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【完結】アカシックレコード  作者: 白黒羊
第陸章 森羅回帰篇

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EP42 罪、そして

「アブド…助けて…」

ティナの顔が苦痛に歪む。

「ティナ…!ティナ…!」


ミシ、ミシミシ


「あ…あぁぁ…」


ブチブチブチブチ、ブシャッ


ティナは二つに裂けた。

「ティナァァァァァ!!!アアアアアアッッ!!」

俺は目を覚ました。辺りを見回すと、そこはどこかの草原だった。

「クソッッ!」

俺は地面に両拳を叩きつけた。

「ティナ…ティナ…」

両目から涙が溢れた。

「くっ…くぅ…」

『顔ヲ上ゲロ、小僧』

俺は目を見開いた。今の声は何だ?

俺はもう一度辺りを見回した。誰もいない。ただ草が風に揺れ、森羅光封剣が突き刺さっているだけだ。

…まさか。俺は森羅光封剣を見た。

『ドウヤラ気ヅイタ様ダナ』

「お前…誰だ…?」

『誰ダト思ウ?』

「それが分からないから…聞いているんだろ」

『ナルホド。何者デアレ、オ前ノ命ノ恩人デアル事ニハ変ワリナイナ』

「命の恩人?どういうことだ?」

『ドラゴギヴィルニ喰ワレカケテイタオ前ガ何故此処ニイルト思ウ?』

「そういえば…ここはどこだ?まさかお前が?」

『ソウイウ事ダ、ドラゴゲネシス』

「その名前…!あんた一体何者なんだ!」

『名ヲ明カス事ハ出来ナイ』

「どうしてだ」

『オ前ハ名ヲ明カスニ値シナイ。小僧デ十分ダ』

「舐めんじゃねーぞ!俺はドラゴゲネシスだ。見てろ!」

俺は手を前に突き出した。何も起こらない。

『ドウシタ?』

「そんな!出てこいよ!」

俺は何度も壁を思い浮かべた。もう一方の手で腕を掴んだ。

「どうしちまったんだ…!」

『震エテイルデハナイカ、小僧』

「うるさい!…ああそうだよ。怖いよ。ティナのあんな最後見せられて、俺はあの時何も出来なくて、今じゃこうして自分の力さえロクに使えなくて、俺はどうすればいいんだよ…」

