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【完結】アカシックレコード  作者: 白黒羊
第陸章 森羅回帰篇

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EP44 繋がる

アブドは目を覚ました。

…ここはどこだ?真っ暗で何も見えない。確か俺は、前にもここに来たことが…。

アブドが一度瞬きをすると、目の前の景色が変わった。赤茶色の土の上に、少年が倒れていた。

おい!大丈夫か!…え!?

少年に近づこうとするも、アブドの体は動かなかった。

どうなってんだこれ。この声も聞こえていないのか?何なんだよ。ここ。

ふと視界に、黄色い光が映った。顔を上げると、少年の頭上には龍がいた。龍が飛び立つと、黄色い光線は少年に当たる直前に屈折した。

『タケル、今マデ、アリガトウナ』

しかし龍に、その光線は直撃した。

「ボルケーノォォォォォォォォ!!!!」

少年は叫んだ。今の、龍の声って…。俺がデトルートに触れた時に聞いた声だ。まさかこれは。

「アアアァァァアアッッッ!!!」

少年に目を向けると、彼は龍の肉を引きちぎって食べていた。

「コロスッ、コロスッ、コロスッ!ウガァァァァッッ!!グァァァァッッ!ガァァァァァァッッッ!!」

少年…いや、龍は彼をタケルと呼んでいた。タケルは絶叫と悶絶の中で姿を変えていった。タケルには翼と尻尾と角が生え、体が真っ赤に染まっていた。

「コロシテヤルッッ!」

タケルが地面を蹴り、どこかへ飛び去っていった。

砂埃が立ち俺は目をしばたかせた。すると俺はまた真っ暗な暗闇の中にいた。

俺は今、タケルの記憶を見ているのか?

もう一度瞬きをすると、うずくまるタケルと、十字架にかけられた女性が目に入った。

その女性は首と手足とが切断され、落下した。

「サイトウさァァァんッッッッ!!!!アァァァァーッッッッ!!!!!」

タケルは叫んだ。

次の瞬間には周囲は闇に染まり、十字架の下で、真っ赤な肉片を見て崩れ落ちるタケルの姿があった。

「オガァ、ザン…」

タケルは泣いていた。

三度、気がつくと俺は暗闇の中にいた。どうやら記憶の一点を覗くごとに、ここに戻ってくるらしい。ここは一体…?

瞬きをすると、また景色が変わった。次の記憶だ。

「タケル…」

タケルの名を呼んだ少女が手を伸ばす。

「…!…やめっ…」

「もう、いいの。タケル、ありがとう」

「ビオ、ロ…ッッ!」

「最後に言い残すことは?」

ビオロは何者かに銃口を突きつけられていた。

「私は…本当に、タケルが…大好きよ」

「ははは、最後まであざとい女だ」


バン、バン、バン


三発の銃弾が、ビオロの頭を吹き飛ばした。

「アアアアァァァアアアアアッッッ!!!!」

…ッ!これは…。

3人の姿がぼんやりとしていき、目の前の記憶が新たに形作られた時、タケルはまた何かを食べていた。

俺は目を疑った。あれは…タケル?タケルがタケルを…食っているのか…?

「…ガァァアアアアッッ!!!」

再びタケルに翼と尻尾と角が生えた。しかし肌の色が異なり、赤と青とが混ざっていた。

俺はタケルが、ビオロを殺した生命体達を惨殺する姿をただ見ていた。発狂しつつ殺していく様はどこか悲しげであった。

その記憶はここで途切れた。次に目を開けた時、目の前にはタケルがいて、タケルの目の前には暗黒の空間が広がっていた。これは、ブラックホール。

タケルがブラックホールに近づく。すると、落ちるようにして吸い込まれていった。

その刹那、ブラックホールは急膨張し銀河全域を飲み込んだ。そしてブラックホール自身も、ある一点へと吸い込まれてしまった。その一点の先に、タケルはいた。

タケルは目の前の球体を噛み砕いた。タケルは気を失った。

またしても空間が歪み始めた。この記憶も終わる。しかし今回は何かが違う。次第に意識がぼんやりとしてきた。

「目が覚めたか?」

「…あぁ。…あんたは…誰だ?…いや…俺は…誰だ…?」

薄れゆく意識の中で、タケルの声を聞いた。

「俺はドミナード。そしてお前は、デトルートだ。おいおい、忘れちまったか?俺たちは共に野望を抱いた仲じゃないか」

デトルート…。そんな…!

