表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】アカシックレコード  作者: 白黒羊
第参章 怒濤狂瀾篇

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

28/83

EP18 覚悟の先に

「ガァァァァァァッッ!」

タケルがドラゴイードル目掛け殴りかかる。ドラゴイードルは身を翻し避け、背中に蹴りを入れる。

「グァッ!」

タケルはドラゴイードルに向き直り、炎を浴びせる。

しかしドラゴイードルは、空中に水の壁を作り出し、炎を消す。

「何っ!?」

「あれ、前にも言ったよね?僕は水を司るドラゴイードル。もちろん自在に水を操ることができるさ。君がどんなに火を放とうと、全て僕が消してやる。分かるだろ?君は僕に勝てない」

「そんなの、やってみなくちゃわかんねーだろ!」

そう吐き捨て、タケルはもう一度接近する。

そのまま左フックを打ち込むも止められ、右手でのジャブも受け止められた。

「ほら、言ったろ?僕の方が強いんだ」

ドラゴイードルは言い終わる前に、タケルは腰をひねって足をクロスさせたまま奴の腰を挟み、腰を戻す反動で彼を頭から地面に突き落とす。

「オラァァァァッッ」

追い討ちをかけるように落ちていくドラゴイードルに向かって炎を吐く。

「ハァ、ハァ、どうだ。思い知ったか」

空中で静止していたタケルの体が、急に雑巾の様に捻じ曲げられる。

「ガァ、アァァア…」


バキバキバキバキ


骨の折れる音が聞こえる。

「な、にがッッ…」

タケルは手足を振って力を加えている何かを払い除けようとする。

だが、その何かを払うことはできず、さらにタケルは締め付けられて動けなくなる。

苦しむタケルの前に、ドラゴイードルが姿を現す。

「僕はドラゴイードル。水を司ると言っただろ?だからこのように空気中の水分を操ることもできるのさ」

「クッ、カッッ、アァァアア…」

「ふはははは、愉快だ。最初からこうしても良かったんだが、それじゃあつまらないだろう?まもなく主様もお越しになることだし、さっさと決着をつけなきゃいけないんでね。悪く思うなよ、タケル」

ドラゴイードルはタケルの額を弾く。

タケルが吹き飛ぶ。

タケルは炎の燃え盛る龍牙城遺跡の跡地に叩きつけられる。


お母…さん。サイ…トウ…さん。俺、もう…。

俺は右手に力を入れる。すると、その手は土を掴んだ。

…!動く。炎で、蒸発したのか。これが、蒸発か。…よし。

俺は丹田に力を入れる。体中の筋肉が引き締まり、だんだんと体が熱くなっていく。

「ふぅ、ふぅ、ふぅ」

それに伴って、呼吸が浅くなっていく。

頭がクラクラする。視界がぼやけてくる。

すると突然、ドラゴイードルが目に入った。

こんな所で、くたばって、たまるか!奴は、絶対に、許さない!俺が、殺すんだァァ!

「アアアァァァァァァアアッッッッ!!!」

足に力を入れる。そして、立ち上がる。

まだ奴は見えていた。それだけで十分だ。

俺は再び飛び立つ。

――――――――――――――――――――

ドーーーーーーーーーーーーーーン


「何の音だ?」

俺は辺りを見回す。

「あれは…」

背後で、遠くの山が火を吹いている。

「噴火というやつか」

「アアアアァァァァァアアアッッ!」


バキッ


俺は一瞬、何が起きたのか分からなかった。完全に不意を突かれた。だって、俺はしっかり押さえ付けたはずだ。抜け出せる訳がない。

…まさか、奴の高温で、結合が分離したのか?そんな…。そんな馬鹿なことが…。

俺は頬にめり込む奴の右拳をどける為に、奴の腕を掴む。

「アアァァッッツツ!」

が、俺はあまりの熱さにすぐさま手を離す。

「ダァァァアアッ!!」

すると、今度は奴が左拳を腹にめり込ませて来た。

「ギィィヤヤァァァッッ」

「吹き飛べッッ」

奴の翼が空気を押す。直後、曲がっていた左腕が勢い良く伸びる。

「はッ」


ビュュュューーー…ダァンッ!


