EP36 集結
セデルは通信機の前に跪いた。
『ガバラ、この子が言っていた子か』
「はい。セデル、こちらは我々に援助をしてくれるタルタニッド氏だ」
「お初お目にかかります。ガルディオ代38619期生、セデル・ユスティーツァです」
『私はタルタニッドだ。よろしく』
「よろしくお願いします」
『さてセデル君、君も今のガルディオに不満があるということで間違いないね?』
「その通りです。今のガルディオは緩すぎる。俺の知る騎士という人間は、正義のためなら殺しだって厭わない、そういう人間です。なのにドゥクス団長は、メレッドに対抗しようともしない。ただ沈黙を貫いてるだけです。これでは、ガルディオがいる意味がない。宇宙に平和をもたらすことが使命なのに」
『全くもってその通りだ。私は君のような人間を探していた。宇宙に平和をもたらすことの出来る人間を。セデル君、君の熱意は伝わった。次は私が伝える番だ。私は君に、新たな組織の代表になってもらいたい』
「新たな組織ですか?」
『そうだ。宇宙に平和をもたらす為、真の騎士が王のもとに集結し結成される組織』
「その組織の代表に、俺が?」
『そうだ。君以外の適任はいない。今、組織に属している騎士はごく僅かだ。君の力で、組織を大きくしてもらいたい』
「勧誘をすればいいのですね?」
『そうだ』
「任せて下さい。俺、やります」
『よくぞ言ってくれた。嬉しいよ。また連絡する。では頼んだぞ、代表』
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「十二神将を壊滅って、何があったんですか!?」
「反乱よ。あの時、10人の将軍が王に反旗を翻した。私は逃げてあの星に辿り着いた。そして今、そこに向かっているわ。お仲間は先についているわよ」
「ティナ!」
「アブド!よかった、無事だったのね!」
ティナは涙を流した。
「ティナも無事だったんだね。間に合って良かった」
「そうよ!なんであの時、私なんかの前に」
「しょうがないだろ、命を捨ててでもティナを守りたかったんだから」
「もう…あんなことしないでね」
「じゃあティナがもっと強くならなきゃね」
「ええ。なるわよ。フィリアの分も」
「そうか…ティグリスって…」
「衛星を破壊して死んだわ」
「ティグリス…」
「でもアブド、切り替えなきゃダメよ。それでアロンさん、アブドは今後どうなるのですか?」
「迂闊に人前に立てば、アブドは間違いなく殺される。今は身を隠すべきだわ」
「ただ身を隠すだけですか?」
「心配しなくていいわよアブド。十二神将だったこの私が、戦い方を伝授してあげるわ」
「つまり…?」
「そう、修行よ。ティナもさっき言っていたわね、強くなるって」
「もちろんです。私もやります」
「ガルディオの方はどうするのさ」
「これも任務の一環よ、アブド」
「乗り気じゃないのかしら?」
「やりますよ。当然です」
「じゃあその顔はなんなの?」
「…なんでもないです」
アブドは頷いた。
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二人の男が本部の廊下を歩いていた。
「なぁ、聞いたか。ユスティーツァが作っている新たらしい組織の話」
「ああ聞いたよ」
「どう思う?」
「確かに言っていることは間違ってないんだよな。僕もこのメレッドを黙認している状況はなんとかしたいと思っている」
「じゃあ入るのか?」
「かもしれない。お前は?」
「俺は王の為に騎士になった。俺はより王に近い方につく」
「そうすればより高給になるもんな」
「なっ、違うよ。俺は…」
「僕達の仲だ。取り繕わなくたって分かってるよ。第一、新組織は待遇がいいって噂だ。金目当てで移る奴も相当数いるだろうな」
「静かに」
二人は大柄の男とすれ違った。
「聞かれてたかな」
「大丈夫だろ」
「おいドゥクス、小僧どもが何か企ててやがるぞ」
「ああ。私の耳にも入っている」
「いいのかよこのままで」
「変に統制して刺激するのは良くない。今は様子見だ」
「メレッドと同じって訳だな」
「その件についてはここで話し合って決めたことだ。何か不満でも?」
「分かってるよ。命令には従う。だが小僧どもはどうかな」
「反乱が起こるか?」
「可能性が無いとは言えないだろう」
「だがあいつらはまだお前の言う小僧だ。そんな大それたことをする力があるか?」
「どうだろうな」
コンコンコン
戸を叩く音がする。
「セデル・ユスティーツァです」
「噂をすればだな」
「グンナー、外してもらえるか」
「ああ。隣で聞いてる」
「ありがたい」
マークシオ班の一人、グンナーは別室へと移った。
「入れ」
「失礼します」
「なんの用だ」
「団長にお願いがあって参りました」
「お願い?」
「はい。ガルディオ内で、今後の方針について説明して頂きたく思います。大手メディアも多数呼び、大々的に」
「内部情報は公開できん。却下だ」
