EP33 宇宙一のレーサー
『オーバーワールド内ニ戦闘機団ガ集結中』
『遂ニ直接攻撃シニ来タトイウワケカ』
『馬鹿メ。叩キ潰シテクレル』
『如何ナサイマスカ、リーダー』
「ザモークのタイプコルファを出撃させろ」
『賛成、賛成、賛成、賛成、賛成。要求ハ可決サレマシタ』
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
00時00分。全ての船がオーバーワールドを抜けた。
『何なのよ、あの量。敵の戦闘機が星の数ほどあるじゃない』
「ティグリス、落ち着いて。作戦通りに動くだけよ」
『分かってるよ』
「これより衛星破壊部隊の作戦を通達する。君らの任務は地上突入部隊の護衛、及び衛星の破壊だ。団長の話にもあるように、あの衛星がある限り敵の本拠地にダメージを与えることは出来ない。全作戦の核にもなる重要な任務だ。して、詳しい作戦内容だが、まずは敵戦闘機を破壊する。同時に地上突入部隊はザモークへ向かう。その護衛も兼ねての攻撃だ。対象の優先度は地上突入部隊の船に追尾する戦闘機、次に無差別に攻撃する戦闘機。最後に衛星を守る戦闘機だ。戦闘機鎮圧後、36砲の惑星破壊光線ダーパによって衛星への直接攻撃を行う。これが全行程だ。しっかりと頭に入れておくように」
「あ、あの船が危ない!」
ティナは急加速してレーザーを放つ。戦闘機型人工知能コルファが融解し爆発する。
「ふう」
『ティナ!一息ついてる場合か!次だ次!右斜め後方!』
「分かってるわよ!」
ティナは旋回し、レーザーを放った。
――――――――――――――――――――
『第一地上突入部隊、大気圏に入ります。軌道誤差修正完了。予定通り地点七三に着陸します』
「了解。幸運を」
『第二部隊十三号機、やられました!もうダメです!』
小窓から、船が爆発するのが見えた。
「そんな…」
「へルート。悔やむな。必要な犠牲なのだ。分かるだろう」
「…はい」
『第二突入部隊も大気圏に入ります。着陸地点は西側に少しずれ込む計算です』
「了解。幸運を」
「団長、我々もそろそろです」
「ああ。着陸まではそちらに一任している」
「任せて下さい。皆さん、衝撃に備えて下さい」
団長やアブドを乗せた第三突入部隊六十九号機が大気圏へと入る。
「衛星破壊部隊、よくやった。作戦をフェーズ2へ移行せよ」
『了解。幸運を』
――――――――――――――――――――
『最後の船が大気圏に突入した。フェーズ2だ。コルファ共を殲滅せよ!』
『『「了解!」』』
この光景、前と一緒だ。
ティナは操縦桿を強く握りしめた。
絶対に同じようにはさせない!
ティナはコルファの集団に突撃し、一瞬でそれらを壊滅させた。
「いーねティナ!私も負けてられないよ!そうだ、どっちが多く破壊したか勝負しましょう!」
『ティグリス!真面目にやってよね!…負けた方は夕飯奢りだから!3人分!』
ふっ、ティナも乗り気じゃねーか。
「面白い!受けてたとう!」
ティグリスはふとミラーに写った自分の顔を見た。
まさか私が他人とここまで笑えるとはな。あの日の事故以来じゃないか?
