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【完結】アカシックレコード  作者: 白黒羊
第肆章 運命超動篇

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39/83

EP26 アンビバレンス

25時30分。王都レグーノの宮殿前広場に、多数のデモ隊が集結した。

「我々に自由を!」

「王を打倒せよ!」

その集団は今にも宮殿に突入する勢いであった。

要請を受け、ドゥクス団長は最も近いレグーノ駐在のガルディオの騎士を派遣。警察と共にデモ隊を逮捕していった。しかし数が多い為、鎮圧にはまだ時間がかかると思われた。

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

「おいアブド、一昨日からなんだか浮かない顔してるが、どうした?」

昨日の成績発表も終わり、合格者には今日から数日間の休暇が始まっていた。

「いや、気にしないでくれ。大したことじゃないんだ」

「…そうか」

「それよりお前、一旦実家に帰るんだろ?」

「ああ。明日からな。ガルディオの騎士になったって、家族に報告してくるんだ」

「出発は、今日の夜にしないか?」

「何言ってんだよ。一時帰宅は明日からって、そういう指示だったろ」

「そう…だったな…」

「それに今日の夜だったら、まだ何の準備も終わってないし、そもそも祝賀会も出れねーじゃねーか」

「お前まだ準備終わってねーのかよ」

「うるせーなぁ」

二人は笑った。

「冗談も言えりゃ上出来だ。大丈夫そうだな」

「おう。だから気にすんなって言ったろ」

「そろそろ行くか」

「ん、もう時間か。よし行こう」

二人は寮の図書室を後にした。

――――――――――――――――――――

「ええ、まずは皆、騎士への昇格おめでとう。君達のような優秀な生徒を持てて、私も嬉しい。今、君達の先輩は治安維持に出動している。今後は君達もその任務を担うということは頭に入れて置いてもらいたい。こうして噂話で済まされるのもこの数日間までだ。だからまぁ、せめて今日は楽しもう」

