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【完結】アカシックレコード  作者: 白黒羊
外典II アナザージェネシス

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21/83

EPθ 天禄:オペレーター

そして、アウルム採取を任された2人が、テラエで邂逅することになる。


シチエン達がテラエに帰ってくる頃には、アニムスが実質的にテラエを占拠していた。

シチエンはレムリアに乗り込み、アニムスに抗議した。


「おい、どういうことだアニムス」

「久しぶりですね、お義兄さん。どうしたんですか?」

「とぼけるな。テラエは俺の星だ。なんでお前がここにいる」

「そりゃ、父上に命ぜられたからですよ。お義兄さんに代わってアウルムを採取してこいとね」

「いいや、アウルム採取を任されたのはこの俺だけだ。お前はもうカアスに帰れ」

「何言ってるんですか。任務を放棄したのはそっちでしょう」

「任務を放棄だと?馬鹿言え」

「覚えてないのですか?父上があなたに大量のマルヴェンキントを送った直後、反比例するかのように送られてくるアウルムの量が減り、ついには全く届かなくなったではありませんか。当時父上は憤慨しておりましたよ」

「あの間にそんなことが…。だが、俺は今テラエに帰って来たのだ。これからは俺が任務を遂行する。だからもう一度言うぞ、お前は帰れ」

「テラエと言っても広いんです。お互いに干渉することなく、任務に携わればいいではないですか。この星には大きな海が二つある。それぞれの海上に船を静止させて、そこで暮らしてはどうです?」


シチエンは考えた。今は安住できる場所の確保が最優先だと。


「わかった。いいだろう」

「では、そういうことで」

「ああ、ならば俺はもう一つの海に向かう。邪魔はするなよ」

「もちろんです」


シチエンとアニムスは別れた。

――――――――――――――――――――

シチエンは、アトラスに戻る途中、偶然ヱデンを見つけた。

ヱデンの中に入ってみると、そこにはフィディとアンドラスがいた。


「君たちは何者だ」

シチエンは2人に話しかけた。

「こんにちは。私はアンドラス、こちらはフィディと申す者です」

アンドラスは丁寧に答えた。

「何故、ここにいる?」

「私達は、主により創られ、主から与えられたこの地で、暮らしているのであります」


まさか、アニムスが…?

素晴らしい。こんな生命体を創ったのか。

特にあのフィディという奴。二つの生殖器官を兼ね備えている。

こいつが居れば、勝手に仲間が増えていくのか。そうすれば、彼女たちの負担も無くなる。

スラーヴォに変わる究極の奴隷が生まれるではないか!


