EP35 不満
集結した12人は騒然としていた。
「アレク王の御到着です」
扉が開き、アレク王が姿を現す。12人はそれを深いお辞儀で迎える。
「それでは始めさせて頂きます」
王が着席し、13人となった。十三人評議会の開会だ。
「本日の議題は、皆様承知のことでございましょうが、代々王家に伝わる力、ドラゴゲネシスの力を、アブド・デ・へルートという少年が使用した疑いがあるということです。彼は惑星ザモークにおける人工知能との戦闘の最中、これと思しき力を2分37秒間使用したとのことです」
「アレク王よ、どういうことでございますか。単刀直入に申し上げますが、あなたは御父上様から御力を継承されていないのですか?」
「そうだ。何故あのような少年に?」
アレク王が口を開く。
「継承をしたという覚えは、私にはありません」
「なんてことだ」
「何故でございますか?」
「それはあなたとご意向ですか?それとも御父上の?」
11人が口々に申し上げる。王は俯く。
「まぁいいではありませんか。失われた力は取り返せばいい。簡単な話です」
今まで沈黙を貫いていた男が口を開く。
「ドゥクスに言って早急に身柄を引き渡してもらいましょう。という訳で、入れ」
「失礼致します」
扉が開き、ガルディオ団長イポテスダ・ドゥクスが入室する。
「ドゥクス君、君もアブド・デ・へルートの力を見たそうだね」
「はい。この目で。彼は敵の攻撃をどこからともなく出現した盾で弾き、さらには地面から巨大な石の柱を、しまいには背中から翼を生やしていました。ガルディオ内では一応、嘘の情報を流していますが、間違いありません、あれはドラゴゲネシスです」
「そうか。では速やかにこちらに身柄を渡してもらおう」
「はい。直ちに準備します」
「うむ。下がってよい」
「失礼します」
一礼をし、ドゥクスは部屋を後にした。
「只今お聞きしてもらったことでドラゴゲネシス本体の件は解決です」
「しかし問題は…」
「広まってしまった噂をどうするか、ですよね、ミスタータルタニッド?」
「その通り。ドゥクスは情報操作を行なったと言っていたが、誰かが真実に辿り着くのは時間の問題であろう」
「アブド・デ・へルートを使って王に刃向かう輩が現れるかもしれませんね」
「特にあのメレッドという組織。実に怪しい」
「それも、王の御力でどうにかなる。今は早く王に力をお返ししなければ!」
「ですからその件は時期に片付きます」
「左様。ともすれば懸念すべきは無の境界線の拡張。最近は進行の速度が上がっているとか。まあ、これも王の御力さえあれば、解決できるでしょうがね」
「結局、アブド・デ・へルートがこちらに渡らないうちには、どうすることも出来ませんな」
「裏を返せば、それさえ手に入れば、全ては元通り」
「左様。ですからアレク王、あなたはお待ち下さい。全て我々が用意致しますので」
「ああ。任せた」
「それでは退席していただいてよろしいですぞ」
「ああ。よろしく頼む」
アレク王はそう言い残し、部屋を後にした。扉が閉まる。
「名演技でしたな」
「呼ばなくても良かったのではないか?」
「これは宇宙全域を揺るがす大問題。いくら無能でも、彼はこの宇宙の最高権力。無視は出来ないでしょう」
「それにしても継承した覚えがないだと?なんと無責任な」
「あまり声を荒げるのは良くない。まだ近くにいらっしゃるでしょうから」
「原因は先代の老いぼれか、それとも今の小僧か…」
「両方でしょうな」
「ともかくこれで継承者が見つかったのですからいいではありませんか」
「しかしドラゴゲネシスの力をあの小僧に継承させるのも、得策とは言い難いかもしれないですね」
「いっそ、一線から退いてもらうか」
「候補者は?」
「分家の方から引っ張るしかないかと」
「まあまあ、我々の言うことに素直に従っているのですから、当分は泳がせておいても構わないでしょう」
「従順であるうちは…ね」
『マスター、いい男を見つけました。彼なら多くの騎士を煽動できるでしょう。今、データをそちらに送ります』
「そうか。よくやった」
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ドゥクスは長い廊下を熟考しつつ歩いていた。
あれが噂に聞いていた、十三人評議会…。本当に実在していたとは。
それにしても、旧家の貴族で構成された会とはな。推測するに、あの場において王はただの飾りだ。王の決定として公表されたことは全て、あそこで決定されたことなんだろう。これまで、これからも。
「キアラ、へルートを運ぶ用意をしておけ」
『了解』
ひとまずは、従うのが得策だな。
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アレク王は自室で激していた。
ふざけんな!クソ、俺は、またしてもあの爺さん共に従わなくちゃいけないのかよ。俺は王だぞ!?決定権は俺にあるはずなのに…!
どうしていつもこうなんだ。俺はただ、座って話を聞いているだけ。意見しても、ああだこうだ言われて結局は却下される。
王になれば、全てが思い通りだと思っていたのに!クソ!クソ!クソ!
