の肉体を構築した。
「私は水の使徒。あなたに忠誠を誓う者です」
「そうだ。子を作れ。水の使徒の軍団が必要だ」
「かしこまりました」
水の使徒は自己分裂と成長を繰り返し、ドラゴイードルの命令通り、水の使徒の軍団が結成されるに至った。
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そしてドラゴイードルと水の使徒の軍団は、ドラゴプロクスの銀河へと侵攻した。こうして、八億年の争乱が始まった。
ドラゴプロクスとドラゴイードル、そして炎の使徒と水の使徒による八億年に及ぶ大戦争、これを後に八億年の争乱と呼んだ。
突然奇襲を受けたドラゴプロクスの銀河は大混乱に陥った。
始めは肉体という武器を持つ水の使徒が優勢となった。
水の力の台頭により宇宙に極度な寒冷化が起きた。
なんとか追っ手を退き、別の銀河に逃れたドラゴプロクスは対抗手段を考えた。
まずは炎の使徒の強化にでた。ドラゴプロクスも自らに似せて炎の使徒に肉体を与えた。次は自身の強化であった。この時ドラゴプロクスに接触したのが、ドラゴギヴィルであった。
ドラゴギヴィルはドラゴプロクスに力を与えた。
闇の力を手にしたドラゴプロクスは復讐を開始した。怒りの業火で宇宙一帯を焼き尽くした。
突如としてドラゴイードルは劣勢となった。ドラゴイードルを死の淵へ追い詰め、止めを刺そうとした瞬間、ドラゴプロクスを一本の剣が貫いた。その剣こそが、ドラゴゲネシスにより創造された、森羅光封剣であった。
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