「野望?」

「あぁ。この宇宙を、支配するってな」

ダメ…だ。お前はタケルだ。ドラゴギヴィルに…負けるな…!

「…そう…だったな」

「さぁ、始めようか」

タケル!タケル…!タケ…ル…。

―――――――――――――――――――

―――――――――――――――――――

アブドは目を覚ました。

「あれ、ここは?」

「お目覚めになられましたか」

俺はどこかの一室のベッドの上にいて、そばに一人の女性がいた。

「すぐに先生と総督に連絡して参ります」

あの人は看護師といったところだろうか。部屋から出ていった。

俺は天井に手を伸ばした。

「タケル…」


バゴンッ


「わっ」

部屋のドアが勢いよく開いた。俺は慌てて手を掛け布団に潜り込ませた。

「救世主様!お目覚めになられましたか!」

「あ、ああ。もう大丈夫だよ。俺は気絶を?」

「ええ。かなりの高さから落ちていましたよ。ご無事で何よりです」

「そうなのか。あんまり覚えてないや」

「左様でございますか。救世主様」

やけに()()()()としていたウィルが姿勢を正して真っ直ぐに俺の目を見た。

「何だよ、急に改まって」

「一度のみならず、二度もバーバル街を救って頂き、ありがとうございました」

ウィルはそう言って深々と頭を下げた。

「そんな、顔を上げてくれよ。礼を言われる程じゃないって」

「とんでもない。あなたは我々の命の恩人です。あなたがいなければ――」

「わかった、わかったよ。だから顔を上げて」

感謝されるのは慣れないな。

「お疲れでしょう。ゆっくり休んでいって下さい。お望みの物は何でも用意致しますので」

「ありがとう。でもゆっくりもしていられないんだ。アイツはまだ生きている。また何かをしでかす前に止めないと」

「どうしてそこまで」

「これが俺の使命だからです。そうだ、一つお願いが」

――――――――――――――――――――

俺はマギデッドの店に入った。

「成長されましたな。いい顔になられて」

俺の顔をまじまじと見つめたマキデッドは、開口一番にそう言った。

「はい。ドラゴフォースの力を継承しました」

マギデッドはその場で床に額をつけた。

「主様、これまでの非礼、誠に申し訳ございませんでした。心よりお詫び申し上げます」

「え、え?顔を上げて下さいよ」

「わしはこれでも元十二神将。本来なら主様への愚行などあってはならない事なのです」

「…前は俺がヤワだったってことにしておいて下さい。でも今は違いますから」

マギデッドは顔を上げた。

「左様でございましょうな」

「俺、ドラゴギヴィルと戦った時に声を聞いたんです」

「ほう。詳しく聞きましょう」

マギデッドはテーブルの奥に座った。

「ささ」

「ああ」

俺は対面するように座った。

「3人の声を聞きました。それぞれタケルと名前を呼んでいて。その後気絶している間に、タケルの記憶を見ていました」

「なるほど。繋がりましたか。アカシックレコードに」

「アカシックレコード…あれが?」

「恐らくはそうでありましょうな」

あれが、アカシックレコード。なら俺は、何度も…?

「そのタケルという存在の話、聞かせてもらえますかな?」

「あ、はい。タケルはどんどん辛い目にあっていって、最後の記憶を見た中で気づきました。そのタケルこそがデトルートだったのです。真のドラゴギヴィルはドミナードと呼ばれる存在。タケルは操られているんです」

「それで?」

「俺はタケルを助けたい。タケルを助けられれば、ドラゴギヴィルを魂まで還元できる。再封印が可能です」

「ふむ。ではいかにしてタケルを助けるかということですな」

「はい」

マギデッドは固く目を閉じた。

「話を聞くに、タケルの心は酷く憔悴しております。彼の心に語りかけ、呼び戻すことができればあるいは」

「心に…でもどうやって?」

「やはり尋ねるしかないでしょう。アカシックレコードに」


「目を閉じて」

「はい」

「深く息を吐く」

俺は息を吐いた。

「こめかみに力を入れて」

俺は奥歯を噛み締めた。キーンという甲高い音が響く。

「一気に抜く」

ふと、何も聞こえなくなった。

「何が見える?」

「…ドラゴギヴィル。…液体が噴き出している…血だ。…青い血や…白い血…男も…女も…子供も…ウィル?」

俺ははっと目を開けた。

「奴がまたここに来る。俺を狙って。どこか遠くに逃げないと!」

「話は聞かせてもらったわ」

暖簾を上げ、一人の女性が店の中に入ってきた。

「アロン…さん…」


パシンッ


「ばかっ!」

アブドは頬をはたかれた。

「すいません…でも…俺…」

アロンさんは片膝立ちで平伏した。

「ご無事で何よりでございます、主様。私めより一つご提案が。私の船でクビラと共に宇宙の最果てまで逃げましょう。そこでゆっくり繋がればいいのです。護衛は私が務めます」