シチエンは、小さなフィディの手を掴んだ。

「君はフィディと言ったな。私も君達の言う主の一人である。だから私と一緒に来てくれないか?」

「私が、ですか?」

「ああそうだ。君が必要なのだ。頼む」

「…分かりました」

フィディはアンドラスに向き直る。

「それではアンドラス、お元気で」

「フィディも、お元気で」


こうしてシチエンは、フィディをアトラス内の農園に連れ込んだ。

そしてフィディに"知恵のなる果実"を与えた。

するとフィディは、自分が裸であることを恥じ、すぐに身体を葉で包んだ。


それからシチエンは、フィディに子を産むように命じた。

――――――――――――――――――――

アニムスがヱデンに訪れた時、彼は自分の目を疑った。


「あ、アンドラスよ、フィディはどこに行った?」

「はい、フィディは、どこかへと連れていかれました」

「連れていかれた…誰にだ?」

「主のお仲間です。彼はフィディを必要としていました」

「悲しくは、ないか?」

「かなしい?それは、何ですか?」


この時ばかりはアニムスも、二人に心を持たせなかったことを後悔した。

アニムスは、大切な二人に、魂だけの状態、苦も楽も欲もない、ただ本能的に助け合い、生きていく、そうあって欲しかった。

だから、"知恵のなる果実"も与えなかった。

なのに今回は、困っている者を助けるという本能のもとで行動した結果がこの様であった。


アニムスはその場に崩れ落ちた。

「ああ、主よ。一体どうなされたのですか」

アンドラスはアニムスに近づき、その小さな手の平で、アニムスの背中をさすった。

「アンドラス、済まない。フィディ、済まない。全て私の不注意のせいだ。私が悪い」

「あなたは何も悪くありませんよ」

「ありがとう、ありがとう、アンドラス」

――――――――――――――――――――

数日後、アンドラスはアニムスから貰った農具で畑を耕していた。

そこにアニムスがやってきた。

アニムスは、アンドラスが一人で一生懸命鍬を振り下ろしている姿を哀れに思った。


その夜、アンドラスが寝静まった頃、アニムスはアンドラスの肋骨を一本取り、そこを肉で塞いだ。

そしてその肋骨を使い、もう一人のレムリアンを創造した。


翌日、アニムスはアンドラスのもとへ、完成したレムリアンを連れて行った。


「アンドラス、彼女はこれから君と暮らす仲間だ。だから彼女に名前を付けて上げなさい」

「分かりました」


アンドラスは女を見た。


「ジネカ、なんてどうでしょう」

「素晴らしい、いい名前じゃないか」


「これからよろしくお願いします、アンドラス」

「こちらこそ、ジネカ」

二人はお互いに微笑みあった。

――――――――――――――――――――

「スラーヴォ達、そしてフィディ。私はカアスに戻らなくてはならない用事が出来た。しかしお前たちを乗せて帰る訳にはいかない。なので、この大陸の中だけで生活するんだ。いいか?絶対に、この大陸から出てはいけないぞ。分かったな?」

「「「はい」」」

「はい」

「よし、それでは行ってくる」


こうしてシチエンはアトラスでカアスへと帰って行った。

――――――――――――――――――――

「親愛なるアンドラス、そしてジネカよ。聞いて欲しいことがある」

「どうされたのですか、我が主よ」

「私は、生まれ故郷に戻らなくてはならない。なので一つ約束して欲しい。私は、もう一つの楽園を作った。だから少しの間だけ、そこで生活してはくれないだろうか」

「主のお望みとあらば」

「ありがとう。それと一つ忠告だ。絶対に、"知恵のなる果実"だけは、食べてはいけないよ。その実を食べると死んでしまうんだ。いいね?」

「「はい」」

「ありがとう、ではこれから二人を楽園まで連れて行こう」


そして二人を楽園まで送ったアニムスは、そのままレムリアに乗り、カアスへと帰って行った。

――――――――――――――――――――

大王モナの葬儀は、何日もの間行われ、カアス中が悲しみに包まれた。

シチエンとアニムスは、そこで再開した。


「久しぶりですね、お義兄さん」

「ああ、そうだな。元気にしていたか?」

「はい、お陰様で。それより、私のフィディを返していただけませんか?」

「さも俺が悪いというような言い草だな」

「当たり前じゃないですか!私のフィディを奪ったくせに!」

「何を言う!ならばお前は仲間が苦しんでもいいと言うのか?」

「え?」

「フィディがいれば、奴隷は勝手に増えていく。人工授精で無理矢理産ませるスラーヴォとは違ってな。いいか、奴隷がいなければ、アウルムを採取することもままならないんだ。その為にはスラーヴォか、レムリアンかを造る必要がある。お前は、どちらを取るんだ?」

「くっ…」


「父さーん!叔父さーん!」

そこへ、一人の少年が駆け寄ってきた。

そして少年は、シチエンに抱きついた。

「久しぶり、父さん!」

「やあプエル、また大きくなったな。元気にしてたか?」

「うん!」

「そうかそうか」


アニムスはその光景を見て、三人が自分の子供であることを改めて気付かされた。


「シチエン、やはり私はレムリアンを奴隷として扱うのは不可能だ。フィディも返してもらう」

「貴様、自分が何を言っているのか分かってるのか!」

「ああ、だが、私には三人の方が大事だ」

「ふざけるな!」

「父さん!叔父さん!」


二人は目を丸くしてプエルを見た。

「喧嘩は、ダメだよ」

「ああ、そうだな」

「すまないな、プエル」


二人の論争は、ここでお開きとなった。


大王モナの後継には、シチエンとアニムスの腹違いの兄が就くことになった。

葬儀、戴冠式などの一連の儀式が終わり、二人は仕事に戻ることになった。

――――――――――――――――――――

一方その頃、テラエでは。


「それは本当か、フィディ」

「ええ、私が嘘を言うわけ無いわ」

「許せねぇ!俺たちが汗水垂らして働いているのに、そいつは楽園とやらでのうのうと暮らしているだと?」

「俺たちが乗り込んで占拠してやろうぜ!」

「待って、私にいい考えがあるの」

「おお、なんだフィディ」

「アニムスが私達に与えなかった、"知恵のなる果実"を与えるのよ。そうすれば彼も、こちら側につくはずだわ。そして最終的にシチエンにすら反逆して、この世界そのものを統治するのよ」