「もちろんそこまでは求めません。具体的にはメレッドへの宣戦布告をして頂きたいのです」
「ダメだ。今は争う時分ではない」
「そこをなんとか。あとは我々が行動するので」
「行動?」
「はい。宣戦布告の宣言さえあれば、自分たちでメレッドを殲滅します。団長に負担はかけません」
「許可できない。今はメレッドとは戦わない。話は終わりだ」
「そこをなんとか!説明会だけでも!」
「ダメだ」
「…分かりました。これを見て下さい」
セデルは一枚の紙をドゥクスに渡した。
「請願書です。全騎士の三分の一、172名の名前があります」
昨今の世論、ガルディオ内の不安分子を納得させる為にも、一度場を設ける必要はある…か。
ドゥクスはそう考えた。
「分かった。説明会は開く。しかし全てこちらで用意する。ユスティーツァ、君が関与する必要はない」
「承知しました。ありがとうございます。失礼しました」
セデルは一礼し、団長の部屋を後にした。
「三分の一か。万が一の事が起きたとしても、押さえ込むことは可能だな」
そう言いながらグンナーが隣室から出て来た。
「ああ。ここは一つ、風紀を正す必要がある」
「死んでもらうか」
「相手の出方次第では、十分あり得る話だな」
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数日後。惑星レグーノにてガルディオは会見を開いた。
「まずはガルディオとしての今後の展望ですが、我々は王直属の騎士団である為、王の命によって作戦を実行するわけでありますが、今のところ王、並びに議会からは待機命令が出ております。話題に上がるのは、テロ集団メレッド、新興国家リベルタへの対応についてだと思われますが、ガルディオの団長としても、迂闊に手を出すわけにはいきません」
「王議会からは依然、特別臨戦態勢宣言が解除されたわけではありませんが、ガルディオは動かないということですね?」
記者の一人が質問した。
「この宣言は、もしもメレッドやリベルタが暴動を起こした時のみ武力の行使が正当化される宣言であります。敵が沈黙を貫く以上、我々も沈黙を守る他ありません。敵は敵でも同じ人間です。我々とて無用な争いは避けたいのです」
「メレッドと思われる集団の略奪行為などが報告されていますが、これについてはどのようにお考えですか」
また別の記者が質問した。
「その件につきましては、宇宙警察の方で対応していただいています。我々は騎士、軍人です。犯罪行為の為には動きません」
パァン!
突然の発砲。
「「「きゃぁぁぁああああ」」」
響き渡る悲鳴。
音のもとから人が離れる。そこに立っていたのは、セデル・ユスティーツァを中心とした騎士数十人。
「ユスティーツァッッ!何をしている!」
ドゥクスが叫んだ。
「私、セデル・ユスティーツァは、ここにガルディオからの離叛、そして新組織オルディネイトの設立を宣言します」
「やれ」
ドゥクスはそう呟いた。しかし、何も起こらない。
ドンッ
ドゥクスは机を叩いた。
「すみません、団長」
セデルを狙うはずだった騎士達は銃口を団長に向けていた。
セデルは団長の正面に立つ。
「我々オルディネイトの目的は、王のもとに集結し宇宙に平和をもたらすこと。その妨げにならない限り、ガルディオと敵対するつもりはありません」
「今ならまだ引き返せるぞ」
「これは覚悟の証明です」
セデルは団長を殴った。
「行くぞ」
オルディネイトのメンバーは会見の場を後にした。
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「何の用だ、タルタニッド」
「王に是非献上したいものが」
「もの?」
「はい。こちらに運び入れてもよろしいでしょうか」
「まぁ、いいだろう」
「ありがとうございます。入れ」
「失礼します」
オルディネイトの騎士432名が、王の前にひれ伏す。
「お初お目にかかります。我が王。我々はあなた様にお仕えするべくガルディオから離叛しました、オルディネイトです」
「オルディネイト…。これが…私の物か?」
アレク王が目を輝かせて問う。
「左様でございます。議会の承認を得る必要もありません。正真正銘あなた様の騎士団です」
タルタニッドが答える。
「そうか…。そうか…!私の騎士か!」
「はい。左様でございます」
セデルが嬉々として答える。
「お主、名はなんと申す」
「は。セデル・ユスティーツァでございます」
「そうか。ユスティーツァ、お主をオルディネイトの団長に任命する」
「は。有り難き幸せでございます」
「ユスティーツァ、オルディネイトに頼みがある」
「承知しております。メレッド討伐のお許しを頂きたく存じます」
「そうだ!その通りだ!」
王は立ち上がり右手を振り上げた。
「オルディネイト!メレッドを滅ぼせ!」
「「「はッ」」」
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




