EPι 紛糾:デストロイヤー
アニムスは満足して、奴隷用の生命体を創ろうと、地に降り立った。
誰にも侵略される事のないよう、山の上に新たな楽園の場を設ける予定であった。
だがそこは既に、アニムスにとって地獄であった。
滅したはずのレムリアンが、まだ生きていたのである。
家を作り、共同で暮らしている。
近くには大きな立方体型の方舟が転がっていた。
レムリアンが、見たこともない立方体型の方舟を造れるはずがない。
アニムスはそう思った。
そして、裏でシチエンが絡んでいることを確信した。
――――――――――――――――――――
目を開けると、そこは真っ暗な場所だった。しかし遠くの方で、薄らと光が揺らめいているのが見える。
僕は立ち止まって、光に向かって走り出す。
光は近づくにつれ、どんどん鮮明に、眩しくなっていき、僕は思わずそれに手を伸ばした。
光に触れると、辺り一面に広がり、僕はこの空間ごと光に包まれた。
『目覚メロ』
僕の脳内に声が響いた。
「え?」
『目ヲ覚マスンダ、タケル』
「なんで僕の名前を知ってるんだ」
この声に聞き覚えはない。
「あんたは誰だ」
『俺ハ、コノ星ヲ守ル者ダ。今、侵略者ノ勝手ニヨリ、大洪水ガ起コサレ、生命ノ殆ドガ滅ビタ。オ前ハ、俺ノ代理トシテ、奴ラニ意見シニ行クノダ』
「この星を守る者って、まさかあなたが龍神様…?」
『アア、ソウダ』
龍神様。火の山の頂上に祀られている世界を守りし神。
そうか、僕は生贄にされたのか。
「一ついいですか、龍神様」
『ナンダ』
「意見しに行くって言ったって、僕はもう死んだんじゃないんですか?」
『ソンナコトハナイ。オ前ハ死ンデイナイ。ドラゴニュートハソウ簡単ニ死ナン』
「ドラゴニュート?」
『アア、オ前ノ事ダ、タケル』
「僕が、ドラゴニュート。分かりました。やります」
『頼ンダゾ。オ前ガ最後ノ希望ダ』
やがて光は一点に集まり、僕の目の前で消えた。
――――――――――――――――――――
バン!
アニムスは傍の机に拳を打ちつけた。
「シチエン!よくも私の邪魔をしてくれたな!」
「何を言う。殺されそうだった哀れなレムリアンを救っただけだ。それにヤシェルは善人だ。彼は今まで悪事を働いたことが無い。ヤシェルは生き残ってもいい者だ」
「いいや、お前は分かっていない!全て滅ぼす事に意味があるのだ!ここで終わりにしなければ、バランスが崩れるんだ!」
「なら今、自らの手で始末すれば良かろう」
「そんなこと言って、また邪魔をするのだろう」
「肯定はしないさ。まぁ、否定もしないけれどな」
「罪は償ってもらう。命に変えてでもな」
「なんだと?お前がレムリアンをしっかり管理していればこのような事にはならなかったじゃないのか?」
「私が悪いだと?お前がフィディを連れ攫わなければ、レムリアン達が罪を犯すこともなかったんだ!どう考えてもお前が悪いだろ!」
「ふざけるな、俺たちがテラエに来た目的はなんだ?ペットを飼うことか?あぁ?」
「レムリアンはペットでは無い!あれは完璧な生命体だったんだ。お前が汚すまでは」
「質問に答えろよ。いいか、俺たちはアウルムを採掘する為にここに来たんだ。それに必要な労働力として生物を作ったんだろ?それをアウルム採掘に使わずにどうしろと言うんだ。それにフィディがいなければ、今も女達はスラーヴォを産む為に苦しんでいたんだぞ。それをよく考えろよ!」
「それはお前が完璧な生命体を創っていれば済んでいた話ではないのか?」
「うるさい!そんな事は分かっている!」
「もういい。対話で解決できると思って来た私が馬鹿だったよ。ここまで来たら後は武力行使しかないな。私はお前たちを絶対に許さない。必ず復讐してやる」
「あぁ、やれるものならな」
――――――――――――――――――――
「マーテル、核の用意だ」