「ガッアアァ…」

何…だ。奴は、まだあんな力があったのか。ここは…ああ、さっき見た山か。山…?

ドゴイードルは山に押し付けられた。

「あぁぁ…」

上を見上げると、赤くドロドロした溶岩が、迫って来た。

「イヤだぁぁ…」

さっきの衝撃で、体が動かない。あまりの速さに、気体になることも出来なかった。それは今も…。


ドラゴイードルは溶岩に飲み込まれた。

――――――――――――――――――――

それは、何の前触れもなく起こった。

「うわっ」

僕は立っていられなくなり、すぐさまその場にしゃがみ込む。

「地震だ。これは、今までに無い。もの凄い大きさだ」


バサバサバサ


木が激しく揺れる。


バタバタバタ


「ガァ、ガァ、ガァ」

鳥が飛び交う。


ドーーーーーーーーーーーーーーン


「今度は、何だ…?」

大きな地震。確かここは火山が近くにたくさん…まさか!


ドーーーーーーーーーーーーーーン


ドーーーーーーーーーーーーーーン


ドーーーーーーーーーーーーーーン


僕は急いで揺れの小さい太い木に登る。

「これは…」

辺り一帯の山全てから、火が吹き上がっている。

「これが…この世の、終わりなのか?」

――――――――――――――――――――

油断…していた。これも、奴の力のせいなのか…?なら、俺も、もっと、強い攻撃を、しなくちゃなァ。だって、こんな所で、くたばるなんて、できねェからなァ。


ゴポ


溶岩の中から手が伸びる。


ゴポ、ゴポ、ゴポ


ドラゴイードルが起き上がり、右手を高々と突き上げる。

すると空に、真っ黒な雲が広がっていく。

やがてそこから、猛烈な雨が降り注ぐ。

――――――――――――――――――――

「ハァ、ハァ、ハァ、ハァ、ハァ」

俺は呼吸を整えて、次の反撃に備える。

「ん?」

俺は辺りが暗くなっていくのに気づく。

不審に思って空を見上げると、真っ黒な雲に一面を覆われていた。

そして、いきなり雨が降り出す。

「水…まさか…」


ゴシャッ


「ガハッアアッッ…!」

「さっきはよくもやってくれたなぁ」

コイツ、さっきより速くなっていやがる!


ダンダンダンダンダン


奴の連続の打撃をもろに喰らう。


ガシッ


ようやく奴の腕を掴む。

「!?」

だが、奴は一瞬にして消え、俺の背後に回る。気づいた時にはもう遅かった。

俺は翼の付け根を掴まれて、捥がれる。


ブチブチブチッ


「グアアァァァッ!」

今度は両腕を掴まれ、そのままドラゴイードルが移動する。

そして森を越え、山を越える。さらにこいつは進む。

「ここは…」

そこには海があった。前に、ボルケーノと来た海が。

「何か想い入れがあるのか?ならちょうどいい。思い出に浸りながら沈めッ!」

俺は投げ飛ばされる。

翼も再生せず、ただ俺は落ちるだけであった。


バシャン


「…ッッ!……ッッッ!!」

俺は必死に水を掻き、上へ上へとあがろうとする。

だが、水は重く、どんなにもがいても、どんどん光は遠ざかっていく。

さらに息を止めるのも、もう限界であった。

「…ゴポッ…」

――――――――――――――――――――

また、タケルは行ってしまった。

結局彼は戦いに身を投じている。それがきっとタケルの運命。

そしてタケルの帰りを待ち続けるのが、私の運命。


シューバキバキバキ…ガタン!


周囲の木をへし折りながら、背後で何かが着陸する。いや、これは…宇宙船。一体誰が?