祝賀会は、グーウェン教官長の言葉から始まった。

大層なご馳走様が振る舞われ、各々で出し物なども行われ、大いに盛り上がった。

――――――――――――――――――――

「はぁ、ビーシュの奴らは今頃お祭り騒ぎか。いいなぁ」

「でも俺らも今年からそのビーシュじゃねーか。こうして寮にも来たわけだし。すぐにあいつらに追いついてやろうぜ」

「だな。騎士なんてもうすぐそこだぜ」


ドォォォン


寮内に、爆発音が響いた。


パッ


それと同時に、建物の全てが暗闇に包まれた。

「て、停電!?」

「多分そうだな」


「…おかしいぞ、もう2、3分は経ってるってのに、非常灯に切り替わらないなんて」

「「逃げろ逃げろ!!」」

寮の奥、爆発音の聞こえた方向から、多数の人が叫びながら向かって来た。

「どうしたんだ!?」

「今の爆発、発電室からだ。それで火が上がってる」

「大変だ。皆に知らせなきゃ。俺は上から声をかける。お前達は下から頼む」

「わかった」

「待てよ」

「え?」

「俺も行く」

「ありがとう」

二人は階段を駆け上がった。

「大変だ大変だ」

「皆早く逃げろ!」

「火が上がってるぞ!」

部屋の中にいた訓練兵達が、続々と避難を始める。

「こっちはダメだ。もう火がそこまで来ている」

小さなドア目掛け、大勢が押し寄せる。

「やめ、押すなよ」

「そっちこそ…!」


ガチャガチャ


「何でだ」

「おいどうした」

「早く開けろよ」

「開かない。鍵が掛かっている」

「「「…!」」」

「そんな…」


ガチャガチャガチャガチャ


「クソ、開けよ!」


バン


大きな音を立て、扉が勢いよく開いた。

だが、そこに立っていたのは…

「はーい。注目ー!」

ガトリングガンを持った小柄な男だった。

「今から害虫駆除を始めまーす!」


ダダダダダダダダダダダダ


男は一声言い放つと、訓練兵目掛けガトリングガンを乱射し出した。

「おい、どうしたんだよ。なんで逃げないんだ。それになんだよ今の音…」

渋滞を掻き分けて前に出た少年は絶句した。

「え…」


ダダダダダダダダダダダダ


血が噴き出し、死体が背後の人へ倒れかかる。

「う、うわぁぁぁ!!あああぁぁ、逃げろぉぉぉぉ!!!」


ほとばしる弾丸と迫り来る炎、その両方に挟まれた訓練兵達は、近くの部屋に逃げ込み、棚やベッドで扉を塞いだ。

「いいね、いいね。そうやって逃げ回ってる方が駆除のし甲斐があるってもんよ」

そう言って男は時計についた通信機に話しかけた。

「総員、無条件発泡を許可。どんどん殺せ」


「そんな…目の前で…死んだ…」

「おい、今は悲しんでる暇はない。自分が生き残ることを考えろ」

「でも…どうすれば…」

「ビーシュの人達が知れば、すぐに駆けつけてくるはず。だからもう少しの辛抱だ」

「無理だ…。もう爆発から5分経つ。それなのに人一人も来ないなんておかしい」

「まさか、まだ誰も気づいてないのか?」

「そんなの知らないよ。もう皆死んだかもしれない」

「…俺、行ってくる」

「は?行くってどこへ」

「決まってるだろ。本館の方だ。もし本当に気づいていないなら、俺が知らせればいい」

「でもどうやって。ドアはもう塞いだし」

「窓からだ」

「危険すぎる!」

「それでも行くしかないだろ」

「もし外に敵がいたら…?」

「そん時は、後を頼む」

「そんな…」

「ここにいてもいずれ死ぬ。なら、少しでも生きる為にもがこうぜ。じゃあ、行ってくる」

少年が窓に手をかけた。


ガラガラガラ


「待って…」


ダダダダダダダダ


怯え固まる少年の前に、穴の空いた肉塊が転がり込む。

「あ…あああ…」

そして窓から突き出す銃口。


ダダダダダダダダ

――――――――――――――――――――

ドォォォン


「何の音だ?」


パッ


「停電…?まさか!」

「キマーナ教官、生徒の安全の確保をお願いします。ゼラード教官は現状の確認を。バルト教官は私と発電室まで」

グーウェン教官長が素早く指示を出す。3人の教官は頷いた。

「皆落ち着いて。とにかくこの場から離れないで」

キマーナ教官が声を掛ける。

始まってしまった…。もう戻れない。

アブドは思った。

「…や、やばい」

「どうしたアブド?」

「騎士手帳が無い。どこかで落としたみたいだ」

「そんなこと言ったって、今は探せないだろ」

「でも、あれが無いとガルディオの騎士と認められない。絶対失くすなって言われてたし…。多分図書室だ。あそこで落としたんだ。どうにかして行かないと」

「落ち着けって。今外がどうなってるか分かんないだろ。無闇に行動するのは危険だ。また後で探せばいいだろ」

「でも…」


ガタン


ゼラード教官が勢いよく食堂に入ってきた。

「男女寮の発電室から出火。火は既に寮の半分にまで広がっている。それに正体不明の集団が外で銃を乱射していてとても危険な状況だ」

「比較的安全な通路は?」

「ルート73からなら裏口に出れる」

「分かりました。では、皆さんルート73から早急に避難を」

「ほら、行くぞアブド」

「やっぱり、放っておけない」

アブドは別方向へと走り出した。

「おい待て!」

リデルも後を追う。


「何止まってんの。早く逃げないとシオン」

「見て。アブド君とリデル君が」

「え、全く何やってんのよあの二人は」

「連れ戻さなきゃ」

シオンも走り出した。

「ちょ、待ってよシオン」

ティナも渋々後を追う。


「待てってアブド!」

螺旋階段を登りながらリデルは叫んだ。

「逃げるのが先だ。手帳なんてほっとけ!」

階段を登り切り廊下に出る。


ドオオオオォォォォン


「…ッッ!また爆発だと?」

リデルが足を止める。

そしてその爆発により、天井が崩落してしまった。

「リデル君!」

「…!?シオン、何でこんなとこにいるんだ。さっさと逃げろ!」

「二人こそ、こんな時にどこ行こうって言うのよ」

「アブドが騎士手帳を落としたとかで走り出したんだ。何度も止めるてるのに、あいつは全く」

「どこに行ったかは分かってるの?」

「ああ。恐らく図書室だろうって。だから多分この廊下の先にいるんだが、この有様だ」

「…これじゃ上の階も通れないし、屋上から窓を伝って降りましょう」

「屋上だって!?」

「うん。何度か行ったことあるから。着いてきて」

そう言ってシオンは階段を駆け登りだした。


「はぁ、はぁ、はぁ。もう、三人はどこよ」

――――――――――――――――――――

シュー、プシュー


船のハッチが開く。

「よう。久しぶりだなアブド」

中から、メニコットとヴィリーノが降りてきた。

「どうも」

「そんな拗ねんなって、アブド」

「本当にこれしか手段は無かったんですか…?」

アブドは消え入りそうな声で呟いた。

「なにもあなたの回収が最大の目的ではないわ。それにあなたはガルディオではなく、シュリンターでしょ?」

「分かってますよ。そんな事は」

「なら良いわね。さぁ、帰るわよ」


「アブド…?」

「アブド君…?」

……!

