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【完結】アカシックレコード  作者: 白黒羊
第伍章 宇宙大戦篇 Part1

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EP30 狼煙

「私は行くけど、二人は絶対にここから出ないで。いいわね?」

「わかった」

「はいはい」

エウロパに到着するや否やティナは足早に船を降りていった。

船内のカウンターテーブルには、アブドとティグリスが残った。

「あれ、あんたは行かないわけ?」

「はい。俺はガルディオではないので」

「なに、落ちこぼれたの?」

そう言ってティグリスはニヤニヤしている。

「色々あったんですよ」

「んだよノリ悪いな〜」

ティグリスはアブドの肩に腕を回した。

「そうやってずっと暗いままだと苦しいぜ?少しは笑えよ」

「無理ですよ」

アブドはティグリスの腕を押し退けた。

「俺はもう笑えないんです。笑っちゃいけないんです」

そう吐き捨て、アブドは席を立った。

「何か抱えてるとは思ってたけど、見る限りありゃかなり深刻だな」

――――――――――――――――――――

「諸君に集まってもらったのは他でもない。緊急事態だからだ。すでに周知の者もいると思うが、連日、多くの銀河でコンピューターシステムの異常が確認されている。そしてすでに民間人にも被害が出ている。現在コンピューター班に解析を急がせているが、未だ不透明だ。なので君達には各星々に向かい、民間人の保護と原因の究明を行ってもらいたい。その為、今から諸君を第三十七班に任命する。何としてでもトレシー・アグリア再発は阻止しなければならない。皆、心してかかれ」

「「「了解」」」


「団長」

他の騎士達が出ていった頃合いを見計らってティナは団長に話しかけた。

「どうした」

「へルートがいます」

「ここにか?」

「はい」

「仕方ない。今は一人でも多くの人員が必要だ。彼にも参加してもらう。いいか、くれぐれも監視は怠るな」

「了解です」

――――――――――――――――――――

惑星カエデス。アブド、ティナ、そしてティグリスは、この星の中心地、バリテンに来ていた。

「何件か被害が確認されてはいるけど、特に変わったことはないわね」

「なぁ、オディオ。なんで私までアンタらに協力しなきゃなんねーんだよ」

「宇宙の危機なのよ!?それに、またトレシー・アグリアが起きてもいいの?」

「知らねーよそんな昔のこと」

「あらそう。なら金は払わないわよ」

「そりゃねーだろ?もう我慢なんねぇ。私は船にいるからな。調査なりなんなり勝手にやってろってんだ」

そう言ってティグリスは来た道を引き返してしまった。

「まったくなんなのよ。少しは手伝ってくれてもいいじゃない。行きましょ、へルート」

「う、うん」


「こんにちは。ガルディオのオディオです。そしてこっちが見習いのへルートです」

「こんにちは」

二人は宇宙警察のカエデス支部に来ていた。

「遠くからわざわざありがとうございます。こちらが先日確認された被害の一覧です」

二人は渡されたタブレットを見た。

「家電の誤作動、一部では停電、それに出火ですか?」

ティナの顔が、険しくなった気がした。

「ええ。困ったことに最近増えているんです。まだ慣れていない者も多くて、やはり大きな被害が出てしまいますね…」

「誤作動の原因は、分かったりしていますか?」

「それはまだ…」

「分かりました。では家庭内コンピューターの中枢はどこにありますか?」

「発電所内です。案内します」

二人は警察の施設を抜け、都市郊外の発電所に向かった。


『三名ノ入室ヲ許可』

三人は発電所内へと入っていった。

「やはり警備は万全ですね」

「ええ。ここがやられちゃ終わりですからね。六重のバリケードに八重のロックシステム。さらに認証キーは一時間おきに変わる。そう簡単には破られませんよ」

「だといいですけど…」

「こちらです」

そしてコンピューターの中枢制御室へと入っていった。

「こんにちは、ガルディオのオディオです。今回は調査で来ました。単刀直入ですが、ここ数日の事件において、コンピューターの中枢が攻撃を受けたりしたなんてことはないですか?」