『ソウイウ時ニ頼レト言ワレテイタジャナイカ』

「誰に…」

突然、俺の脳裏に老人の顔が浮かび上がってきた。

『まぁ、何か困ったことがあればまた来ておくれよ』

そう言ってカラカラ笑う老人の顔が。

「…ッ!どうしてこのことを。本当にあんた一体何者…」

『イイ事ヲ教エテヤロウ、小僧。コノ星ハ何処ダト思ウ?』

「ここが?…ドラゴギヴィルに襲われたのがザピーシで…剣が俺を運んだならそう遠くには行けないだろうから…まさか、でも、本当に?」

『冴エテキタデハナイカ、ソノ通リ、レグーノダヨ』


ドンッ


轟音が響き渡り、土煙が立った。何かが近くに落下した。

「なんだ?」

「アブド・デ・へルート、発見」

「その顔は…」

「久しぶりね、アブド」

「ヴィリーノ・デ・クレダント!なんなんだその姿は」

「私はドラゴギヴィル…主様に力を与えてもらったの。今の私はアンディラよ。そして私こそが、裏十二神将の一人」

「裏十二神将だと!?」

「大人しくしていなさい。主様がまもなくいらっしゃるわ」

「おい、オールハトゥーム、俺に力を貸してくれ。さっきみたいに俺をバーバル街まで運んでくれ」

『断ル』

「どうして!?」

『今ノオ前ニ力ヲ貸ス気ハナイ』

「そんな…。分かった、自分で探すよ。あんたに力を貸す気がなくても、俺は借りるからな」

そう言ってアブドは森羅光封剣を引き抜いた。

「裏十二神将、ドラゴギヴィル。ティナの仇だ。お前らを皆殺しにする」

「あら?刃向かうわけ?ならいいわ。分からせてあげる」

「オラァァァ!」

アブドはアンディラに斬りかかった。しかしアンディラの肉体に刃は通らなかった。

「硬い!」

「当然よ。主様のお力を分けてもらったのだから」

拳がアブドの腹に入った。

「ぐほッ」

縮こまったアブドを回し蹴りで跳ね飛ばした。

跳ね飛ばされた先にいたのは、異形の姿をしたセデルだった。

「お前は!セデル・ユスティーツァ!お前も裏十二神将か!」

「ああそうだ。ようやく手に入れたんだ。宇宙を平和にする力を!アブド・デ・へルート!宇宙の平和を乱す者は排除する!」

セデルの上げた足に踏み潰される直前にアブドは転がって避けた。そして急いで立ち上がる。

「平和を乱しているのはお前だろ!セデル・ユスティーツァ!お前がオルディネイトなんていうバカな組織を作って王のもとについたせいで、ガルディオは攻められたんだ!オルディネイトとガルディオの争いなんかなければ、ティナもザピーシにいなかったんだ!」

「何を言う!最初にガルディオに火を付けたのは誰だ!王か?俺か?いや違う。お前だよ、アブド・デ・へルート。お前さえ、お前さえいなければ!シュリンターなんていう組織が台頭してくることもなかった!メレッドも!そうなれば宇宙大戦も起こらなかった。オルディネイトも…。ガルディオが二つに割れる必要なんてなかったかもしれない。俺は出まかせの挑発をしているんじゃない。宇宙の平和が乱れたのも、ティナ・イ・オディオが死んだのも、お前のせいだ、アブド・デ・へルート」

「…ッ!」

「俺は間違ったことを言っているか?違っていたら反論してみせろよ!」

「く…クソォ…」

アブドは奥歯を噛み締めた。

『今ハ泣ク時デハナイゾ小僧』

「…でも、セデルは正しい。平和を乱したのは俺だ…。ティナを殺したのも。いやティナだけじゃない。シオンも、リデルも…。俺は親友を全員殺してしまったんだ…!」

『オ前ガドラゴギヴィルニ喰ワレレバ、ソレコソ今ノ宇宙ハ崩壊スル』

「知らないよ。喰われた後なんだろ?俺は死んでるんだ。死んだ後のことなんかどうでもいいよ」

『本気デ言ッテイルノカ!…オ前ニハ失望シタ』

森羅光封剣はそう言うと、アブドの手から離れ、勢いよくアブドの腹に突き刺さった。

「ガァアアッッ…」

「まずい!奴に死なれては主様の命令に反する!そいつを引き抜け!クビラ!」

アンディラが叫んだ。

クビラがアブドの体から剣を引き抜こうとした瞬間、森羅光封剣が上下に動き、アブドは二つに裂けた。

それと同時に地面が割れ、暗闇の中にアブドの肉体と森羅光封剣とが落ちていった。

アブドと剣が見えなくなると、地面の亀裂は閉じた。

――――――――――――――――――――

アブドの肉体が潰されかけた瞬間、アブドの周りの土が消滅し、空洞ができた。やがてアブドの半身同士がゆっくりと結合し、そこからさらに時間を掛け、ようやくアブドは目を覚ました。