俺が振り返るより早く、メニコットさんとヴィリーノさんが二人の手を腰に固定した。

「おい、どういう事だよ。説明しろアブ…」

「黙れ、ガキ」

メニコットさんがリデルの口を塞ぐ。

「アブド君…」

シオンの口もヴィリーノさんに塞がれる。

「アブド。あなたの組織への忠誠を今一度示しなさい」

ヴィリーノさんはそう言って、俺にナイフを差し出した。

「待って下さい。こいつらは俺の一番の友達で、それで、その、何も関係ありません!殺す必要はないてしょ!!」

「目撃された以上、生かしてはおけないわ」

「そんな…」

俺はどこを見ることも出来ず、俯いた。

「それとも、あの日望んだあなたの自由は、友情なんかに囚われるちっぽけなものだったのかしら?」

…違う。俺は宇宙を見たあの日から、ずっと自由の為に生きているんだ。

ちっぽけだなんて、言われてたまるか。

俺はリデルの目を見た。リデルの目は、怒りに包まれていた。

「やるべき事は分かってますよ」

俺はナイフを握りしめた。そしてリデルに一歩、近づく。

リデルは首を振ってメニコットさんの手を弾き、口を開いた。

「お前は!ずっと騙してたのかよ!俺達のことを!仲間だと思ってた…。友達だと、親友だと思ってたのに!!そう思ってたのは俺だけだったのかよ。…そりゃねぇよ。…俺はお前を赦さないぞ。俺達を裏切った事、死んでもお前を赦さない!!!」

リデルに罵倒され、俺は涙と共に今までの思い出が溢れてきた。

「くっ…」

俺は奥歯を噛み締めた。

「あああああぁぁぁぁぁぁッッッ!!」

俺は全ての力を込めて、ナイフをリデルの胸に突き刺した。


ドサッ


引き抜き、メニコットさんが手を離し、リデルは倒れた。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ」

そして俺はシオンを見た。シオンの目は、悲しみに満ちていた。

「私…私!アブド君が、アブドが好きだった!アブドはいつも優しくて、私のこと慰めてくれて!覚えてる?私が逃げ出そうとした時、必死に止めてくれた日のこと!私すごく嬉しかった。人にあんなに優しくされるなんて初めてだったの。ねぇ、戻ってよ。前の優しいアブドに戻ってよ!!」

俺はシオンに近づく。ナイフから血が滴る。

俺はシオンの目を見て言った。

「…ごめん」


ドスッ


俺の体が、シオンの血で染まった。

崩れ落ちたシオンはその場でうずくまり、やがて動かなくなった。

「あ…ああ…」

俺は丸まった二人を、血に染まった自分の手を見て、目眩がした。吐きそうになった。頭が痛い。助けて。誰か助けて…!

「アブド、あなたのやったことは間違ってはいないわ。確かに残念だけれども、自由の為には仕方のないことよ」

ヴィリーノさんは俺の肩に手を置き、船に戻っていった。

メニコットさんは辺りに火を放ち、後に続いた。

そうだ。仕方なかったんだ。ここに来た二人が悪いんだ。

そう、思うしかなかった。

俺はもう一度二人を見た。そして歩き出した。


「アブド…?」


ハッチが閉まりかけた時、誰かに呼ばれた気がして振り返った。そこには…炎に包まれたティナがいた。目が…合った…。

そしてハッチが閉まった。


『任務完了。総員撤退』

やがてシュリンターを乗せた船は、静かに星空の彼方へと消えた。

黒煙立ち上る屋上で、ティナはその船団を睨みつけていた。

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

「はぁ。どうやらここにも無いようだな。これで88個目だ。次行くぞ、デトルート」

「はい」

赤色矮星テハートから、デトルートは飛び立った。

第肆章 運命超動篇 完


この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。

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