プシューガシャガシャシュー


ハッチが開く。人が降りてくる。あの紋章は、王族の物…。

「まさかこんな所で会うとはな、ドラゴメイドよ」

「あんた、王族の人間ね。誰なのよ。何しにここに来たの」

「私はプエル2世の命によりドラゴイードルと優秀な科学者の男を回収に来た、メディオクリスだ」

「残念だけど、ドラゴイードルはドラゴプロクスに倒されるわ。そして次はあんたらよ」

「まさか。ドラゴイードルが負けるはずがない。奴はドラゴプロクスを殺す為に創られたのだからな」

「あんたらはドラゴプロクスを甘く見ている」

「ならば奴の心を覗いてみればいいじゃないか。ドラゴメイドの特技だろう?」

「それは…」

「まさか出来ないのか?」

実はその通りなのである。タケルが元地球防衛軍の仲間を連れ戻しに行った辺りから、タケルの心を読むことが出来なくなっている。

「そんなことは…」

「まぁいい。1%でも可能性があるのならそれを潰す用意をするのが賢明だ」

メディオクリスが私に銃口を向ける。


バン


ビオロは倒れた。

――――――――――――――――――――

俺は…やっぱりダメだった。結局、何も出来なかった。そしてもう…。

『ソンナコトハナイ』

…え?この声は、ボルケーノ?

『ソウダ。俺ダ』

そっか。ボルケーノ、俺は死んだのか?

『イヤ、死ンデナイ。今ハ、俺トタケルノ心ガ繋ガッテイルダケダ。心配ナイ』

俺を、叱りに来たの?

『ハハハ、馬鹿言エ。ソンナ訳ナイダロウ。タケル、オ前ハヨク頑張ッテルヨ。ダガナ、後少シノ辛抱ダ。オ前ナラ出来ル』

無理だよ。俺は今海の中で溺れているんだよ?それに水が重くて上がれないんだ。

『…前ニ、二人デ交ワシタ約束ヲ覚エテイルカ?"全テ守ロウ"ッテ』

うん。覚えてる。

『ナラ、マダ諦メチャ駄目ダロ?コノママデハ、ドラゴイードルニ、創造主共ニ全テ壊サレル。オ前ハソレデモ良イノカ?』

良くない。良くないよ。分かってるよそんなことは。俺が一人で全部守んなきゃいけないんだって。でもさ、俺はボルケーノが思うほど、強くはないんだよ。

『何カヲ守ルノニ、一番大切ナノハ、ソレヲ守リタイトイウ想イダ。強ク想エバ、自然ニ力ハ湧イテクル』

そんなこと言ったって、もう力は残ってないんだ。俺はこのまま死ぬよ。そうすれば、全て解決するだろ?

『地球ハドウスルンダ』

知らないよ!もう疲れたんだ俺は。何もしたくない。ドラゴイードルは俺を倒すのが目的なんだろ?創造主は地球を滅ぼすのが目的なんだろ?じゃあ、全て無くなれば、解決するんだ。俺がこのまま何もしないで死ねば、終わるんだよ。何もかもが。

『アア、ソウダロウナ。当然ビオロモ死ヌダロウナ』

くっ…。

『ジンモ無念ダロウナ。折角オ前ニ良イアドバイスヲシテイタノニ、結局何ノ役ニモ立タナカッタンダカラナ』

…ああそうだよ!

『お前は大切な人を失う辛さを知っているはずだ!なのにお前は、少女を置いて逃げた!いいのか!?お前はそれで!!』

ふと、ジンの言葉を思い出す。

俺はその場に縮まり込む。

うう、ううぅ…。どうすれば良いんだよ。俺は…。

『立テ。ソシテ、守レ。全テヲ』

どう…やって?

