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【完結】アカシックレコード  作者: 白黒羊
第肆章 運命超動篇

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EP21 自由の代償

「俺…行きたいです。宇宙に。…自由に、なりたい」

ヴィリーノさんは微笑んだ。

「そう。じゃあ、これに掴まって」

ヴィリーノさんがロープを差し出す。俺が掴むと、ヴィリーノさんそれを少し引いた。

すると、俺たちは上昇し始めた。

登り切ると、そこにはもう一人の仲間がいて一隻の宇宙船があった。

「こいつが最厳密監視対象?」

「ええ。私も驚いたわ」

ヴィリーノと黒いフードを被ったサングラスの男が少年のことを見る。

「ああ、紹介するわ。彼は同じシュリンターのメンバーのメコニットよ」

「よろしく」

メコニットさんが手を差し伸べてきた。

「どうも」

俺も真似をした。

「さて、挨拶も済んだことだし、そろそろ出発だ。もたもたしていると監視ドロイドの自己スキャンプログラムが実行されてハッキングがバレる」

「おいで少年。とっとと脱出するわよ」

「はい」

宇宙船のハッチが開き3人は中に乗り込んだ。

「あなたはここに座って」

俺は指示された椅子に座った。

俺の前にある二つの椅子に二人は座った。

「エンジンスタート」

メコニットさんはそう言った。

宇宙船が動き出す。

「シートベルトを忘れないでね」

俺は左肩のそばにあった突起を腰近くの凹部分に差し込んだ。

前を向くと、そこには宇宙が広がっていた。

「すげぇ…。あれは何ですか」

俺は宇宙に散りばめられた、光る物体に指を差した。

「あれは星よ。あの星一つ一つが宇宙を構成しているの。あなたのいたセメラムズ監獄もセメラムズ星という星の中にあるのよ」

「今時宇宙を見たことない奴もいるんだな」

「中々いないけどね。そういえば少年、まだあなたの名前を聞いていなかったわね」

「ありませんよ。そんな物は俺に」

「え、名前もないの?」

「はい」

「じゃあ作ってあげるわ」

「え?」

「無いなら作るのは当然でしょ?いくら宇宙が広いって言ったって、名前の無い子なんていないわよ」

「そ、そうですか」

「そうね…。せっかく自由になったんだからアブドなんてどう?」

「アブド?」

「そう。アブド…んー、アブド・デ・へルート」

「分かりました。じゃあ、改めてよろしくお願いします」

「よろしくなアブド」

「はい!メニコットさん!」

「さてと、とりあえずは身だしなみを揃えましょ。メコニット、近くのウルプスは?」

「ウルプス?」

「ええ。広い宇宙を統括する為に王は星をいくつかの種類に分けた。その中で商業分野を担当するのがウルプス。大抵の場合はそこに行けば何でも揃うわ」

「惑星マディーナだな」

「分かった。じゃあ航路をマディーナにセット。計算は?」

「今やってる。…よし、入力完了」

「オーバードライブエンジン起動。シールド展開」

メニコットとヴィリーノがオーバードライブの準備に取り掛かる。

オーバードライブ。広い宇宙を移動する為に開発された移動手段。

宇宙空間中に存在する暗黒物質メタスタードを供給することでオーバーワールドと呼ばれる亜空間を切り開き、オーバーワールドを通過することでリアルワールドでの大幅な経路削減を行うことが出来る。