ここは…どこだ…?真っ暗で何も見えない。

『ヤット目ヲ覚マシタカ。シカシ流石ドラゴゲネシスダナ。無意識化デモココマデノコトガ出来テシマウトハ』

「その声は…オールハトゥーム?…さっきはよくもやってくれたな」

『聞クガイイ、ドラゴゲネシス。私ハ光ノ龍王、ドラゴフォースダ』

「待てよ、お前、名前を…」

『アア。私ハトウニ自分ニ失望シテイル』

「それになんだよ、ドラゴ…フォース?」

『ソウダ。遥カ昔ニコノ剣ヘ封印サレテ以来、ソノママダガナ』

「どうしてそんなことを俺に?」

『オ前ノ憎ム闇ノ龍王ドラゴギヴィルハ、ドラゴフォースカラ生マレタンダ』

「ドラゴギヴィルがドラゴフォースから?一体どうして?」

『アル時、宇宙ニ一筋ノ光ガ差シ込ンダ。ソノ光ノ元デドラゴフォースハ誕生シタ。小僧、覚エテオクガイイ。光アル処ニ必ズ闇ハ存在スル。光ニヨッテ照ラサレナカッタ場所デ、ドラゴギヴィルガ誕生シタ。ツマリ光、ドラゴフォースガ誕生シナケレバ、ドラゴギヴィルモ誕生シテイナカッタ。何一ツ存在スルコトハナカッタノダ。ドラゴギヴィルトイウ怪物ヲ生ミ出シタノハ私ナンダ。私ガ悪イ』

「そんな…。そんなこと、結果論じゃないか。あんたは…悪くないだろ…。俺と違ってさ…」

『オ前モ結果論デハナイカ』

「違う!俺は悪いんだ。俺がシュリンターなんかに入ったから!俺が自由なんか望んだから!宇宙はもう、お終いだ…」

『オ前ガイナケレバ、ティナモシオンモ入団試験デ死ンデイタカモシレナイ』

アブドは目を見開いた。

『オ前ガイナクテモ、シェニー・アグリアハ起キテイタカモシレナイ。ソウナレバザモークデガルディオハ壊滅シテイタカモシレナイ。アレク王ハ反逆者ヲ根絶ヤシニシテ恐怖デ人々ヲ支配シテイタカモシレナイ』

「そんな…そんな…そんなこと、わからないじゃないかよ…!」

『ソウダ。未来ハ誰ニモ分カラナイ。私ハドラゴギヴィルヲ生ミ出シタ。ソノ罪ハ消エルコトハナイ。シカシドラゴギヴィルヲカツテ封印シタノモ私ダ。私ハ自分ノ罪ヲ全テ償ッタトモ、償イキレルトモ思ワナイ。私ハ自分ニ失望シテイル。ダガ己ノ非ニヨッテ押シツブサレモシナイ』

「俺が…俺が全てを…でも…俺は…俺は…ッ!」

『アンタがやるべきなのは正義でも悪でもない、償い』

『あなたは二人の想いを受け継ぐ為に生きているの』

アブドの脳内にティナの言葉が響いた。

ティナ…。そうだ。俺は二人の、そして、ティナの想いを。

アブドは立ち上がった。その右手には、森羅光封剣が握られていた。

アブドは目の前に向かって一度剣を振った。

土が消え去り横穴ができた。アブドは先へと歩き出した。

――――――――――――――――――――

「誰か!誰か来てくれ!」

黒く汚れた男が叫んだ。

「どうした!?」

「これを見ろ。急に穴が開きやがった。何なんだ、これ」

男たちは穴の先を照らした。

「何か見えねぇか?」

「ああ。俺も見えたぞ」

「こっちに向かってくる…?」

「殴り飛ばしてやる。テメェら準備はいいな?」

「ああ」

「おう」

「やってやる」

「さあ来い…。来やがれ…」

光に照らされ、アブドが男たちの前に姿を現した。アブドは男たちの前で止まった。

「子供…!?」

「でもこいつ、大剣を持ってやがる」

「なんだ、どこかで見覚えが…」

「おいお前さん、何者だ」

「僕はアブド・デ・へルート。怪しい人間ではない。どうかバーバル街に連れて行って欲しい」


アブドは見張りの二人の男と共にエレベーターに乗り込んだ。エレベーターはゆっくりと上昇していった。

「おい奴さん、上で総督がお待ちだ。事情は彼に洗いざらい話すことだな」

「わかりました。親切にどうも」

男二人は目を合わした。互いに困惑の眼差しを送った。

エレベーターが止まり、扉が開いた。賑わう声と共に光が差し込んだ。そして扉の前に仁王立ちする大男の姿が目に入った。

「この方がバーバル街総督、ウィル・ベソットだ」

「あんたは…!」

「名前を聞いてまさかとは思ったが、久しぶりだな。ガルディオのヒヨコ」


この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。

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