『分カッテイルハズダ』

……。

『仮ニ全テガ無クナッタトシテ、オ前ハ死ネルト思ウカ?ドラゴプロクスタル者ガ、ソウ簡単ニ死ネルト思ウカ?…イヤ、無理ダナ。オ前ハ全テヲ失ッテモ、生キ続ケルンダ。タッタ一人デ』

『人は全てを失うとどうなると思う?』

『…俺なら、おかしくなりそうだな』

『そうだろ。その通りだよ』

まただ。また、ジンの言葉。

『後悔シテモ、知ラナイゾ』

『だからこれは忠告だ。全てを失った罪人からの』

ボルケーノとジンの声が、頭に響く。

『ダガドウスルカハ、タケル、自分自身デ決メルンダ』

『まぁ、後はお前がさっき言ってた通り、自分で決めろ』

『傷ツカズニ全テヲ失ウカ、傷ツイテデモ全テヲ守リ抜クカ、ダ』

俺は…俺は…俺は――。

――――――――――――――――――――

陽が、落ちていく。

空が、赤みがかっていく。


バキバキバキバキ、バキバキバキバキ…!


何の音だ…!?確か海の方から…。

「はッ…」

海中から、巨大な根が何本も生えてきていた。

「まさか…あれは…」

根の先が八方に広がる。

そして、その中心に、勢い良くもう一本の根が突き出てくる。

折れた根の上には、奴が…ドラゴプロクスが立っていた…。

「グアァァオオオオッッ!!」

奴が叫ぶと、巨木でできた四匹の龍が、俺の四肢に噛み付いた。

「ガァァアア…!」

俺は一本の根に目をやる。するとそこには、数多のセフィロトの紋章が刻まれていた。

これが…セフィロトの樹…!まさか、伝説の存在ではなかったのか…!

とにかく、早くこの窮地から脱しなければ。

だが、俺は何も出来なかった。水を操っても、この樹はびくともしない。

「ギィィヤャアアァァァァオオオオオッッッ!!!」

奴がもう一度叫ぶ。


ブチブチブチッッ!


「アアァァァ…」

俺の四肢が捥がれる。そして、落下する。


ドスッ


「ガアッ!」


バキバキバキバキ


地面の至る所から龍が顔を出す。

全ての龍が、俺を見つめて静止している。

「やめ…ろ…やめて…くれ…」

気づくと俺のはるか頭上には、奴が、ドラゴプロクスが、俺を見下ろしていた。

そして奴が、口を開く。

「いやだ…いやだ…」

「グァァァァァオオオオッッ!!」

ドラゴプロクスの一声で、龍が一斉に俺を喰らい尽くそうと動き出す。

「ァァァァァァ…」

俺は目を閉じる。


ドスッ


何かの落下する音…?俺は、まだ生きているのか?

恐る恐る目を開けると、龍は俺に覆い被さったまま、ギリギリで動かなくなっていた。


プシューシュー、ガタンッ


頭の先から音と風と振動とが伝わる。

その風は、灰と化していた龍を吹き飛ばした。

すると、俺の足の先に、ドラゴプロクスが倒れているのが見えた。

どうやら、俺にトドメを刺す直前に力尽きたのだろう。


プシュ、プシューガチャガチャシュー


ハッチの開く音。誰かが近づいてくる。

「無様だな、ドラゴイードル」

「…!」

こいつは、メディオクリス。俺を創った張本人の内の一人。

「何をしている。早くドラゴプロクスを喰らわないのか?お前には千載一遇のチャンスではないか」

こいつは、何を言ってやがる。千載一遇だと?ふざけるな。俺は、そんなに弱くない…!

「何とか言ったらどうなんだ」

「…ハァ、オレ…ハァ、弱クナンカ…」

「ならばそれを証明しろよ。今ここで。いいか、自惚れるなよ。データはあるんだ。だからお前の代わりはいくらでも創れる。それに、強くすることも可能なんだ。お前は所詮、使い捨ての実験体なんだよ」

くっそ、俺は…!

「やっぱりな。お前はもういい」

メディオクリスが俺に銃口を向ける。


ガサッ


奴が引き金を寸前に、ドラゴプロクスが立ち上がった。

――――――――――――――――――――

くそ、もう、動けない。

…でも、やらなくちゃ、いけないんだ!

