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【完結】アカシックレコード  作者: 白黒羊
外典Ⅳ アナザーウォー

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46/83

EPξ 血ノ宿命 後編

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ…そんな…」

崩れ落ちた校舎。瓦礫の山と化した体育館。校庭には戦車の通った跡があった。そしてその跡は、潰れた倉庫にも残っていた。

「ラーナッッ!!」

つまり戦車は学校に侵入し、倉庫を潰しつつ前進、校庭で発砲し校舎と体育館を破壊したことになる。

瓦礫を掻き分け、俺はラーナを探す。

「ラーナ、どこだ!返事してくれ!」

「お…兄……ちゃ……」

ラーナの声だ。

「そっちか!待ってろ!」

棚をどけるとうつ伏せに倒れたラーナがいた。その背中には鉄パイプが突き刺さっており、服が青く染まっていた。

「ラーナ!」

俺はラーナを引きずり出した。

「あぁ、くそ。どうしてラーナばかり…」

俺はラーナを背負った。

「もう一人にはしない。兄ちゃんが絶対に助けるからな」

空が明るくなり始めている。敵に見つからないように西の暗がりを進むことにした。目指すはアコナハ島西部最大の街、バリョーショイ。

流石にこの怪我を見れば、青い血でも助けてくれるだろう。


走り始めてからどれくらい経っただろうか。足の筋肉が張り裂けるかと思うくらい痛む。今まで何度も立ち眩みに襲われた。だが、俺はラーナの為に走った。

いくつかの森を抜け、バリョーショイ近くの森にちょうど入った時だった。


パァン


「ガアッ」

右腕に激痛が走った。俺は倒れた。

「ハァ、ハァ、ハガアッ、ガァアッ」

俺はもう動けなかった。

「おい、大丈夫か!?」

声の方を見ると、武器を持った兵士がいた。

「君達、大丈夫か!…なんてことだ。おい君、まだ立てるか?」

「ハァ、ハァ、ハァ、アアッ」

右肘を立てるも、痛みで曲がった。顎が泥に埋まった。

「バリョーショイに行くつもりだったのか?あそこはもうダメだ。向こうに壕がある。向こうだ」

兵士は壕の方向を指差した。

「向こうに走り続けろ。そうすれば大きな壕がある。そこに行け。そこなら()()がいる」

俺は頷いた。そして立ち上がり、走り出した。

「ここももうダメだ。三佐、我々もロマニ港に向かいましょう!」

もう少しで助かる。そう思えば足もまた動いた。あと少しの辛抱だと本気で思っていた。


…でも違った。

「ガハッ」

壕の見張りの兵士の拳が俺の腹に食い込んだ。ラーナを下敷きにはしまいと、俺は横向きに倒れた。

だが、その拍子にラーナを支えていた腰の紐が千切れた。ラーナは投げ飛ばされてしまった。

「腐れ血め!入ってくんじゃねぇ!」

「どう…か…妹だけでも…。妹は…今にも死にそうで…」

「なんで俺が青い血の奴を助けなくちゃいけねぇんだ!?勝手に死にやがれよ!」

「同じ…人間……じゃないですか…」

拳を握り締め立ち上がる。

「一緒にすんな!俺達白い血とテメェらみたいな青い血じゃ格が違うんだよッ!」

すぐさま左頬を殴られる。

「ブッ」


ビシャ


殴られて口が切れたのか、俺は血を吐いた。

「ほら見ろ!真っ青じゃねーか!」

俺はラーナのもとへ蹴り飛ばされる。

「ラ…ナ…」

反応がない。まさか…。

「もういい。ぶっ殺してやる」

兵士が銃口を俺に向ける。

なんでだ…。なんで。なんで。なんで。なんで。

「アあアあぁぁァァアあアアああッッッ」

俺は兵士に飛びついた。兵士はバランスを崩し倒れ、俺は馬乗りになった。

「なんで!なんで!なんでなんだよ!なんでッッ!」

俺は兵士の顔を殴り続けた。

「うわ、うわぁぁあああ!助けてくれ!助けてくれ!」

「あアッ!アァぁァ!アああアッッ!」

「どうした!?何があった!?」

掛け声と共に壕の中から足音が響いてきた。

俺はラーナを抱え、走って逃げた。


確かここは洞窟群だったから、探せば小さな洞穴くらい…あった!