しかし目的地までの正確な距離から、必要なメタスタード量を計算しなければ、少しのミスでも遠く離れた座標に着いてしまうのである。

目の前の星々が、青色に染まる。

「準備完了だ」

「了解。オーバードライブスタート!」

ヴィリーノさんがレバーを押すと、段々と星が伸びていき、ついには辺りは真っ暗になった。

「よし、これでもう追っ手も来ないだろう」

「そうね。じゃあ私、報告してくるわ」

「任せた」

ヴィリーノはコックピットを後にした。


ヴィリーノがモニターのスイッチをいれる。

「こちらヴィリーノ。無事、最厳密監視対象を保護。惑星マディーナにて装備を整えます」

『了解。彼について何か分かったか?』

「どうやら記憶を無くしているようでして、名前も覚えていない状態でした」

『そうか。それは興味深い』

「それと、彼はまだ子供です」

『子供だと?』

「はい」

『それは驚いた。なにせ最厳密監視対象と呼ばれる程の者だからな、どんな極悪人かと思えば、子供とは』

「同感です」

『よし、とりあえずは了解した。こちらからの指示を待て』

「了解。通信終了」

――――――――――――――――――――

「ジャンプ終了5秒前。4、3、2、今だ」

ヴィリーノさんがレバーを手前に引く。

すると前方が明るく光って星々が姿を現した。

「シールド解除。エンジン切り替え完了」

「見ろ、あれが惑星マディーナだ」

メニコットさんが指をさす。そこには大きな青い星があった。


「ウルプスには大抵、でかい駐車場がある。なにせ星系中の人々が集まるわけだからな」

メニコットさんがハッチを降りながら教えてくれる。

「へぇ」

「さてと、早く行くわよ」

俺達は歩き出す。

「何を買うんですか?」

「アブドは何も持ってないでしょ?とりあえず何着かの服と鞄とかよ。後は3人でご飯を食べましょ。あ、あれがゲートよ。あそこから入るの」

俺達はゲートの前の列に並んだ。

「ここでは危険物を持っていないか検査を受けるんだ」

「検査?」

「ああ。だがゲートをくぐるだけだから簡単さ。何かヤバい物でも持っていない限り安心していい」

なるほど。なら安心だ。俺は白のシャツと半ズボンしか着ていないんだから。

三人は無事にゲートを抜け、ウルプスの中へと入っていった。

「うわぁ」

ウルプスの中は凄かった。一直線の通路の脇に店が立ち並ぶ。通路には屋根があるがそこから電灯が吊るされて光輝いている。まるで外のように明るい。

様々な容姿の子連れやカップル、老夫婦までもが笑顔で歩いている。

「これが自由か…そう思っただろアブド?」

「え?」

不意にメニコットさんが口を開いた。

「残念だがそうでは無い。ここにいるのは、王に洗脳され、平和ボケした人間だけ。よく考えるんだ。ここにある商品の全てに、原料となる物が存在する。分かるな?」

「はい」

「その原料を作るのは誰だ?ここの人間か?いや違う。さらに階級の低い、低級階級者達だ。彼らは安い賃金で働かせられている」

「それこそ王がなんとかしないんですか?」

「王は彼らと取り決めをした。低い身分の代わりに安定した仕事を与えると。だが仕事を与えると言っただけであり、報酬の額は雇用主が決めることになっている。つまりそこには不平等が生まれるわけだ」

「不平等…」

「そうだ。これは許されることではない。だから俺は、シュリンターに入ったんだ」

「シュリンターにはメニコットのような低級階級者出身の人も多くいるの。さて着いたわよ」

ヴィリーノさんが立ち止まった。

「ここは低級階級者向けの安い雑貨を販売している店、マルーシャ。この会社を経営してるのが、シュリンターの支援団体でもあるタルタニッド財団。安心して、逆に危険な仕事でも耐えれるよう丈夫に出来ている品ばかりだから」

そして俺達は店の中に入った。

店内は薄暗く少し不気味で、でも不思議と嫌な感じはしなかった。客も俺達以外いなかった。

「アブド、あったわ」

服を見ているとヴィリーノさんに呼ばれた。

「これがシュリンターの制服よ」

アブドは黒いパーカーを渡された。

「後は特に指定はないから好きなものを選びなさい」

「分かりました」

俺はグレーのズボンと適当なシャツと下着を何着かと紺色のスニーカーと鞄はリュックサックを選んだ。

「今回は入隊祝いで奢りよ」

「ありがとうございます」

俺は買った服を着て店を出た。

「さてと、ご飯にしましょうか」

三人はウルプス内のグルメシティと呼ばれる飲食店街に行った。

そこはいい匂いで充満していた。ふと、俺の腹が鳴った。

「アブドは好きな食べ物とかある?その店に連れて行ってあげるわ」

「俺…今までスープしか食べたことないです」

「ええ!?じゃあ俺が最高に美味い飯を教えてやる。コクレアだ。コクレアっつうのはな、言わばデカい貝だ。…そうか、貝も分からないか」

「あんたが食べたいだけでしょ」

「あ、バレた?」


「お待たせしました。コクレアでございます」

三人の前に皿が置かれる。

「このスプーンって器具で貝の中身をほじくり出して食べるんだ」

「なるほど」

俺はメニコットさんの言う通りに中身をほじくり出し、コクレアを口に入れた。

「…美味しい」

「だろ!!」

「良かったわね、アブド」

「はい。それじゃあ改めて、いただきます」

――――――――――――――――――――

「本部からの連絡だわ。みんなモニターの前に集まって」

船に戻ってすぐに、ヴィリーノさんに呼ばれた。

そこには32インチ程のモニターがあり、その下に操作するパネルがあった。ヴィリーノがパネルの赤く点滅しているボタンを押すと、モニターに人の姿が映った。

『全員揃ったようだな』

「「はっ」」

俺はメニコットさんに後頭部を掴まれて無理矢理頭を下げさせられた。

『顔を上げたまえ。それではこれより次の任務を通達する。実行者はアブド・デ・ヘルート、君だ』

俺は目を見開いたまま答えた。

「は、はい!」

『ヴィリーノとメニコットは下がっておれ。これは極秘の任務だ』

「「承知致しました」」

そう言ってヴィリーノさんとメニコットさんは部屋から出て行った。

『さてアブド君。君はガルディオという組織を知ってはいるかね?』

「いえ…その、すいません」

『何、気にすることではない。君のことは聞かせてもらった。知らないのも無理はない。ガルディオとは、王を護衛する直属の兵士の組織だ。そしてガルディオが新兵の募集をかけており、3日後に入団試験を控えている。君にこれに参加し、訓練兵としてガルディオ内に潜入してもらいたい』