俺は目を開く。俺はうつ伏せに寝ていた。そして、正面でドラゴイードルが、何者かに銃口を向けられていた。

いや、あの顔立ちと身長、見覚えがある。どこだ…。そうだ、艦隊の中。

まさかあいつが、創造主?ビオロが前言っていた…確か名前は、モナードヴェン。

じゃあ、あれは一体どういう状況なんだ?

ドラゴイードルとモナードヴェンは敵同士なのか?まぁ、いい。モナードヴェンはビオロの敵であって、創造主の正体。

ここで、俺が倒す。


ガサッ


俺は力を振り絞って立ち上がる。

「おお!起きたかドラゴプロクス!ドラゴイードルより遥かに優れているではないか。どうやら予想は外れたようだ」

モナードヴェンが何か言っているが、俺は奴に向かって歩き出そうとする。

「おっと、止まれ。動くな。彼女が大事ならなァ」

……ッ!

「ビオロッッ!」

宇宙船の中から、ビオロを連れたもう一人の男が出て来た。

「…タケル。ごめんなさい。私…」

「待ってろ!今助ける!」

右足を一歩踏み出す。


バタッ


だが、俺はそこで限界を迎えた。全身の力が一気に抜け、その場に倒れ込む。

「ク…ビオ、ロ…!」

俺のやっとのことで伸ばした右腕も、土を掴むことしか出来なかった。

「もう、やめちまえよドラゴプロクス。お前はよく頑張った。だから、ここで死ね」

「まだ…ビオロ…助け…」

「そうか、お前はこの女が大切なのだな。それは何故だ?この女が好きだからか?」

「す…き…?」

「ああ、そうだ。違うのか?この女を愛していないのか?」

「あい…して…る?」

いつだか、サイトウさんに言われた言葉。そうか、俺は…。

「ああ…愛して…いる…さ…」

「そうか、可哀想に」

「なん…だと?」

「この女は、お前のことなんぞ好きでもなんでもないのにな」

「え…?」

「やめて!タケル!こいつの言うことに耳を貸しちゃダメ!」

「この女は、ドラゴメイドっつう種族だ。この種の女は本能的にドラゴプロクスに好意を向ける。詳しいことはよく知らんが、まぁ、お前がこの女にされた行いは、この女の意思ではない。ただ本能に従った。それだけだ」

「違う!私はタケルが大好きで、愛してる!」

「それはどうかな。ドラゴプロクス、この女の言うことは全てデタラメかもしれないぞ?」

「…それ、でも…俺は、ビオロと一緒に…いたい!」

「それにこの女がお前を騙す理由がもう一つある。この女の生き別れた母親のことだ」

「…え?生き別れ?」

「ん?お前は聞いていないのか?…それもそうか。いいかドラゴメイド、お前の母親は生きている。生きて、ドラゴイードルを産み出す器として働いてもらっている」

「そんな…」

「すぐそこでくたばっているそいつも、お前の母親から産まれたんだよ」

「いやああああああああ!!」

「お前えらは姉弟みたいなもんだな!ははは、これは奇跡だ!面白い!そうだ、ビオロとか言ったか?お前も母親と同じように我々の実験に参加したらどうだ?簡単な事さ。子宮に移植した卵を育てて産むだけだ。たったこれだけの事でお前の命は保証され、晴れて母親と再開ができる!いい取引だと思うのだが?」

「嫌よ!私は、あんたらなんかに協力するくらいなら、ここで死ぬ!」

「そうか。せっかくのチャンスを無駄にするか。分かった。ならばあの世で後悔し続けるがいい!」

モナードヴェンがビオロを殴る。

「ガハッ…」

ビオロが倒れる。

「やめろ…!」

「おいおい、どうしたドラゴプロクス?早く助けないと死んじゃうぞ?」

動け!動けよ!今動かなきゃ、ビオロが…ビオロが!

「貸せ」

「はい」

モナードヴェンがもう一人の男から受け取った銃を、ビオロに向ける。

「タケル…」

ビオロも手を伸ばす。

「…!…やめっ…」

「もう、いいの。タケル、ありがとう」

「ビオ、ロ…ッッ!」

「最後に言い残すことは?」

「私は…本当に、タケルが…大好きよ」

立て!早く!立つんだよ!…クソ、クソ!どうして…!どうして俺の体は動かないんだ!