「落とすの…ですね」
「致し方ない」
「分かりました。場所は?」
「奴の本拠地、スラーヴォのいる、ランドム大陸だ」
「了解」
マーテルは指示された場所へと舵を切る。
「目標地点に到達。最終準備完了」
「よし、カウント開始だ」
「了解。5、4、3、2、1」
「…投下」
――――――――――――――――――――
「ランドム大陸にて、高エネルギー反応を確認。放射能飛散、被害甚大です!」
「何!?よし、人命救助を最優先。出来るだけ放射能に触れる時間を減らすんだ!」
「了解」
まさか本当にやりやがったのか、アニムス。まぁ、いい。これでこちらも手を出しやすくなった。
アトラスから飛び出した救助隊は、キノコ雲を突き抜け、着陸する。
「トランスポート着陸完了。これより作戦に入る」
『了解』
そこは文字通り地獄であった。
即死したと思われる遺体が散乱し、地上は炎に包まれていた。
救助隊は地下のアウルム鉱山に向かった。
入り口が塞がれていて、侵入に手間取った。
「大丈夫か!!」
防護服を着たアトラスにいたスラーヴォ達が、救助に当たる。
「た、助けてくれ…」
「痛い、痛いよお…」
「頼む、殺してくれ、もう苦しみたくない」
地下では悲痛な声が響き渡っていた。
その後、放射能に触れた者は隔離され、戦えるスラーヴォ達の数は半減し、レムリアンもほぼ壊滅状態であった。
――――――――――――――――――――
「目標、ヱデン。第一爆撃隊発進」
数日後、アトラスから漆黒に包まれた立方体の爆撃機が飛び立つ。
目指すはヱデン。核を積んで。
「並びに第二爆撃隊発進」
今度はレムリアに向け、爆撃機が発進する。
「ヱデン上空に到着」
『了解。全機、投下用意』
「了解。投下用意開始」
『安全装置解除確認、投下5秒前』
「了解」
『カウント、5、4、3、2、1…全弾投下』
核爆弾が次から次へとヱデンに落とされていく。
『ヱデン消滅を確認。直ちに帰還せよ』
「了解」
「目標、距離500。攻撃を開始します」
『了解』
――――――――――――――――――――
「アニムス、東から戦闘機が多数接近中」
「シチエンのか」
「恐らくな」
「全自動防御システム起動。アウリックシールド展開」
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「荷電粒子砲全弾命中。続いて第二弾充填開始」
「シチエン司令、敵には強力なシールドが展開されています。全て弾かれました」
「シールドだと?」
「はい、恐らく主成分がアウルムのアウリックシールドかと」
「ほう、最新の技術を搭載しているという訳か」
「どうしますか。このまま攻撃しても、効果は薄いと思われます」
「構わず打ち続けろ。いくらアウルムでも、必ず破れる時が来る」
「了解」
「第二弾全弾命中。効果無しです」
「よし、水素爆弾を投下だ。用意しろ」
「レムリアに落とすのですか!?」
「そうだ。用意でき次第出撃だ」
「了解」
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僕は目を覚ました。
ドーーーーーーーーーーーーーーン
何かが爆発した音がした。
そして衝撃が来て、扉が吹き飛ぶ。
僕は入って来る土煙が落ち着くのを待って、外に出る。
水平線上に大きな雲が見える。
辺りを見渡す。薙ぎ倒された木々、崩れ落ちた崖、跡形も無くなった村の家々。
僕は怒りや悲しみという感情がどうしようもないほど溢れてきた。
あの煙に辿り着けば、何がある気がした。
でも、僕には何もできない。ましてや空を飛べる訳でもないのに。
『イメージダ』
「え?」
龍神様の声が、頭の中に響いてきた。
『空ヲ飛ブイメージヲシロ』
空を飛ぶ、イメージ?空、空を飛ぶ、鳥だ。鳥は翼がある。翼か。翼があれば!