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ザモークでの決戦後、ガルディオは捜査本部を立ち上げ、シェニー・アグリアの原因を探った。
数ヶ月後、ガルディオは、全人工知能を操っていた長髪のヒトガタ、通称シェニーには、トレシー・アグリアを引き起こした人工知能マーテルの脳が移植されていたこと、そしてトレシー・アグリアの発端となった惑星エラムから、マーテルの脳を持ち出したのが、反国家自由信奉集団メレッドの人間であったということを公表した。
しかし、メレッドへの対抗措置については検討中とし、直接的な戦闘を避ける形となった。
なにせ、ガルディオは先の戦いで全勢力の四分の三を失っているのである。
男二人が本部の廊下を歩いていた。
「ふざけんな!なんで今すぐにでもメレッドを攻めないんだ。シェニー・アグリアはメレッドの連中のせいだったんだろ!?ならメレッドの施設でも、サントデラントのリベルタでもいいから武力制圧するよな普通!?シェニー・アグリアで、一体どれだけの人が死んだか分かってるのか?星が一つ滅んだとこだってあるんだぞ!?」
「落ち着けよセデル。団長達にもきっと策があるんだろう」
「これだからぬるいんだ最近のガルディオは。要は人がいないんだろ?そんなの俺だってわかってるよ。だがな、俺の知ってるガルディオの騎士っつうのは、たとえ一人になっても悪を滅ぼすために戦い続けるんだよ。お前にはその気概があるのか!?」
「それは…」
セデルは大きな溜息をついた。
「ユスティーツァの言う通りだ」
背後から、セデルに声をかけるものが現れた。
二人は振り返る。
「ガバラさん!あなたも、僕と同じ考えですか!」
「ああそうだ。今のガルディオは腐っている。改革が必要だ。それには君の力がいる。俺たちに協力してくれないかな?」
「改革…。俺の力…。」
「そうだ。是非とも」
「やります。俺の出来ることならなんでも」
「セデル!」
「よく言った!」
「アビラ、よく聞け。お前も本当はおかしいと思ってるんじゃないか?考えてみろよ、散々人を殺した連中が、なんでのうのうと生きているんだ?」
「確かに…」
「そうだろ!?変えるなら今だ。一緒に改革を起こそうぜ!」
「…ガバラさん、僕も協力します!」
「助かるよ、セパミラ」
「それでいいんだ、アビラ」
「俺たち、間違ってるはずがないよな、セデル」
「当然だ。ところでガバラさん、改革って一体何をするんですか?」
「よくぞ聞いてくれた。同志を集めて、ガルディオから独立するんだ」
――――――――――――――――――――
アブドは目を覚ました。
うぅ、頭が痛い…。あれ、なんだこれ、体が動かない!?
目を開くと、アブドは真っ暗な闇の中にいた。
どこだよここ!俺、どうなっちまったんだ!?
瞬きをした途端、目の前の景色が変わった。
なんだあの塔…。空にも届きそうなほど高いぞ。
そこには灰色の巨大な塔があった。
どこなんだここ…ってあれ、なんか倒れてきてないか?
塔がアブドに迫る。
くっ、体が…!動けよ!潰されちまう!
しかしアブドの体は微動だにしなかった。
「あああああああああああ」
アブドは目を見開いた。
「はぁ、はぁ、はぁ、夢か…え?」
「お目覚めかね、アブド・デ・へルート?」
俺は台の上に拘束されていた。周りには見知らぬ男が3人。それと…。
「ドゥクス団長!?」
「ああ。目が覚めたようだな」
「なんですかこれ!外して下さいよ!」
「無理な話だ。これからお前を尋問する」
「尋問って…。俺が何をしたって言うんですか!?シュリンターとはとっくに絶縁してますよ!?」
「ああ。シュリンターの件ではない。お前の力についてだ」
「力…?」
「惑星ザモークでの人工知能シェニーとの戦いにおいて、君は2分37秒間、ドラゴゲネシスのものと思わしき力を行使した」
「ドラゴゲネシスって、俺はそんなの知りませんよ!」
「壁の創造、超人的な身体能力、体は大きくなり翼が生えていた。それに、君は致死量を上回る有害物質が溶け込んでいる空気中で、防具もなしに戦闘を行っていた。この事については何か?」
「確かに、壁が生えたのは覚えています。でもあの時はティナを守るのに必死で、体が勝手に動いたんです。俺の意思はないというか…とにかく俺は知りません」
「君は知らなくとも覚醒が事実であることは変わりない」
「左様、君には生涯における最後の使命を全うしてもらう」
「最後の使命?」
「ドラゴゲネシスの力とは本来王家が継承していくもの。現王であるアレク王に君は喰われるのだ」
「そんなの…容認できません…!」
俺はティナを守らないと!
「君の意思は関係ない」
俺は腕に力を込める。しかし拘束具は外れない。
「流せ」
「がぁぁああああっっ!」
アブドの体に電流が流れる。
「待て。無闇に刺激してまた暴れ出したらどうする」
「その前にこいつを気絶させればいいだけのこと。そして二度と目を覚ますことはないだろうな」
「ガァアアアアアアッッッ!!」
誰か…助ケテ……。
ドォォォォォォォオオオオンンンッッ
突然の大爆発。充満する煙。
なんなんだ?何も見えない。
「なんだ!?」
煙が切れ始める。
「誰かいるぞ!」
誰だ?女?まさか、あのフードは…。
「大丈夫か、アブド・デ・へルート」
「あ…アリアさん…?」
「覚えていてくれていたとは光栄だ。今助ける」
「ふざけるな。そうはさせるか!」
アリアさんは左手で何かを投げた。一人の男が倒れた。投げたものはナイフであった。男は胸から血を流していた。
パァン!パァン!
拳銃を取り出して二人を殺す。
ドゥクス団長の額に銃口を突きつける。
「あなたは…アロン様…。生きていらしたとは…」
「お前は何も見ていない。尋問にも関与していない。いいな?」
「…承知致しました」
アリアはアブドを解放し、アブドの手を引いた。
「さぁ、ついてきて。逃げるわよ」
アブドはアリアに連れられ、船に乗り込んだ。
「あの…ドゥクス団長はアロンって…。あなたは一体…?」
「アリアは正体を隠すための仮の名前。私はアロン。十二神将最後のリーダーで、十二神将を壊滅させた者よ」
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




