EP44 繋がる
アブドは目を覚ました。
…ここはどこだ?真っ暗で何も見えない。確か俺は、前にもここに来たことが…。
アブドが一度瞬きをすると、目の前の景色が変わった。赤茶色の土の上に、少年が倒れていた。
おい!大丈夫か!…え!?
少年に近づこうとするも、アブドの体は動かなかった。
どうなってんだこれ。この声も聞こえていないのか?何なんだよ。ここ。
ふと視界に、黄色い光が映った。顔を上げると、少年の頭上には龍がいた。龍が飛び立つと、黄色い光線は少年に当たる直前に屈折した。
『タケル、今マデ、アリガトウナ』
しかし龍に、その光線は直撃した。
「ボルケーノォォォォォォォォ!!!!」
少年は叫んだ。今の、龍の声って…。俺がデトルートに触れた時に聞いた声だ。まさかこれは。
「アアアァァァアアッッッ!!!」
少年に目を向けると、彼は龍の肉を引きちぎって食べていた。
「コロスッ、コロスッ、コロスッ!ウガァァァァッッ!!グァァァァッッ!ガァァァァァァッッッ!!」
少年…いや、龍は彼をタケルと呼んでいた。タケルは絶叫と悶絶の中で姿を変えていった。タケルには翼と尻尾と角が生え、体が真っ赤に染まっていた。
「コロシテヤルッッ!」
タケルが地面を蹴り、どこかへ飛び去っていった。
砂埃が立ち俺は目をしばたかせた。すると俺はまた真っ暗な暗闇の中にいた。
俺は今、タケルの記憶を見ているのか?
もう一度瞬きをすると、うずくまるタケルと、十字架にかけられた女性が目に入った。
その女性は首と手足とが切断され、落下した。
「サイトウさァァァんッッッッ!!!!アァァァァーッッッッ!!!!!」
タケルは叫んだ。
次の瞬間には周囲は闇に染まり、十字架の下で、真っ赤な肉片を見て崩れ落ちるタケルの姿があった。
「オガァ、ザン…」
タケルは泣いていた。
三度、気がつくと俺は暗闇の中にいた。どうやら記憶の一点を覗くごとに、ここに戻ってくるらしい。ここは一体…?
瞬きをすると、また景色が変わった。次の記憶だ。
「タケル…」
タケルの名を呼んだ少女が手を伸ばす。
「…!…やめっ…」
「もう、いいの。タケル、ありがとう」
「ビオ、ロ…ッッ!」
「最後に言い残すことは?」
ビオロは何者かに銃口を突きつけられていた。
「私は…本当に、タケルが…大好きよ」
「ははは、最後まであざとい女だ」
バン、バン、バン
三発の銃弾が、ビオロの頭を吹き飛ばした。
「アアアアァァァアアアアアッッッ!!!!」
…ッ!これは…。
3人の姿がぼんやりとしていき、目の前の記憶が新たに形作られた時、タケルはまた何かを食べていた。
俺は目を疑った。あれは…タケル?タケルがタケルを…食っているのか…?
「…ガァァアアアアッッ!!!」
再びタケルに翼と尻尾と角が生えた。しかし肌の色が異なり、赤と青とが混ざっていた。
俺はタケルが、ビオロを殺した生命体達を惨殺する姿をただ見ていた。発狂しつつ殺していく様はどこか悲しげであった。
その記憶はここで途切れた。次に目を開けた時、目の前にはタケルがいて、タケルの目の前には暗黒の空間が広がっていた。これは、ブラックホール。
タケルがブラックホールに近づく。すると、落ちるようにして吸い込まれていった。
その刹那、ブラックホールは急膨張し銀河全域を飲み込んだ。そしてブラックホール自身も、ある一点へと吸い込まれてしまった。その一点の先に、タケルはいた。
タケルは目の前の球体を噛み砕いた。タケルは気を失った。
またしても空間が歪み始めた。この記憶も終わる。しかし今回は何かが違う。次第に意識がぼんやりとしてきた。
「目が覚めたか?」
「…あぁ。…あんたは…誰だ?…いや…俺は…誰だ…?」
薄れゆく意識の中で、タケルの声を聞いた。
「俺はドミナード。そしてお前は、デトルートだ。おいおい、忘れちまったか?俺たちは共に野望を抱いた仲じゃないか」
デトルート…。そんな…!