僕の背中に翼があって、それで空を、飛ぶんだ。
『ソウダ、ソノママ、地面ヲ蹴ロ!』
僕は言われた通り、脚に力を入れる。
両足が地面を離れてから、少し経ったが、着地した感覚が無い。
脚元を見ると、僕は浮いていた。
「うわっ」
信じられない状況を見て、僕はバランスを崩した。
足先が空を向き、地面に激突すると思ったその時、僕は空高く飛び上がった。
「えっ、今、何が?」
僕は背中に光輝く翼があるのに気づいた。
『行ケ、タケル』
「っはい!」
僕は翼を動かして移動する姿をイメージした。
――――――――――――――――――――
「迎撃システム起動」
「了解。アニムス、南方向より未確認飛行物体接近中」
「シチエンの船か?」
「いや違うわ、戦闘機じゃない。なんなのあれ….翼?」
「翼って、どういうことだよ」
「分からない。翼の生えたレムリアンらしき生命体が凄い速さで向かってきている」
「なんだと、何故レムリアンに翼が?」
「そんなの分かるわけないでしょ」
「…そうだよな。マーテル、私たちはとんでもないモノを創ってしまったのかもしれない」
――――――――――――――――――――
僕は争い合っている二つのモノの間に立ち止まった。
そして両手を双方に向ける。
「やめろ!何故争うんだ。お前のせいで世界はめちゃくちゃだ。龍神様もお怒りになっている。早く、やめるんだ!」
僕は龍神様に言われたように二つのモノに対して勧告した。
――――――――――――――――――――
「未確認飛行物体静止。射程圏内だ」
「よし、撃て」
――――――――――――――――――――
『司令部、謎の飛行体が静止』
「射撃用意は?」
『いつでも撃てます』
「射撃開始」
――――――――――――――――――――
タケルは左右から同時に攻撃を受けた。
僕は思わず急降下する。
あいつら、僕を殺す気だ。
僕は水面ギリギリを飛行して、とりあえず陸地へと逃れる。
翼で加速しながら走って隠れる場所を探す。
僕は地面の小さな亀裂を見つけ、そこに飛び込む。
「はぁ、はぁ、はぁ。何なんだよあれは」
体が震えている。
僕はその場でうずくまった。
――――――――――――――――――――
『司令部、謎の飛行体は急降下の後、逃走。追撃しますか?』
「どうします、司令官?」
「興味深い。追え」
「了解。全機、追撃命令」
「待て、別の隊に追わせるんだ。第二爆撃隊はそのまま戦闘続行」
『了解』
「直ちに捜索隊を組織、用意でき次第発進」
「了解」
――――――――――――――――――――
ダッダッダッダッダッダッダ
地響きが聞こえる。恐らく何かが集団で走っている。
さらに何か喋っている。
見つかったらどうしよう。
「はぁ、はぁ…」
落ち着き出した鼓動が、また早くなっていく。
聞こえてくる声がだんだん大きくなっていく。つまり、近づいて来ている訳だ。
僕は亀裂から入る僅かな光を頼りに、少しでも外を覗こうとする。
すると、光が消え、代わりに腕が伸びてきた。
まずい、見つかった。
亀裂はどんどん開いていく。
助けて、お願い。誰か、龍神様…!
