EP32 それでも前へ
作戦後、ティナはドゥクス団長に帰還を命じられ、ティナ、アブド、そしてティグリスはガルディオ本部のある衛星エウロパに来ていた。
コンコンコン
「オディオです」
ティナは団長の部屋のドアを叩いた。
「入れ」
「失礼します」
ティナは部屋の中へと入った。そして団長の座っている目の前に立った。
「たった今、警察の方から通達があった。カエデスの危険レベルが上がり、侵入禁止区域と認定されたそうだ。原因は衛星落下による大地の融解。これによりカエデスの97%生命が絶滅した。そしてカエデスにおいての作戦の総指揮は君だ。ティナ・イ・オディオ」
「はい」
「残念だが、君への信頼は失墜した。話は以上だ」
「失礼しましました」
ティナは一礼し、団長の部屋を後にした。船に戻る長い廊下の途中、反対側からセデル・ユスティーツァが歩いてきた。
「オディオ。お前、しくじったらしいな」
「…そうよ」
「アブド・デ・へルートなんかといるからだ。奴は不幸の元凶だ。早く死ねばいい」
「へルートは悪くないわ。悪いのは私よ」
「こんな奴らがいるから今のガルディオはお終いなんだ。騎士に優しさなんて必要ないんだよ」
セデルはそう吐き捨て、去っていった。
ティナは船に戻った。
「へルート、私、おじいちゃんのところに行くわ」
「俺も行くよ」
「え?」
「俺も最後にお別れの言葉をかけたいんだ」
「そう。ありがとう。じゃあ、行きましょう」
「待てよ」
二人は振り返った。
「場所はどこだ。送ってくよ」
「ティグリス。いいのよ、気なんか使わなくて」
「ま、確かに気は使ってるが、今のお前に運転させて事故でも起こされて、今までの代金チャラにされたらたまったもんじゃねーからな。…今日はサービスだ。無賃でいいよ」
「ありがとう」
「早く座れ。出発するぞ」
「そうね」
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「おじいちゃん!」
三人はティナの家に来ていた。ティナは叫びながら戸を開けた。
「ああ。ティナちゃん。…残念だったわね」
「おばさん、ありがとうございました」
「いいのよ。でも、ごめんなさいね。おかしいなと思ってお家を覗いた時には、もう息は無かったのよ…」
「そうですか…」
ティナは棺の中で横たわる祖父の顔を見た。
「顔はこのままでしたか?」
「そうよ。姿勢も。まるで眠っているよう」
「ええ。心なしか微笑んでいるようにも見えますね」
「そうね。苦しんでいなそうでよかったわ。そろそろ私はおいとまするわね」
「はい。ありがとうございました」
隣人は家から去っていった。
「私にはもう親族も居ないし、葬式も要らないわね。自分達で燃やしましょう」
「ティナ…。もう、いいの?」
「ここにいても腐るだけだわ。そんな姿、見たくないもの」
「分かった。じゃあ、準備してくるよ」
「私も行く。少し話してろ」
「ええ。二人とも、ありがとう」
アブドとティグリスも家を去った。家の中には二人だけとなった。ティナは棺の傍の椅子に腰掛けた。
「…おじいちゃん。どうしよう。私、人を殺しちゃった。それも一人じゃないの。たくさんよ。私のせいで、一つの星の生命が滅んだの。私、最低ね。もうおじいちゃんと同じところには行けないわ。ぐすっ、どうしよう。おじいちゃん…」
ティナは両手で顔を覆った。
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「ティナ、ティナ。起きなさい」
「ん…。えっ、おじいちゃん!?」
「やっと目を覚ましたか」
「どうして…。それにここはどこ?おじいちゃん以外モヤがかかってて、よく見えない」
「さあな。どこじゃろう」
「でも、よかった。また会えた。なんで急に逝っちゃうのよ!」
「すまんなぁ。もうティナは大丈夫だと思ったからかのう」
「どう言うことよ。もう大丈夫って。私はたくさんの人を殺したのよ!大丈夫なはずないじゃない!」
「お前は大丈夫じゃよ、ティナ。お前には仲間がおる。わしはそれだけ言いたかったんじゃ。過去には戻れぬ。ティナ。未来を見なさい。ティナ。何があっても、進むしかないんだよ。ティナ。可愛い孫娘よ。大丈夫だ。進みなさい」
「待って!消えちゃダメ!おじいちゃん!」
伸ばした手の先にいたおじいちゃんは、霞となって消えた。
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「おじいちゃん!」
「おお。ティナ、おはよう」
「え、あれ…?」
「疲れてたんだね。そりゃそうか。ぐっすり眠ってたよ」
「ああ。なんだ。夢か…」
「今外でティグリスが準備をしてるよ」
「わかったわ」
「もう一度聞くけど、もう、いいの?」
「ええ。へルート、そっちの端を持って」
ティナは腕で目を拭い、立ち上がった。
「分かった」
二人は棺を外へ運び出した。
「落ち着いたか」
「ええ。ありがとう」
「そうか。行くぞ、ついてこい」
三人は周囲に草木も何もない広場に向かった。
ボッ
アブドが薪に火をつけた。
「はい。ティナ、君がやりなよ」
「ええ」
アブドは火をティナに渡した。
「おじいちゃん。さようなら」