「ははは、最後まであざとい女だ」


バン、バン、バン


三発の銃弾が、ビオロの頭を吹き飛ばす。

「―――ッッ…!」

俺達の手が、触れ合うことはなかった。

「アアアアァァァアアアアアッッッ!!!!」

俺は…俺は…俺は…何も…出来なかった。視界がぼやける。目が熱い。

「無様だな、ドラゴプロクス」

……!!!この声は…。

俺は顔を上げる。

「やぁ、よくぞ生きていた!ミスターオーガスト」

「クロウリーッッッ!!!!」

「こうして叫ばれると、初めて話したあの日を思い出すな」

「お、前…なんで…」

「願いの為さ。その為なら、仲間だって殺した」

「…!まさか…」

「ああ、ドラゴイードルと協力して、人類の残党を、お前を信じなかった奴らを、殺した。全員」

「……」

「まぁ、仕方の無いことだ。そういう運命だったんだ。お前も、な」

「…ふざ…けんなよ…」

「私は、先にこの船に乗っているぞ?」

「ああ、最上級のもてなしを用意している」

「それはありがたい」

「待て…」

「なんか言ったか、タケル?」

「…殺してやるッッ!!俺がッ!お前をッッ!!!」

「今まさに殺されかけているお前に何が出来るんだ?じゃあな」

クロウリー・オーガストが船内に消える。

「お前も戻っていろ」

メディオクリスが傍の男に声をかける。

「了解です」

そして、銃口がタケルに向けられる。

「ようやくだ。遂にこの時が来た。今ここで、長年の恨みを晴らすことが出来る。さあ、待たせたなドラゴプロクス。すぐにあの女の元に送ってやる」

俺は、疲労と悲しみと怒りと後悔とで、もう体が、そして心が、限界だった。

ビオロの元へ…?それなら、いいや…。

タケルが目を閉じる。


バン、バン、バン


…痛みが無い。どうして?

俺は目を開ける。

「…なッ!?」

俺の目の前に、奴が、あいつが、立っていた。

「な…なんのつもりだ!ドラゴイードル!!私の邪魔をするな!!」

「うるさい…タケルを殺すのは…俺だ…!」

ドラゴイードルが、メディオクリスに飛びかかる。喉元を両手で掴んだまま体重をかけ、押し倒す。

そして顔面を、何度も何度も殴る。

「て…撤退!行け!撤退だ!」

傍にある宇宙船が離陸を開始する。

それでもドラゴイードルは、メディオクリスを殴り続ける。

彼の顔面は、もはや原型をとどめていなかった。

「アアアッッ!!」


バン、バン、バン、バン、バン


メディオクリスはドラゴイードルに向けて銃を乱射し、力尽きた。

死を確信したドラゴイードルも、手を止める。

そして立ち上がり、タケルに襲いかかろうとする。

だが、タケルを前にして倒れた。

「お前…何で…」

「言ったろ、お前を殺すのは…俺だ…いや、夢を、見たんだ…」

「え?」

「母さんが、出てきた。あの人は、いつも、どうか、娘を…ビオロを助けてって、俺に頼んでた。それを…思い出した…。でも、俺の、意識が、戻った頃には、もう…。だから、せめて、ビオロの、大切な人だけでも…って、ははは、何、考えてるん…だろうな。ごめん、なさい…。母さん。俺、助けられ、なかった…」

「あ…ありがとう、ドラゴイードル…」

「馬鹿言え…。助けたんじゃ、ない。お前を殺すのは…おれだから…だから、しぬなよ…」

「お前は…お前は…?」

「つかれたから、すこし…ねむる…」

それを最後に、ドラゴイードルは、何も言わなくなった。

「く…うぅ…うっ、ううぅ…」


陽が落ちた。

空には月も星もなく、ただ闇が広がっていた。

この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