――――――――――――――――――――
「居たぞ、ここだ。穴を広げるんだ」
「これで俺たち昇格できるかな」
「かもしれないな」
バーーーーーーーーーーーーーーン
スラーヴォ達が耳を塞ぐ。
「何の音だ!?」
「おい、あれ見ろよ!」
スラーヴォの一人が指を指す。
「火山が、噴火したのか…?」
「どうやらそういう事らしい」
「おいおい、何か、噴石の一つがこっちに飛んで来てないか!?」
「逃げろ!撤退だ!」
「ギャァーオ」
「ぐはっ」
走っていた一人が、急にその場に倒れる。
「どうした、大丈夫か!?」
そばにいた数人が駆け寄る。
「ダメだ、死んでいる」
「何だ、これ」
「爪…痕?」
そのスラーヴォの背中には、三本の爪痕が深々とつけられていた。肉がえぐれ、血が噴き出している。
「どうなってん…アアァァァ」
「フラギリス!?」
「おい、どこ行ったんだ?」
ドサッ
肉塊が地に落ちる。
「フラギリス!?」
「こいつも、死んでる」
「立て、早く逃げるぞ!」
その場にいた者達は、一斉に立ち上がって駆け出す。
「グォォォォッッ」
炎が立ち上る。炎に焼かれた者は、瞬間に灰と化す。
「わっ」
駆けていた一人が、転ぶ。
「大丈夫か!?」
「俺のことは構わず逃げろ!」
「すまない!」
「ちくしょう、足を挫いちまった。しかし、噴火に惨殺に炎って、一体どういう事だよ。ここは、地獄なのか?」
噴き上がり続ける炎を見て呟く。
「グアァァァァァオオッ!」
炎から、口を大きく開けた何かが飛び出す。
「これは、ドラゴン…」
グシャ
――――――――――――――――――――
ドラゴニュート。神から賜りし龍王の血。
ドラゴニュート。龍を操り世界を統べる者。
ドラゴニュート。その姿は人。
ドラゴニュート。絶望の淵に龍が出でる。
「大丈夫カ、タケル?」
「り、龍神、様?」
物凄い音がして、目を瞑ってうずくまっていた。そして気づいたら、目の前に龍神様がいた。
「乗レ」
「え?」
「俺ノ背中ニ乗レ。決着ヲツケル」
「っはい!」
――――――――――――――――――――
「アニムス、またよ。また未確認飛行物体が接近中!」
「先程の奴か?」
「違うわ、ドラゴンよ…」
「ドラゴン?ま、まさかあの?」
「実際に存在したなんて」
「何故空想上の生物がテラエに?」
「…!シチエンの船がドラゴンに攻撃を…」
「一体、どうなった?」
「見て!空中で炎が上がったかと思ったら、跡形もなく消滅したわ」
「焼失したってことか?」
「…恐らく。まずい、こっちに来る!」
「ドラゴンの方向にシールド強化だ」
「分かったわ。衝突までおよそ5秒!」
ガンッッ
「ドラゴン衝突!」
「シールドへの被害は?」
「まだ平気よ」
ガン、ガン、ガン
「ドラゴンがシールドを連打!これじゃあシールドが保たない!」
「くっ、まずいぞ」
ガンッッ!
「腕が、突き抜けた…。し、シールドに穴が!」
ブチブチブチブチ、ブシャッ!
「アウリックシールド消滅!ドラゴンがここに。衝撃に備えて!」
ドーーン!
船内が大きく揺れる。
「ドラゴンは!?」
「こ、ここの直上」
「何!?」
バキバキ、バーン!
天井の一部が無理やり剥がされる。
ダンッ
私の目の前に、一人の少年が降り立つ。
「お前は…誰だ?」
「僕はタケル。ドラゴニュートの、タケルだ」
――――――――――――――――――――
「な、何の用だ、タケル…?」
「さっき壊した物って、あなたたちのではないですよね?」
「戦闘機の事か?ああ、それはシチエン達の物だ」
「その人をここに呼んで下さい」
「な、何故だ?」
「いいから早く!」
「わ、分かった。マーテル、至急アトラスと連絡を」
「了解」
――――――――――――――――――――
「何?ドラゴンだと?」
「はい、早急にレムリアに来いと」
「ふざけやがって。どうせシチエンの罠だ。構うな」
「り、了解」
――――――――――――――――――――
「…タケル。シチエンは、面会を拒否した」
「分かりました」
僕は龍神様の元へ戻る。
「どうします、龍神様?」
「拒否スルナラコチラカラ連レテ来レバイイ。行クゾタケル。二人ニハココニイロト伝エロ」
「はい」
ダンッ
「僕達はシチエンを捕まえてきます。絶対にこの場を離れないで下さい」
「あ、ああ。ここにいるよ」
「では、後ほど」
「捕まえると言っても、どこにいるか分かるんですか?」
「大丈夫ダ。恐ラクシチエンモ地上ニハイナイダロウ。ダカラ飛ンデイレバソノウチ見ツカルサ」
「そうですかね…」
「ナンダ、心配カ?」
「ま、まぁ、少し」
「ソウカ。ホラ、見エテキタゾ」
「すごい、流石です龍神様」
「フ、マアナ。行クゾ」
「はい」
龍神様が速度を上げる。
――――――――――――――――――――
「左方、謎の飛行体接近中」
ドラゴン…?いや、まさかな。
「アニムスの戦闘機か?」
「違います。角、翼、尾…恐らくあれはドラゴンかと」
「何だって!?」
「迎撃態勢」
「了解、迎撃態勢用意」
アトラスの砲塔がタケル達に向けられる。
「用意完了」
「撃て!」
ドラゴンは炎を吐いた。
目の前が何も見えなくなった後、炎の中からドラゴンが飛び出してきた。
「グォォォォッッ!」
バーーーーーーン!