「分かった。そうしよう。それが一番だ」

「では早速私の船へ」

「俺、ウィルに挨拶してくるよ」

「かしこまりました」

アブドは店から出ていった。

「アロン、という名だったのじゃな。アンディラ」

「お久しぶりです。クビラ。生きていらしたとは」

「ふふふ、わしはまだ死ねん。それに、其方こそよくぞ彼らを相手に生還したものよ」

「私もまだ、死ねないので」

――――――――――――――――――――

「左様でございますか。しかしもう発たれるとは」

「うん。やるべきことが残っているんだ。来れてよかったよ」

「私もまた会えて、直接謝罪とお礼を申し上げられてよかったです。是非またいらして下さい」

「ああ。約束だ」

二人は固く手を握りあった。


「さようなら。レグーノ」

3人を乗せた船は星を後にした。

「計算完了。オーバードライブシステム起動」

船はオーバーワールドに入った。

――――――――――――――――――――

「起きろ。デトルート」

ドミナードの声で、デトルートは目を覚ました。

「腹の穴さえ無ければ、あのような一撃を喰らうこともなかった。お前は悪くないぞ、デトルート」

「はい」

「奴を倒すには、やはり見つけなければいけないな。アカシックレコードを」

「はい」

「集え」

裏十二神将が集結した。

「お前達はドラゴゲネシスとアカシックレコードを捜索せよ。俺はアカシックレコードを探しつつ星の破壊を始める。奴を誘き寄せる」

「「「はっ」」」

十二人の大将は散っていった。

「デトルート」

「はい、ドミナード様」

「お前は強い。それ証明しようではないか」

「はい」

――――――――――――――――――――

ピピピピピピ


操縦室に警戒音が鳴り響いた。

「経路遮断?まさか、アレがここまで!?掴まって。緊急停止!」

アロンはレバーを押した。船がオーバーワールドから抜ける。船内は激しく揺れた。

「何が起きたんですか!?」

「あれを見て」

アロンはフロントガラスの奥を指差した。よく見ると、ある所を境に星がなくなっていた。先には何も無かった。

「無の境界よ。本来の行き先も飲み込まれてしまったわ。こんなに早く進行しているなんて。ここも離れた方が良さそうね」

船は折返し、再びオーバーワールドに入った。

「何なんですか、無の境界って」

「主様、全ての銀河は繋がっているのです。銀河が崩壊する時、エスタルダストが他の銀河に供給されます。そしてそのエスタルダストを元に、新たな銀河が誕生するのです。しかしある時、崩壊ではなく消滅した銀河がありました。それがポイント・ミデン。宇宙の端にあったその銀河から、連鎖的に銀河の消滅が始まりました。そうして生まれたのが、無の境界なのです。無の境界の先にはその名の通り、何も存在しないのです。決して飲み込まれてはなりませんぞ」

「分かったよ。ありがとう」

「そろそろ着くわよ」

船はオーバーワールドを抜けた。目の前に一つの惑星があった。

「ここなら外界と隔絶されている。見つかることも当分ないわ」

3人は辺境の惑星、カニーツに降り立った。

――――――――――――――――――――

それは突然起こった。レグーノに"星"が降った。

レグーノは突如、暗雲に包み込まれた。

バーバル街庁舎が倒壊した。周りに人だかりができた。


パチン


鋭い破裂音が響き渡った。

地面から炎の龍と氷の龍が飛び出した。

人々は大きく開いた龍の口に噛み砕かれた。後には骨すら残らなかった。

火柱がそこここに立った。街は炎に包まれた。

「テメェ!この前の野郎だな!」

大男が鈍器で襲いかかった。ドラゴギヴィルは頭を掴み、潰した。青い血が飛び散った。

ドラゴギヴィルは歩き出した。そして目に入った人々を一人ずつ撫でるように殺していった。

男の四肢を捥ぎ取り、女を切り刻み、子供を踏み潰した。

ドラゴギヴィルは星中を渡り歩いた。


パシフィスの塔が激しく燃えていた。

ドラゴギヴィルは広場に寝転び、その様子を眺めていた。

「つまらないな」

この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。

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