――――――――――――――――――――
15年前。彼女は最年少トップレーサーとして、賭けレース界隈で名を馳せていた。
「ティグリス!今日も一発かましたれ!」
「任せとけ!」
彼女はマシンの整備を専属の整備士で、古くからの友人であったベギダに一任していた。それほど、二人は互いに信頼し合っていた。
コースアウトした機体が観客席に突っ込んだことで何人かの犠牲者を出し、彼女の選手生命を絶つこととなった大事故がマシンの故障によるものだと結論付けられた時も、彼女はベギダを責めなかった。
しかし現実は残酷であった。ティグリスが退院し、5年ぶりにレース場に戻ってみると、ベギダはティグリスにトップレーサーの座を奪われていたレーサーの整備士になっていた。けれども顧客のいなくなった整備士が他の客につくのは当然のことだった。ティナもそれは理解していた。ベギダにはベギダの生活があった。
だが、話はそう単純ではなかった。彼女達の共通の友人に伝えられたのは、ベギダがどうやらそのレーサーに5年前に買収されていたらしいということだった。
つまるところ、5年前の事故の原因は、ベギダのミスではなく、意図的に起こされたマシントラブルであった。ティグリスはこのことを本人に問いただした。すると、やはりあの事故はベギダが故意に起こしたことが明らかとなった。
ティグリスはベギダを殴った。ティグリスも殴られた。そして絶交の捨て台詞と共に、ベギダはティグリスの人生から去っていった。
残されたのは莫大な慰謝料だけだった。困窮した彼女に手を差し伸べたのが、クリムゾン商会であった。商会は彼女に慰謝料を全額貸し出した。そしてその後、密輸業者という、真の顔を彼女に見せた。彼女はもう、密輸に手を染めるしか道はなかった。
これがフィリア・ティグリスの人生であった。
――――――――――――――――――――
『あの船団が最後。一気に叩き潰すわよ!』
「任せとけ!」
ティグリスとティナはコルファの船団を一瞬で壊滅させた。
『隊長、殲滅完了しました』
『ああ。確認した。作戦を最終段階に移行する。全機、ダーパの射程から離れよ』
『『「了解」』』
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
『ブレーノ周辺、惑星破壊光線ダーパヲ確認。現在発射準備中ノ模様』
『標的ハブレーノダト推測サレマス』
「ブレーノとの接続を開始。これより私の判断でブレーノを動かす。ブレーノ、クシオン用意。続けて、ブレーノ内のコルファを出撃させろ」
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
「現在のダーパの状況は?」
「誘導弾着弾確認。只今充填中です。発射可能まで残り30!」
「準備出来次第、即発射せよ」
「残り20!」
「隊長!目標に高エネルギー反応!衛星内部へと収束していきます!」
「…ッッ!?全機!回避だ!ダーパに身を隠せ!」
球形巨大人工衛星ブレーノが光り輝く。次の瞬間、球状の波動が放出され、直撃した機体と36砲のダーパは機能を停止した。
『おい、ティナ!聞こえるか?返事してくれ!』
「…ティグリス?ええ。聞こえてるわ」
『他の機体の状況は?』
「分からないわ。でも、相当数やられたみたいね。隊長!応答して下さい!隊長!」
『ダメだよ。私も通信したが、応答がなかった。恐らくはもう…』
「そんな…」
『オディオ!聞こえるか?』
「ロータさん!ええ聞こえてます」
『俺達を含め、連絡がついたのは27機。しかし俺達だけであの衛星を破壊しなくちゃならん。すぐに第二波が来るかもしれない。一時、ザモークに身を隠す。衛星が隠れる位置に移動だ』
「了解」
生き残った衛星破壊部隊の27機はザモークの影に身を隠した。
『して、あの衛星をどうするかだ』
『ダーパは全て破壊されたの?』
『はい。いずれも機能しません』
『船に搭載されているキャノンは?』
『そんな攻撃で壊れるほどやわじゃないさ』
『確かに…』
『地上部隊でも、宇宙警察でもいいから、どこかに通信出来ないのか?』
『生き残っているのは戦闘機だけだ。連絡船が無い。俺達の間で通信は出来ても、他となると通信の範囲外になってしまうよ』
『助けを求めるのは無理か…』
『呼びに行くとしても、時間が無いですしね』
『ああ。一刻も早くシェニー・アグリアを止めなきゃならん』
『オーバーワールド内に運んで、ザモークと引き離すというのは?』
『そもそもどうやってオーバーワールド内に運ぶのさ。船で押そうなんて言わないよな?』
『衛星内でオーバーワールドに入るのは?』
『無理だ。オーバードライブは、宇宙空間の暗黒物質を原動力として使用する。暗黒物質の供給されない場所では、オーバードライブどころかエネルギー不足でオーバーワールドを開くことすら出来ないよ』
『なら衛星の手前で幾つかの機体で同時にオーバーワールドを開くというのは?』
『…オーバーワールドの口の部分を隙間なく完璧に繋げることが出来ればあるいは』
『おお!』
『それでも課題はあります。あの大きさの衛星が通るオーバーワールドの口を開くには最低でも25機が、綿密な計算のもとミリの誤差も許されない座標でオーバードライブを起動する必要があります』