ドラゴンの咆哮と共に、アトラスが太い木の枝に貫かれる。
そして木の枝は動き出し、アトラスを破壊していった。
「アトラス、80%損害!」
「存続箇所は!?」
「緊急用脱出艇、アトラス・ピラミッド及び発着場、格納庫周辺です」
ガンッ
「ドラゴンが、本艦に…」
「ここまでか…」
バキバキバキバキ、バーン!
「上部装甲一部損害!」
空から、光が差し込んだ。
ドラゴンが、そこにいた。
ドンッ
一人の少年が、飛び降りてきた。
「誰だお前は!」
「僕はタケル。いいから黙って僕達について来い」
「もし、拒否したら?」
「それは…」
パァン
「きゃあ」
シャンティーサがタケルに向かって発砲し、それを守ったドラゴンが彼女を掴み上げた。
「お前がシチエンだな?」
「あ、ああ。そうだ」
これは大人しく従うしかないか…。
「ぐわっ」
私はドラゴンに、もう片方の手で掴まれる。
「何するんだ!」
「このまま連れて行く」
そして少年はドラゴンに飛び乗る。
ドラゴンは羽ばたいた。
――――――――――――――――――――
「マーテル、ギアを入れろ」
「まさか、逃げるつもり!?」
「ああ。逃げるさ」
「それで捕まったらどうするの。殺されるかもしれないわよ?それに機体に穴が空いてるから宇宙空間の移動は難しいし…」
「予備パーツは?」
「あるけど修理するには空中じゃ無理よ」
「仕方ない。近くに降りて、すぐ修理して逃げよう」
「本当に大丈夫かしら」
「すぐ終わらせれば間に合うさ。宇宙空間に出てしまえばこっちのもんだ」
私たちは近くの島に降り立った。
――――――――――――――――――――
「この辺じゃありませんでしたっけ、龍神様」
「アア、ドウヤラ、逃ゲタヨウダナ」
「許さない。絶対ここにいるって言ったのに」
「ソウダナ。ダガ、余リ遠クニハ行ケナイハズダ。スグニ捕マエラレルサ」
そう言って龍神様は急降下する。
「見ツケタ」
――――――――――――――――――――
それは、突然起こった。
バーーーーーーン!
地中から、太い木の枝が生えてきた。
バキバキバキバキ
レムリアが串刺し状態になり、天高く持ち上げられる。
これは、まさか…。
「なんですか、これ」
「セフィロトの樹だ」
「え?」
「どこかの文献で読んだことがある。ドラゴン…いや、そうだ。ドラゴニュート!タケルも言っていた。ドラゴニュートが操ることのできる樹だ。"ドラゴニュートから生まれる生命は、セフィロトの樹から生まれ、セフィロトの樹に還る"と書かれていた。つまり、これは生き死にの生命の集合体だ」
見上げると、ドラゴンが空を舞っていた。
――――――――――――――――――――
「お姉、さん?」
「マーテル!!あなたもテラエに来ていたのね」
「まさかこんな再会をするとはな、アニムス」
「ええ、驚きです、シチエン」
上空に固定されているレムリアの一室で、会議が行われようとしていた。
「今日、強引にあなた達を捕まえたのは、この星の主である龍神様の意見を聞いて貰う為です。あなた達は我々の星を勝手に占拠し、無関係な全生命を巻き込んだ大洪水を起こし、挙げ句の果てに戦争を始めた。これは許される行為ではありません。戦争状態の即時解決、そしてこの星からの永久撤退、並びに永久不干渉が龍神様の要求です。拒否すれば、迅速かつ完全なる壊滅あるのみです」
シチエンとアニムスはお互いに見つめ合う。答えは出ているようだ。
「私達モナードヴェンは、今までのテラエでの数々の罪深い行動を反省し、先方の要求に完全に従うことを同意する」
「そして双方に恒久の平和が訪れることを願う」
二人は言いきった。
「どうします、龍神様」