「野望?」
「あぁ。この宇宙を、支配するってな」
ダメ…だ。お前はタケルだ。ドラゴギヴィルに…負けるな…!
「…そう…だったな」
「さぁ、始めようか」
タケル!タケル…!タケ…ル…。
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アブドは目を覚ました。
「あれ、ここは?」
「お目覚めになられましたか」
俺はどこかの一室のベッドの上にいて、そばに一人の女性がいた。
「すぐに先生と総督に連絡して参ります」
あの人は看護師といったところだろうか。部屋から出ていった。
俺は天井に手を伸ばした。
「タケル…」
バゴンッ
「わっ」
部屋のドアが勢いよく開いた。俺は慌てて手を掛け布団に潜り込ませた。
「救世主様!お目覚めになられましたか!」
「あ、ああ。もう大丈夫だよ。俺は気絶を?」
「ええ。かなりの高さから落ちていましたよ。ご無事で何よりです」
「そうなのか。あんまり覚えてないや」
「左様でございますか。救世主様」
やけにもじもじとしていたウィルが姿勢を正して真っ直ぐに俺の目を見た。
「何だよ、急に改まって」
「一度のみならず、二度もバーバル街を救って頂き、ありがとうございました」
ウィルはそう言って深々と頭を下げた。
「そんな、顔を上げてくれよ。礼を言われる程じゃないって」
「とんでもない。あなたは我々の命の恩人です。あなたがいなければ――」
「わかった、わかったよ。だから顔を上げて」
感謝されるのは慣れないな。
「お疲れでしょう。ゆっくり休んでいって下さい。お望みの物は何でも用意致しますので」
「ありがとう。でもゆっくりもしていられないんだ。アイツはまだ生きている。また何かをしでかす前に止めないと」
「どうしてそこまで」
「これが俺の使命だからです。そうだ、一つお願いが」
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俺はマギデッドの店に入った。
「成長されましたな。いい顔になられて」
俺の顔をまじまじと見つめたマキデッドは、開口一番にそう言った。
「はい。ドラゴフォースの力を継承しました」
マギデッドはその場で床に額をつけた。
「主様、これまでの非礼、誠に申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます」
「え、え?顔を上げて下さいよ」
「わしはこれでも元十二神将。本来なら主様への愚行などあってはならない事なのです」
「…前は俺がヤワだったってことにしておいて下さい。でも今は違いますから」
マギデッドは顔を上げた。
「左様でございましょうな」
「俺、ドラゴギヴィルと戦った時に声を聞いたんです」
「ほう。詳しく聞きましょう」
マギデッドはテーブルの奥に座った。
「ささ」
「ああ」
俺は対面するように座った。
「3人の声を聞きました。それぞれタケルと名前を呼んでいて。その後気絶している間に、タケルの記憶を見ていました」
「なるほど。繋がりましたか。アカシックレコードに」
「アカシックレコード…あれが?」
「恐らくはそうでありましょうな」
あれが、アカシックレコード。なら俺は、何度も…?
「そのタケルという存在の話、聞かせてもらえますかな?」
「あ、はい。タケルはどんどん辛い目にあっていって、最後の記憶を見た中で気づきました。そのタケルこそがデトルートだったのです。真のドラゴギヴィルはドミナードと呼ばれる存在。タケルは操られているんです」
「それで?」
「俺はタケルを助けたい。タケルを助けられれば、ドラゴギヴィルを魂まで還元できる。再封印が可能です」
「ふむ。ではいかにしてタケルを助けるかということですな」
「はい」
マギデッドは固く目を閉じた。
「話を聞くに、タケルの心は酷く憔悴しております。彼の心に語りかけ、呼び戻すことができればあるいは」
「心に…でもどうやって?」
「やはり尋ねるしかないでしょう。アカシックレコードに」
「目を閉じて」
「はい」
「深く息を吐く」
俺は息を吐いた。
「こめかみに力を入れて」
俺は奥歯を噛み締めた。キーンという甲高い音が響く。
「一気に抜く」
ふと、何も聞こえなくなった。
「何が見える?」
「…ドラゴギヴィル。…液体が噴き出している…血だ。…青い血や…白い血…男も…女も…子供も…ウィル?」
俺ははっと目を開けた。
「奴がまたここに来る。俺を狙って。どこか遠くに逃げないと!」
「話は聞かせてもらったわ」
暖簾を上げ、一人の女性が店の中に入ってきた。
「アロン…さん…」
パシンッ
「ばかっ!」