ティナは棺の中に火を放った。火はアグロの肉体に引火した。三人はアグロを見つめていた。
天に昇る黒煙を見て、ティナは思った。
おじいちゃん、ありがとう。私、進むわ。進むしかないもんね。目が覚めたわ。私はガルディオの騎士だもの。何があろうと進み続けるわ。
天に昇る黒煙を見て、アブドは思った。
アグロさん。ティナのことは任せて下さい。約束しましたからね。ティナは俺が守ります。たとえこの命に変えてでも。
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「信号来ました!誘導弾の着弾を確認!」
「全弾発射用意」
「軌道最終調整完了。いつでもいけます」
「カウント開始。5、4、3、2、1、発射!」
惑星ザモークめがけ、36の方向から黄色い光線が放たれる。
「惑星を丸ごと破壊するレーザー兵器、ダーパ。歴史の遺物となった兵器のその現物を全砲投入か。その気になれば、この宇宙を支配できるな」
「全弾、誘導弾への収束を確認!命中です!」
「惑星の状況は!?」
「映像、回復します」
モニターにザモークが映し出される。
「そんな。全弾命中なんだろ!?」
「はい。全て収束しています」
「誘導弾を弾かれたのか?」
「いえ、最後の反応はザモークからのものです。確実に着弾しています」
「では、光線の方を弾かれたとでも?」
「奴らの知能は我々より遥か上。人間の作った宇宙最強兵器を防ぐ兵器を、奴らが作ったということだろう」
「そんな。どうすれば!?」
「直ちに解析班を呼べ。ザモークの情報を集めろ。そして直ちにダーパをオーバーワールドへ。」
「「「了解」」」
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「これより、作戦を通達する」
ドゥクス団長の指示により、アブド、ティナ、ティグリスは参謀室に召集されていた。
「ここにいるセデル・ユスティーツァの活躍により、敵の指令系統が判明した。各惑星に存在する主衛星を統括する衛星が銀河ごとに存在し、それらに指示を出す特殊な電波を観測した。電波を逆探知することで、電波はトゥーレ銀河の惑星ザモークから放たれていることが判明した。王により歴史から消された最終兵器、惑星破壊レーザー光線ダーパによりザモークの破壊を試みるものの、無力化に失敗。これはおそらく、球形巨大人工衛星によるエネルギーシールドの影響だと思われる。このシールドがある限り、迂闊に攻め入ることは出来ない。そこで、まずは衛星からのシールドを無力化、同時にザモークに控えていた攻撃部隊による襲撃を行う。これがその班割りだ。各自確認する様に。そして作戦はダーパ再充電完了の16時間後に開始とする。それでは解散」
「「「了解」」」
「へルート。あなたはの配属はどこだった?」
「俺は地上突入第三部隊だ。ティナは?」
「私とティグリスは衛星破壊部隊よ」
「飛行技術を考慮すれば当然の結果だな」
「何よティグリス。妙に乗り気じゃない」
「団長から直々の願い下げだ。報酬も倍貰えるらしい。乗らない手はないな。船だけに」
「「……」」
アブドとティナは顔を見合わせた。
「ああもう、私は船の整備に行くからな。もし私が気づいてなかったら、ティナ、呼べよ?」
「分かってるわよ。どうぞごゆっくり」
ティグリスは整備室へ歩いていった。
「少し休憩しましょうか」
「ティナは整備しなくていいの?」
「私はティグリスと違ってメカニックに任せているもの。特にこだわりもないしね」
「そうなんだ」
「ラウンジにでも行きましょう」
「そうだね」
二人はラウンジに向かった。
二人はテーブルに向かい合って座った。周りには誰もいなかった。
「緊張するわね」
「うん」
「私、次へましちゃったらガルディオでいられないかもしれないわね」
ティナはカップを見つめながら呟いた。
「そんな…。でも、そうかもしれないね…」
「そうしたら思い切り笑ってよ、私のこと」
「そんなことしないよ」
「どうして?あの日あなたはこんな私の説教を垂れたのよ?恥ずかしいと思った方がいいわ」
「そんなこと思わないよ。それにもしティナがガルディオを去るって言うなら俺も去るよ。そもそも俺は、正式なガルディオの一員ではないからね」
「へルート…」
「ティナがあの日叱ってくれたから、今の俺があるんだ。だからもしティナが潰れそうになったら、今度は俺がティナを助けるよ。…まぁ、できる範囲でだけど…」
ティナは吹き出した。
「何よそれ。頼りないわね。ふふふ。でもそうね、この前おじいちゃんに誓ったばかりだもの。くよくよしてもいられないわ。でも、もしダメになったらよろしくね?」
「うん」
アブドは固く頷いた。
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宇宙共通時間35時55分。ザモーク付近のオーバーワールド内。
そこに、ガルディオの全兵力が結集していた。
『宇宙の未来は全てこの作戦にかかっている。皆、心してかかるように』
時を表す数字が、全て0になった。
『時間だ。全機、発進』
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