「アア、コレデイイ」
「分かりました」
「お二人の熱意は、十分に伝わりました」
そう言ってタケルは立ち上がり、手を差し伸べた。
シチエンとアニムスも立ち上がり、三人は手を取り合った。
「さて、残るは事後処理についてだな」
アニムスが切り出す。
「シチエン、スラーヴォとレムリアンはどうする?」
「カアスに連れ帰れると思うか?」
「難しいだろうな」
「そうだよな」
「いいですか、龍神様?」
「ウム、元ヲ辿レバ赤イ血ナノダ。問題ナイ」
「あの、スラーヴォとレムリアンはこの星に残しても構いませんよ」
シチエンとアニムス、そしてシャンティーサとマーテルも顔を見合わす。
「いいのか?いや、しかし、それはダメだ」
「レムリアンは数も少ない。致し方ない、以前のアニムスと同じことを言うことになるが、抹殺するしかない。だが、スラーヴォはまだ数も多い…」
「ならば、テラエの衛星を使わせてもらうのは?」
「どうだ、タケル?」
「問題ないです」
「ありがたい。大いに助かる」
こうして、今後の行く末は決まった。
レムリアンは二人の意見により抹殺。スラーヴォはテラエの衛星に送られ、モナードヴェン達はアトラスの脱出艇でカアスへと帰還し、大破した宇宙船アトラスとレムリアはテラエの海底に沈み、二つの宇宙船の残骸の環境への影響を見張るため、ブラックナイトという衛星が軌道上に打ち上げられた。
――――――――――――――――――――
「逃げろ、いいな?できるだけ、ここから遠くに逃げるんだ」
「うん、でも、お父さんとお母さんは一緒じゃないの?」
「絶対に後を追う。だから振り返らずに、逃げるんだ。どこにいても、必ず見つける」
「分かった。私、頑張る」
「よしよし、偉いぞ。ほら、行け!」
「うん」
少女は、逃げた。
「まだいたか、しぶとい生き残りめ」
グシャッ
「全く、この後は見知らぬ土地に飛ばされるんだろ?勘弁して欲しいな」
「ああ、レムリアンを殺す俺達の身にもなってほしいぜ」
――――――――――――――――――――
僕は島に降り立った。
「今マデアリガトウナ、タケル」
「僕も、龍神様のお役に立てて、光栄でした。これからは、どうするのですか?」
「妨ゲラレタ眠リニツクサ」
「そうですか。寂しくなりますね」
「心配ナイ、私達ハ全テ繋ガッテイル。イツデモナ」
「なら、大丈夫な気がします。また会えるといいですね」
「会エルサ。ジャア、マタナ」
龍神様が飛び立つ。
「お元気で〜!」
僕は大きく手を振った。
その後、僕は海辺で倒れている少女を見つけた。
「君、大丈夫?」
僕は駆け寄った。すると少女は目を覚ました。
「あなた、誰?」
「僕は、タケル。アマテルツキノミヤノタケル」
――――――――――――――――――――
かつて、火山の噴火の様子を遠くから眺めていたアニムスはこう言った。
「あそこはまさに、火出づる島だな」
その島に、五つの新たな生命が生まれた。
五人はそれぞれ肌の色さえ違えど、別け隔てなく、両親に大切に育てられた。
そして時は過ぎ、五人は世界中に散らばった。
両親は島中を探索し、ある山の近くに定住した。
そこで世界を守る龍神の姿を模した石像を造り、敬い、自らの話を後世に残した。
――――――――――――――――――――
――――――――――――――――――――
ある日、街中を一組の親子が歩いていた。
母親に抱かれていた少女は、母親の背後に広がる空を指差して言った。
「お母さん、流れ星
外典Ⅱ アナザージェネシス 完
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事とは一切関係ありません。