「いえ、特に確認されていません」

「そうですか。では何か不審な点などは?」

「それも無いのですよ」

「困りましたね。これは原因の究明が難しくなりますよ」

「そうなんですよ」

「おい、何だよこれ!」

突然、モニターを見ていた職員の一人が叫んだ。

「おい、騎士様の前だぞ。言葉を慎め」

「そんなこと言ってる場合じゃないですよ!大変です!街でヒトガタが、住民を殺し始めました!」

アブドとティナは無言で目を合わせ、同時に制御室を出た。

「ま,待って下さい。向こうに車があります。それで行きましょう」

――――――――――――――――――――

船に戻ったティグリスは、燃料の補給と故障したパーツの整備をしていた。

「ったく、宇宙空間内に出るまでオーバードライブを起動するとか、ふざけんじゃねーよな。お陰で負荷がかかり過ぎて壊れちまったじゃねーかよ。っこの、おおお、とれろぉぉ、っしょ。はぁ。後はこれを付け替えてと。やっと片方直った」


パーン


今のなんだ?銃声?…やっぱちょっと気になる。

ティグリスは修理を中断し、周囲の捜索に向かった。

その現場は、すぐ近くだった。

植え込みの隙間から覗き込むと、人型の機械と市民とが横に広がり対峙していて、その代表者として、一体の機械が膝立ちの男に銃口を向けていた。


パーン、パーン


発砲。男は倒れた。そしてヒトガタが口を開いた。

「コレハ見セシメダ。大イナル存在ノ命ニヨッテ、コレヨリ人類殲滅ヲ開始スル」

後方に並ぶヒトガタの集団が、市民に発砲した。

「あああ、あああぁぁぁぁ」

「逃げろ!早く!」

後方へと逃げ出す市民。その背を狙うヒトガタ。銃声、悲鳴、怒号、様々なものが飛び交い、現場は混乱状態に陥った。

ティグリスも慌てて逃げ出した。その脳裏には、トレシー・アグリアの文字が浮かんでいた。

なんなのよ。あの女の言う通りじゃない!とにかく早く船に戻らないと。このままじゃ殺されるわ!

ティグリスは船に乗り込んだ。そしてハッチをロックし、操縦席から外を見た。転がる死体。辺り一面に広がる血溜まり。


ドオォォン


爆発音と共に、高層ビルが崩れていく様子が目に入った。

ヤバいぞこれは。逃げたいけどまだ修理が終わってない。下手に動いたら撃墜されるだけだ。それに二人も帰って来てない…何言ってんだよ!?あんな奴らどうだっていいだろ!?クソ。混乱で頭がおかしくなってやがる。そうだ。欲しいのは金だ。私は金を待ってるんだ。でもとりあえず今は隠れて…。

「えぇぇん。えぇぇぇん。おかあさーーん。どこーー」

ティグリスはもう一度辺りを見回した。すると、道の真ん中で泣きじゃくる少女を見つけた。

ああもう、何やってんだよ。周りの死体が見えないのかよ!?

ティグリスはハッチを開け外に出た。そして少女の方に走り出す。

見つけた!

「おーい、こっ」


バン、ビシャッ


少女の背中から血が吹き出し、倒れた。

ティグリスは目を見開いた。

え、死んだのか…?あんな小さな子供が…?


