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【完結】アカシックレコード  作者: 白黒羊
第肆章 運命超動篇

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33/83

EP20 開放

その日、この宇宙の長たる者たちが集う、13人評議会が臨時で開かれた。

「本日皆様にお集まり頂いたのは他でもない」

司会者が口を開いた。

「既にご存知の方もおられるかと思いますが、天の川銀河の消滅の件でございます」

「…消滅?」

「はい。調査チームの報告によりますと、そこには通常の銀河の終わりに見られる残留物質が、全くもって検出されませんでした。ある区切り目を境として、その先には、()()()()()()()のです」

「専門家は何と?」

「前代未聞の出来事で、学界も騒然としていると」

「宇宙のバランスは銀河間の需要と供給のバランスによって成り立っておる。今、銀河の終わりに放出される物質、エスタルダストが出ていないという事は、即ち新たな銀河が生まれなくなるという事じゃ。直ちに修復せねば、宇宙全体のバランスが崩れ、この宇宙は―――」

「今こそあなたのお力を行使する時です、王」

「ああ、分かっておる」

「"形だけの王"などと揶揄される事もなくなりますな」

「よせ、王に失礼だぞ」

「それに民衆への漏洩はあってはならぬ事だ。この騒動に便乗して革命でも起きてみろ。痛い目を見るのは我々だ」

「本当にそうですかな?」

そう聞かれ、男はニヤリと笑う。

「闇の復活…」

誰かがぽつりと呟いた。だがその一言の効果は絶大だった。

一瞬にして、その場は静まり返った。

「そんなまさか。130億年もの間破られることの無かった結界が、どうして今にもなって破られると言うんだ!?」

「130億年経ったからですよ。奴は何処かで静かに力を蓄え、そして遂に―――」

またしても静寂が辺りを包む。

「ま、まぁ、王のお力があれば、修復も出来ますでしょう?」

一人が、立ち上がって言う。

「……」

王は俯いたままだった。

「え…?」

「私はそろそろ失礼させて頂こうかな」

「では、私も」

そうして会議は閉会した。

最後に年老いた王だけが残った。

「済まない…アロン、済まない…」

そう呟いてよぼよぼと立ち上がり、長い廊下の向こうへと歩いて行った。

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

「うっ、うっ、うっ…。うぅぅ…。」

暗い図書館の隅で、少年は泣いていた。

「どうして泣いているんだい、少年?」

少年は驚いて顔を上げた。

「い、今のは誰?どこにいるの?」

少年の足で何かが蠢いている。

「ここさ」

少年が突っ伏していた机の向かいに、鎌首をもたげた蛇がいた。

「へ、ヘビ!?」

「そう、俺は蛇さ」

「な、なんで、ひ、人の言葉が分かるんだ?」

「俺が天才だからだよ」

「そ、そう…」

「あ、その反応は信じてないな?」

少年は両手で目を擦った。

「…僕、疲れてんのかな」

「いや、君は正常だよ。そんなことより、俺と友達にならないか、少年?」

「僕と友達に?」

「ああ。君はいつも一人でここにいるだろう?そしてそれには何か訳があるんだろう?」

「うん…。僕の父上と母上は、いつも完璧な兄上のことばっかりで、ダメダメで気の弱い僕のことなんかどうでもいいんだ。だから…僕は…!」

「そうかそうか。可哀想に。では、俺が君の兄すらも凌駕するような力を授けよう」

少年は目を輝かせながら蛇を見た。

「…いいの?」

「もちろん」

「でも、どうして僕に?」

「君が一人だからだ。二人でいつか家族を見返そうじゃないか」

「そうすれば、皆は僕のことも褒めてくれるよね?」

「当然さ」

「…僕、やるよ」

――――――――――――――――――――

――――――――――――――――――――

ジリジリジリジリジリジリジリジリ


起床時間を知らせるサイレンが、室内に響く。

俺は目を覚ました。最初に見えるのは真っ白の天井。体を起こすと真っ白の壁と真っ白の床が目に入る。

ああ、またか。俺はそう思った。

退屈で無意味な一日が、今日も始まる。

壁が開き、食事をのせたトレイが出てくる。食事と言っても、味のないスープ一杯だけ。俺は皿を掴んでそれを一口で飲み干し、トレイに戻す。

するとトレイは引っ込んで、壁の小さな隙間が閉じる。前にこの隙間から逃げようと考えたこともあったが、手首が潰されかけた時以来辞めた。

その後は所定の位置にただひたすら座り続ける。寝てはいけない。瞬きは十秒に一回。

それを次の食事まで続ける。二回目の食事が終わったら、決められた場所で横になり眠る。

それが俺の一日。俺はそれを死ぬまで繰り返す。

俺の最初の記憶はそれを言われたところからだ。それからずっと、この日々を繰り返している。

初めの頃は、苦痛だった。何故俺はこんな事をしなくてはいけないのか。ずっと自問していた。気が狂って、頭を床に打ち付けたりもした。

だがある時、俺は正気になった。それからはもう、何も考えないようになった。気がついたら、新しい一日が始まっていた。

……それは明日も同じだと思っていた。


ドォォォォォォォオオオオンンンッッ


今まで聞いたことのない大きさの音が響き、俺は目を覚ました。何も見えない。

部屋には煙が充満していた。

目を凝らすと、床に大きな破片が散乱していた。

「ゴホッ、ゴホッ」

俺は手で辺りを扇いだ。段々と視界が開けてきた。

すると、部屋に一筋の光とともに、ロープを伝って一人の人間が俺の目の前に現れた。

「やあ、起こしてしまって悪いね」

「あんた…誰だ?」

俺は尋ねた。

「私はヴィリーノ。ヴィリーノ・デ・クレダント。あなたを救いに来たのよ」

「俺を、救いに?」

「ええ。それとも、あなたはここに居たい?」

「俺は、ここに居なきゃ、いけないんだ」

「あなたはどうしたいの?」

「俺は…分からない」

「自由になりたくはないの?」

「…自由?」

「そうよ。王が平和の代償として民衆から奪ったもの、それが自由。そしてその自由を取り返す為に戦うのが、私達シュリンター」

「…シュリンター」

「ええ。そしてここは宇宙で最も自由の無い場所、死刑すら許されない極悪人が余生を過ごす場所、セメラムズ監獄。これはシュリンターの存在を宇宙全域に拡めるチャンスなの。本音を言えばね」

ヴィリーノさんはそう言って笑った。

「極悪人なら、自由が無いのは当然なんじゃないですか?」

「まぁ、そう言うと思ったわ。だけど、あなたは違うの。私達はこの計画を立てる段階であなたのことについて色々調べさせて貰ったわ。でもね、何も出てこなかったの。罪を犯したっていう経歴もね」

「じゃあ俺は…」

「そう、この宇宙で最も自由のない可哀想な子」

俺はヴィリーノさんの方向から目が離れなかった。

「それで、どうするの?」

「あれは…何ですか?」

ヴィリーノの背後には、満天の星空が広がっていた。

「ああ。あれは宇宙(そら)よ」

「…宇宙」

「そう」

「宇宙には、何があるんですか?」

「そうね…自由かな」

「宇宙に…自由が…」

俺はもう一度輝く宇宙を見た。

「…俺、行きたいです。宇宙に。…自由に、なりたい」

二人の上空で、星が一つ流れた。

この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。

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