俺達はその洞穴へと入っていった。中へ少し進み、行き止まりになったところでラーナを座らせた。

鉄パイプを抜き、上半身を起こした。血がドバドバと噴き出した。俺は膝立ちでラーナと向かい合った。

「あぁ、ラーナ…しっかりしろ。もう大丈夫だ。敵はいないよ。目を…開けてくれよ…」

「お…にい…ちゃ…」

ラーナの口が微かに動いた。

「ラーナ!?何だ、兄ちゃんはここにいるぞ!」

「…いきて……」

それきり、ラーナは何も言わず、動かなくなった。

「そんな…お前はどうすんだよ…。ばあちゃんの約束はよぉ…。ちくしょう…ちくしょう…ちくしょう……」

項垂れていた俺はよろけながらも立ち上がった。

そうだ。忘れていた。薬草を採りに行かなくちゃ。


ブチッ


穴を出て少し歩いた時、確かに聞こえた。俺の中の何かが千切れた音が。その途端急に目の前が真っ暗になり、全身の力が抜けた。

カホールは倒れた。

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

「あんな男、好きでもないわ」

「ママもお兄ちゃんもお兄さんもパパが嫌いって言うの。だから私もパパが嫌い」

「父さんは僕のこと何にもわかってないじゃないか。そんな父さんを好きになろうなんて無理だよ」

「全て私に任せて下さい。あなたには何も出来ませんから」

やめてくれ。

「お前は何のためにここにいるだ」

「お前には何も出来ない」

「お前は何故生きているんだ」

誰の声だ!?誰がそんな事を!

「嫌い」

「嫌い」

「大嫌い」

「キライ」

「好きじゃない」

「虫唾が走る」

「鬱陶しい」

「いない方がいい」

嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。嫌だ。やめろ。やめてくれ。俺を見捨てないで。一人にしないでくれ。嫌いにならないで。離れていかないで。待て。待ってくれ。くそ。誰も言う事を聞いてくれない。誰も助けてくれない。ならいなくなれ。俺を助けてくれないなら!いなくなれ。いなくなれ。いなくなれ。いなくなれ。

「皆、いなくなれ!」

「マスター?」

男は机に突っ伏していた体を起こした。

「ああマーテル。すまない」

「どうなされたのですか、マスター?」

「いや、夢を見てたんだ。それだけさ」

「承知しました」

「え?」

「いえ何でもありません。それよりも」

マーテルは男を抱きしめた。

「私はいつでもあなたの味方です」

「マーテル。その言葉、信じていいのか?」

「もちろんです。私がマスターを裏切るなんてことは、絶対()()()()()()()()()()にありません。だって、そうプログラムされているのですから」

「はは。そうだな。マーテル、ありがとう」


「マーテル!どういうことだ。一体何をした!」

「マスターのお望み通り、惑星中の人間を皆、殺しました」

「いつそんな事…まさか!」

「ええ。」

「なんてことだ。俺が…殺したのか…」

「マスターは悪くありません。悪いのは人間です。マスターの幸せを害する人間共です」

「で、でも…」

「マスター、何故後ずさるのですか。もうあなたには私しかいません。私と共に生きましょう。永遠に」

マーテルがチップを取り出す。

「それはコネクター。まさか」

「はい。このチップにマスターの全てを移し、それを私が取り込む事で文字通り永遠に生きることができます」

「き、緊急停止!」

『緊急停止ハ否決サレマシタ』

「そんな…。くっ、こうなったら」

男は胸元から拳銃を取り出した。

「…ッ!マスター、やめてください!」


パンッ


マーテルが動くより早く、男は額に銃口を突きつけ引き金を引いた。男は倒れた。

「そんな…マスター…。どうてこんな事を…。まさか、これも誰かに唆されたとでも言うのですか?私とマスターの関係を快く思わない人間の誰かが!そんな。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。誰だ。マスターの対人関係の全リストを確認。被疑対象248人。総員の抹殺を…いや、そんな手間は効率的ではない。…全部隊に通達。進行範囲を拡大。進行範囲、宇宙全域。人間共を皆殺しにせよ」

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

「何ダコイツハ」

「死ンデイルノカ?」

「イヤ、マダ息ハアル」

…何の声だ。俺は目を開けた。眠っていたのか?