「潜入ですか」

『そうだ』

「了解しました」

『そして本題はここからだ』

「え?」

『ガルディオに潜入後、君に調査してもらいたい物がある。それが、アカシックレコードだ』

「アカシック、レコード…?」

なんなんだ、それ。

『ああ。アカシックレコードとは、全知全能の書と言われている物だ。だが、この他の情報が何も無い。どこにあるのか、誰が創ったのか。何も分からない。しかし我々はある結論に辿り着いた。王ならば、この宇宙の全てを統べる王ならば、必ずや何か知っているのではないのかと。そこで君の出番という訳だ。我々の出来る唯一の王への接近方法が、ガルディオへの潜入だ。王の側近は貴族ばかりだからな。そしてガルディオの募集にも年齢制限があり、参加できるのは君しかいない。だから君なのだ。分かったな?』

「はい」

これは、やるしかないようだな。

「一つ教えて下さい。そのアカシックレコードを、一体何の為に調査するのか」

『決まっているだろう。自由の為だ』

「え?」

『さっきも言ったが、アカシックレコードは全知全能の書だ。この世の全てがそこにはある。もちろん、強大なる王の力の秘密、そしてそれを打倒する手段もな』

「…まさか」

『君は察しがいいな。その通りだ。我々シュリンターは、自由の為に王を打倒する。全ては君次第だ。頼んだぞ、アブド』

――――――――――――――――――――

「これより、ガルディオ入団試験を始める」

長官と名乗った男が声を荒げる。

俺はガルディオの入団試験を受ける為に、この宇宙の中心部に位置するケントル星系の星の一つである惑星ティフォスに来ていた。

「試験の内容だが、まずこちら側で4人1組の班を作らせてもらった。その4人で協力し合い、武装した戦闘ロボット一体を制御不能にしてもらいたい。やり方は簡単だ。こちらで用意した銃で的に玉を当てるのみ。これが完了した班は班員全員の入団を認める。では班を通達する。一班…」


「ティフォスについて調べたから、まぁアブドが何をしようとしているのかは大体察しはついているんだけど、そういうとこ結構厳しいから、だからその、頑張ってね」

船を降りる際に、ヴィリーノさんに言われた。

「送迎が俺達の任務だ。いつなのかは司令が下るまでは分からないが、必ず迎えに行く。頑張れよ」

「ヴィリーノさん、メニコットさん、ありがとう。行ってきます」

俺はそう言ってハッチを降りた。

二人を乗せた船は、空の彼方に消えた。


「十八班、アブド・デ・ヘルート。リデル・セペリオ。シオン・エンテラル。ティナ・イ・オディオ」

俺は十八班のようだ。

「アブド・デ・ヘルート。いたら返事をしてくれぇ」

俺の名前が呼ばれた。

「おーい、ここだー」

俺は手を振りながら声の方向を目で追った。そこには男一人と女二人とが歩いていた。

男と目が合った。俺はそばに駆け寄る。

「君が、アブド・デ・ヘルート?」

男に聞かれる。

「そうだ」

「そうか。俺はリデル・セペリオ。こちらがシオン・エンテラルさんで、こちらがティナ・イ・オディオさんだ。よろしく頼むぞ」

「ああ。よろしくな」

リデルは背が高かった。メニコットさんくらいあった。シオンはクリーム色の髪が二つに分かれている女。ティナの髪は漆黒だった。二人とも髪は肩辺りまで伸びていた。

「…以上だ」

長官の声がまた響いた。

「それでは各班持ち場についてもらう。誘導員の指示に従え」

四人は宇宙船の格納庫のような、四方を壁で囲まれた場所に連れて行かされた。

「これがあなた達の武器です」

誘導員はそう言って二本の剣と二丁の銃を置いてある台を指さした。

「先程の説明にもありました通り、この銃を使ってあの自律型戦闘ロボットの的を射て下さい。制限時間はありません。あなた達がロボットの的に弾を当てて機能停止にするか、あなた達が全員死ぬまで、この試験は終わりません。尚、承知の上だと思いますが、試験に参加している時点で我々の指針を承諾しているという事ですので、生死の責任は一切承りません。それでは、1分後に起動させます。皆様の健闘を祈っております」

誘導員は試験会場の建物から出て行った。

「なぁ、死ぬってマジか?」

俺は思わず三人に聞いた。

「安心しろ。恐らくただの脅しだ」

と言うのはリデル。

「私の兄もこの試験を受けましたが、余裕で通過したとの事でしたよ」

と言うのはシオン。

「え、シオンのお兄さんって、ガルディオの騎士なの?」

と聞くのはティナ。

「いえ、途中で辛くなってリタイアというか、追放というか…」

「そ、そっか…」

「まぁでも、俺達も大丈夫だろう。それより、武器はどうする?」

「私…遠距離がいいです」

「出来れば私も…」

「分かった。じゃあアブドは剣でいいか?」

「おう」

「なら、ほらよ」

リデルの投げた剣の柄を掴む。

「投げるなよ」

「悪い悪い」

『只今よりガルディオ入団試験を始めます』

アナウンスの声とともに、5メートル先の床下から人型のロボットが姿を現した。

「チーム十八班、いくぞッ」

リデルが活を入れる。

「「「おう!」」」

この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。

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