アブドは頬をはたかれた。
「すいません…でも…俺…」
アロンさんは片膝立ちで平伏した。
「ご無事で何よりでございます、主様。私めより一つご提案が。私の船でクビラと共に宇宙の最果てまで逃げましょう。そこでゆっくり繋がればいいのです。護衛は私が務めます」
「分かった。そうしよう。それが一番だ」
「では早速私の船へ」
「俺、ウィルに挨拶してくるよ」
「かしこまりました」
アブドは店から出ていった。
「アロン、という名だったのじゃな。アンディラ」
「お久しぶりです。クビラ。生きていらしたとは」
「ふふふ、わしはまだ死ねん。それに、其方こそよくぞ彼らを相手に生還したものよ」
「私もまだ、死ねないので」
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「左様でございますか。しかしもう発たれるとは」
「うん。やるべきことが残っているんだ。来れてよかったよ」
「私もまた会えて、直接謝罪とお礼を申し上げられてよかったです。是非またいらして下さい」
「ああ。約束だ」
二人は固く手を握りあった。
「さようなら。レグーノ」
3人を乗せた船は星を後にした。
「計算完了。オーバードライブシステム起動」
船はオーバーワールドに入った。
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「起きろ。デトルート」
ドミナードの声で、デトルートは目を覚ました。
「腹の穴さえ無ければ、あのような一撃を喰らうこともなかった。お前は悪くないぞ、デトルート」
「はい」
「奴を倒すには、やはり見つけなければいけないな。アカシックレコードを」
「はい」
「集え」
裏十二神将が集結した。
「お前達はドラゴゲネシスとアカシックレコードを捜索せよ。俺はアカシックレコードを探しつつ星の破壊を始める。奴を誘き寄せる」
「「「はっ」」」
十二人の大将は散っていった。
「デトルート」
「はい、ドミナード様」
「お前は強い。それ証明しようではないか」
「はい」
――――――――――――――――――――
ピピピピピピ
操縦室に警戒音が鳴り響いた。
「経路遮断?まさか、アレがここまで!?掴まって。緊急停止!」
アロンはレバーを押した。船がオーバーワールドから抜ける。船内は激しく揺れた。
「何が起きたんですか!?」
「あれを見て」
アロンはフロントガラスの奥を指差した。よく見ると、ある所を境に星がなくなっていた。先には何も無かった。
「無の境界よ。本来の行き先も飲み込まれてしまったわ。こんなに早く進行しているなんて。ここも離れた方が良さそうね」
船は折返し、再びオーバーワールドに入った。
「何なんですか、無の境界って」
「主様、全ての銀河は繋がっているのです。銀河が崩壊する時、エスタルダストが他の銀河に供給されます。そしてそのエスタルダストを元に、新たな銀河が誕生するのです。しかしある時、崩壊ではなく消滅した銀河がありました。それがポイント・ミデン。宇宙の端にあったその銀河から、連鎖的に銀河の消滅が始まりました。そうして生まれたのが、無の境界なのです。無の境界の先にはその名の通り、何も存在しないのです。決して飲み込まれてはなりませんぞ」
「分かったよ。ありがとう」
「そろそろ着くわよ」
船はオーバーワールドを抜けた。目の前に一つの惑星があった。
「ここなら外界と隔絶されている。見つかることも当分ないわ」
3人は辺境の惑星、カニーツに降り立った。
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それは突然起こった。レグーノに"星"が降った。
レグーノは突如、暗雲に包み込まれた。
バーバル街庁舎が倒壊した。周りに人だかりができた。
パチン
鋭い破裂音が響き渡った。
地面から炎の龍と氷の龍が飛び出した。
人々は大きく開いた龍の口に噛み砕かれた。後には骨すら残らなかった。
火柱がそこここに立った。街は炎に包まれた。
「テメェ!この前の野郎だな!」
大男が鈍器で襲いかかった。ドラゴギヴィルは頭を掴み、潰した。青い血が飛び散った。
ドラゴギヴィルは歩き出した。そして目に入った人々を一人ずつ撫でるように殺していった。
男の四肢を捥ぎ取り、女を切り刻み、子供を踏み潰した。
ドラゴギヴィルは星中を渡り歩いた。
パシフィスの塔が激しく燃えていた。
ドラゴギヴィルは広場に寝転び、その様子を眺めていた。
「つまらないな」
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