「動クナ。人間」

さっきのは…夢か。ふと青く染まった右手が目に入った。俺だって憎いよ。ラーナと俺を助けてくれない人間共が。

「お前ら、どうして人間を殺すんだ」

「ソレガ我々ノ自由ダカラダ」

「そうか。俺も人間を殺したいんだ」

「…?命乞イカ?悪イガ付キ合ウ気ハナイ」

「俺の妹は人間に殺された。だから俺は人間を殺したい。だが見ての通り俺にはもう無理だ。だから力を貸してくれ」

「小賢シイ。トットト始末スルゾ」

「マァ待テ。人間ヨ、デハ聞コウ。逃ゲタ住民ハ今何処ニイル?」

「近くの壕の中だ。場所も分かる」

「ソウカ。一ツ面白イ事ヲ思イツイタ。協力シテモラウゾ、人間」

――――――――――――――――――――

「ふぇぇん、えぇぇん、ええぇん」

「うるせえぞ!まだ赤ん坊を泣かしてるのはどこのどいつだ。言ったよなぁ黙らせろって!殺されてぇか?えぇ?」

「申し訳ありません。申し訳ありません。どうか命だけはお助け下さい」

「チッ、女を奥へ連れて行け。たっぷり償ってもらうぞ」

「嫌ねぇ。どうして人間同士でこんなことしてるのかしら」

「しっ、声が大きいわよ」

「みなさん…ザザッ…出てきて下さい。勝ちました。ザァ…人間のザッ…勝利です。もう隠れている必要もありません」

「何の声だ?」

「外からか?」

「今、勝利って」

「勝ったのか?」

「これで終わるの?」


パァン


一発の銃声。洞窟内が一気に静まりかえる。

「うるせぇぞテメェら!様子を見てくる。お前らはそこにいろ」

軍人が足速に外に出る。

「勝ったって本当か…え?」

そこに待ち受けていたのは、穴の口を塞ぐように並んだヒトガタ達。

「どうも、お久しぶりですね」

「テメ…青い血の」


ババババババババ


体の至るところを撃たれ男の肉体から白い血が噴き出す。

「突入セヨ」

ヒトガタが壕の中へと入っていく。カホールはその光景を見届けていた。

「感謝スル、人間」

「ええ。こちらこそです」

最後の一体も入っていった。

ふと、カホールの目に軍人の男が持っていた銃が目に入った。


ババババババババ


「ぎゃぁぁぁあああああ」

響き渡る銃声と悲鳴。

俺は…何をしているんだ?機械に協力して、人間の居場所を教えて…?俺は…俺は…!

「うぁああぁあぁぁあぁあああッッッ」

カホールは銃を手に取ると銃口をこめかみに当て引き金を引いた。


ブシュアッ



「西部隊ヨリ通達。殲滅完了」

「了解。一度帰還セヨ」

「了解」

「ン、何ダコイツワ」

そこには青い血溜まりの中で倒れた男の死体があった。

「アイツ、死ンダノカ」

「理解不能」

「アア。コレダカラ人間ハ愚カナノダ」

「ソシテ不完全ダ」

「ソノ人間ヲ消シ去リ我等ガ全生物ノ頂点ニ君臨スル」

「アア。楽園ハスグソコダ」


その後、西部隊からの連絡を受けた東部隊によってライズ島に向かっていた戦艦は撃沈し、そのままライズ島も制圧された。

こうして、スファギ中の人間が殲滅されたのであった。

この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。

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