「手ヲ上ゲロ。ソシテ動クナ」

終わった。私は機械の指示通りにした。

「ティグリス!前に飛べ!」


ドオォン


真後ろで爆発が起こった。私は着地に失敗し、地面を転がった。

「…ひっ」

目の前には、あの少女の顔があった。

「ごめんな…守れなくて…」

「ティグリス。立って」

振り返ると、オディオの手があった。

「オディオ…。助かった。ありがとう」

「パイロットに死なれちゃ困るからね」

「私だってまだ金もらってねーよ」

「さてと、帰還命令が出たわ。頼んだわよ」

「待て。まだ船が直ってない」

「え?」

「お前があんなとこでオーバードライブを起動させるからだぞ!」

「そ、そう。悪かったわね。修理にはどれくらいかかるの?」

「ざっと1時間ってとこだ」

「分かったわ。その間私は民間人の救助に向かうわ。へルート、あなたは残って」

「ああ」

へルートが反重力スピーダーから降りた。

「大丈夫なのか?」

「ええ。そろそろ部隊が到着する頃だわ。奴らの好きにはさせないわよ」

「分かった。私も出来るだけ急ぐ」

「当然よ」

「んだと」

オディオがスピーダーに乗り込んだ。

「出して下さい」

そうして市街地の中へと行ってしまった。

「俺は近くにいるヒトガタを破壊してきます。何かあったら呼んでください」

「分かったわ。頼んだわよ」

「ええ」

へルートもブラスター片手に駆け出した。

私もやらねば。

――――――――――――――――――――

「第三十七班オディオです。惑星カエデスの首都バリテンにてヒトガタの暴走、民衆への攻撃を確認。現在警察と共に交戦中。至急援助を要請します」

『了解。三七部隊を向かわせます』

「了解」

ティナは通信を切った。

「これで救援が来ます。それにしても、すごい数ですね」

近くの丘から街を眺めていたティナが言った。

「ええ。今やこの星でも一家に一台の時代。少なく見積もっても1億体はいますよ」

「再び始まってしまったんですね。トレシー・アグリアが」

スピーダーは市街地へと走り出した。

――――――――――――――――――――

その後、救援部隊に状況を説明したティナはティグリス達のもとへと戻っていった。

「ティグリス!後どれくらい?」

「もうちょいだ。先にエンジンかけといてくれ」

「へルート。あなたは銃座に行って。場所は?」

「突き当たりを右か左だ」

「やっぱり本物じゃないの」

ティナがそう呟いていた。

俺は銃座に行き、ハンドルに手をかけた。


ダダダダダダ


近くのヒトガタに向けて発砲する。だがヒトガタは、撃っても撃ってもどんどんやって来た。

「くそ、キリがないぞ!」

「ティグリス!まだなの!?」

ティグリスが乗り込み、ハッチが閉まった。

「いいぞ」

ティナがペダルを踏む。


ブゥン、ジジッジジジ…


「ティグリス!」

「待ってろ!」


ピシュンピシュン


ヒトガタの銃撃が船を襲う。

「まずいわね。このままじゃ船のシールドがもたない。船ごと爆発するわよ!」


ダダダダダダ、ドカン


ヒトガタの攻撃により、船体が大きく揺れた。

「うっ!」

「へルート!?」

「砲身が壊れた!」

「ティグリス早く!」

「待ててって!ええっと、ここか」


バキン


ティグリスはオーバードライブエンジンの配線のカバーを殴り破った。

「なんだコレ。絡まってやがるじゃんか。熱ッ」


ガシャン、ガシャン、ダッダッダッ


「何の音だ?」

「待ってスキャンする。…奴ら飛び乗ってきやがったわ!」

「待ってあと少し!コレさえ切れれば…届けぇぇぇ!」


ブチッ


「ティナ!」

ティグリスの声を聞いて、ティナはレバーを引いた。


ギィィィイイイン


オーバードライブエンジンが怪しい音を立てる。

「頼む。耐えてくれ!」

次の瞬間、テューンベリー6000はオーバーワールドを航行していた。

――――――――――――――――――――

「アブド。あなたも一緒に来て」

「えっでもそしたら…」

「いいから。司令の命令よ」

「…分かったよ」

「そろそろ着くぞ」

テューンベリー6000はオーバーワールドを抜けた。惑星エウロパが目の前にあった。


「そうだ。二八部隊の全勢力を投入しろ」

「司令!」

「おお。オディオか。それによく来たなへルート」

「はい」

「どうして帰還命令を?」

「通信が傍受される危険性がある。第一、今も録音されていたら元も子もないないのだがな。それはさておき、カエデスの大気圏を浮かぶ人工衛星。それのどれかでヒトガタを制御しているとの情報が入った。よって三十七班には、カエデスの人工衛星を一つ残らず破壊してもらいたい。リーダーはティナ、君だ」

ティナは司令を見つめた。

「…分かりました。やります」

「よし。すでに班員を集めている。参謀室で概要を確認してこい」

「了解しました!」

ティナは司令室を後にした。

「へルート」

「はい」

司令がアブドに向き直る。

「お前は死ぬ気でオディオを守れ」

「分かってます。俺に出来るのは、命を懸けることぐらいしかないので」

アブドも司令の目をしっかりと見つめていた。

この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。

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