『残された手立てはそれしかない。それでいこう』
『『『了解』』』
『では計算に入ります。少々お待ちください』
『何の音だ?』
『前方!敵機接近!』
『後方からもだ!』
『全機戦闘用意。作戦には25機必要だ。絶対にやられるな。しかし、戦闘下での作戦実行も不可能だ。敵は殲滅せよ。ここが正念場だ。皆、心してかかれ!』
『『『はい!』』』
ガルディオの戦闘機が一気に散らばる。
『なんて数だ。さっきと同じくらいあるぞ!』
『でもやるしかないだろ!』
――――――――――――――――――――
「着陸します!衝撃に備えて下さい!」
船の底を擦りながら、六十九号機は着陸した。
「総員、パワードスーツを装着せよ」
「「「了解」」」
アブドはパワードスーツに身を包んだ。
『認識完了。アブド様!お久しぶりです!』
「ああ。エーアイ。準備はいいか?」
『もちろんです!』
アブド達は船を降りた。
『空気中の有害物質の量が凄いですね。スーツを脱いだら大変です』
エーアイは呟いた。
「団長、この地面って…」
「ああ。この星のプレートだろうな。やはりダーパはこの星に命中していた。シールドで防がれたものの、抑えきれなかった威力で地表が融解したんだろう」
「団長、総員準備完了です」
「了解した。目標は敵本拠地。第一、第二部隊が交戦している隙に塔の真下まで移動し、一気に奇襲する。まずは移動だ。行くぞ」
「「「了解」」」
――――――――――――――――――――
『くそ!振り切れない!すまない…もうダメだ!』
『脱出ポッドは!?』
『故障した!うまく動作しな…』
「ロータさん!」
ティナは爆発を目にした。
『ティナ!左斜め前!』
「くッッ!」
ティナはギリギリのところで右に旋回し、そのまま攻撃してコルファを破壊した。
『ごめんなさい…。後は任せたわ…』
通信が途切れた。
『もう25機ちょうどだ!いいか、絶対にやられるな!』
『こっちは殲滅した!後どこだ?』
『13時の方向を頼む!』
『了解した!』
「見て!衛星が!」
ブレーノが再び輝き始めた。そして球状の波動を放った。
ティナは船底を衛星に向け、脱出ポッドを起動した。ポッドは無事に切り離され、機体を盾として波動からその身を守った。
ティナは小窓を覗き込んだ。
「誰か…応答して…」
衛星の輝きが収まり、宇宙空間は静寂に包まれた。そこに、衛星に向かって飛行する一機船があった。
『馬鹿が!奴ら自分達の攻撃でやられやがった!』
「ティグリス!?」
『ティナ!?生きてたか!』
「あなたこそどうして…」
『敵の船を盾にしたのさ!このダイヤルは…まさかポッドの中か!?』
「そうよ。待って…何する気?」
『衛星の中に突っ込んでオーバーワールドを開く。上手くいけば内側からおじゃんだ』
「聞いてなかったの!?エネルギーがなきゃオーバーワールドは開けないのよ!?」
『お前、自分がザピーシでしたことを忘れたのか!?それにこの船はそこら辺のヘボとは違う。テューンベリー6000だ。エネルギーの供給切り替えなんて朝飯前よ』
「まさか…」
『ああ。今ある燃料の全てをオーバーワールドを開くのに使う』
「…本気なのね」
『生き残ってるのは私とあんただけだ。やるしかねーだろ』
「私まだ、あなたにお金払ってないじゃない!」
『ははは。よかったじゃねーか。…ティナ、ありがとうな』
「フィリア!」
フィリア・ティグリスはコルファの出てきた穴からブレーノに侵入した。
「なんだこれ、内部構造複雑すぎるだろ。だが、ナメんなよ、私は宇宙一の天才レーサー、フィリア・ティグリスだ!」
衛生の内部と接触しないようにすれすれを飛びつつ、攻撃して内部を破壊していった。そしてレバーに手を掛け、それを倒した。
オーバーワールドへの入口が開いた。
ブレーノ内でリアルワールドとオーバーワールドとの次元間差異が生じ、次元間が不安定となって大爆発を起こした。
ティナはその爆発を小窓から見届けていた。
「フィリア、今日の勝負は、あなたの勝ちよ」
ティナを乗せたポッドはザモークへと落下した。
――――――――――――――――――――
「着いたぞ。ここが本拠地の根元だ」
「高いですね。先が見えない」
「何せ我々はプレートの上に立っているわけですからね。頂上までは60キロメートルほどあるでしょう」
「総員、準備と覚悟はいいか?」
「「「はい」」」
「行動開始!」
「エーアイ、準備はいいか」
『もちろんです!アブド様!』
「ブースター起動!」
第三突入部隊の550人がそれぞれの配置から一斉に飛び立った。
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
「ブレーノがやられたか。まぁいい。おや?」
「誰か…応答してくれ…第一部隊壊滅…。直ちに撤退せよ…」
ゴシャッ
伸びた腕に頭を潰された。
第一突入部隊は完全に壊滅した。
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。
Twitterやってます。@hi_tu_zi2020です。よければ是非。