「そいつはいい考えだ」

「ああ、素晴らしい」

「俺も賛成だ」

「ありがとう。ではまずは面識のある私が果実を与えてくるわ」


フィディは"知恵の木"から果実を一つもぎ取った。


そしてフィディは、スラーヴォの乗り物である黒い立方体の船に乗り、楽園を目指して飛び立った。

――――――――――――――――――――

フィディは、楽園、新しいヱデンに降り立った。そして、そこを散策した末に、一人の女と出会った。

一本の大きな木の下で。


「あ、あなた、名前は…?」

「私は、ジネカです」

「ジネカ…。あなた、アンドラスは分かる?」

「はい、夫ですから」

「違う!アンドラスは私の夫よ!気持ち悪いこと言わないで!」

「そんなこと言われても、事実ですもの」

「違うわ!証明してあげる。アンドラスをここに呼んで!」

「分かりました」


ジネカって、どういうことよ。

私はただ、助けて欲しいって言われたからついて行って、毎日毎日子を産まされ、やっとシチエンがいなくなったから、アンドラスと二人きりになる為に、スラーヴォ達も利用したのに。

この仕打ちって何よ。なんで私だけこんな目に遭わなきゃいけないのよ!


「フィディ…?」


フィディはその声を聞いて顔を上げた。


「アンドラス!」


だが目の前のアンドラスの手は、しっかりとジネカの手を握っていた。


「アンドラス、何してるの。その醜い女の手をさっさと離してよ!」

「醜いだなんて、そんなこと言わないで」

「だって、私はあなたの母親であり、あなたの妻でしょ?夫と不倫する女なんて、みんな人ですら無いのよ!いいからさっさとその手を離してよ!」

「分からないよ。フィディ、一体何を言っているんだ」

「えぇそうね、分からないでしょうね。感情が無いもの。だから私が与えてあげる。私があなた達に全て教えてあげる」


そう言ってフィディは"知恵のなる果実"を取り出した。


「それは、何?」

「これは知識の源。これを食べればあなた達の目は開き、善悪を知ることができる」


その言葉を聞いて、アンドラスの顔つきが変わる。


「まさか、"知恵のなる果実"?」

「察しが良いわね、ジネカ」


アンドラスは、果実に、手を伸ばそうとする。


「食べてはダメよアンドラス!死んでしまうわ!」

「いいえジネカ。この実を食べても死ぬことは無いわ。私が生きていることがその証拠よ」

「ほら、フィディも大丈夫だって言ってる」


アンドラスは果実を掴む。それをじっと見つめる。


「アンドラス、まさか主の命令に背くわけじゃないでしょうね!?」


アンドラスは顔を上げ、今度はフィディの目を見つめる。


「ずっと、苦しんでいたんだね、フィディ。この実を食べたせいで」

「え、えぇ、そうよ」

「ならば私も食べねばなるまい。フィディだけに苦しい想いをさせる訳にはいかない」

「やめて、アンドラス!」

「ジネカ、君に強要はしない。だからただ見ているだけでいいよ」


アンドラスが果実を口にしようとした時、ジネカがその実を奪った。


「あなたが食べて私は食べないなんて、そんなのおかしい!」


そしてジネカは果実を半分に割り、片方を自らの口に入れた。


「ジネカ、ありがとう」


そう言ってアンドラスもジネカから果実を受け取り、口に入れた。


二人はお互いを見つめた。そして、気恥ずかしさを覚えて目を背けた。その後二人は木の葉で身を包んだ。

――――――――――――――――――――

やがて、アニムスがヱデンに帰って来た。


アニムスは、ヱデンの悲惨な光景を見て激昂した。


そこには、多くのレムリアンが、畑仕事をしていた。


彼はアンドラスとジネカを呼び寄せた。すると、そこにはフィディの姿もあった。


アニムスは詰問を始めた。


「アンドラス!ジネカ!これは一体どういうことだ。そして何故フィディがここにいる!」


「主よ、私が説明します」


アンドラスが口を開いた。


「私はフィディに"知恵のなる果実"を貰いました。そして、ジネカと共に食べました。ですが、フィディが悪いわけではありません。食べようとしたのは私の意思です。だからフィディも、ジネカも悪くありません」


「では蔓延っている多くのレムリアンは、お前たちの子供ということか」


アニムスが低い声で尋ねた。


「…そうです」

アンドラスがうつむいて答える。


「ふざけるな!何故禁忌を犯したのだ。くそっ、汚れてしまった。完全無垢な生命が…。お前らには末代まで罰を与える。まずはアンドラス。お前とお前の男の子供には、皆一生の労働という苦しみを与える。そしてジネカ。お前とお前の女の子供には、子供の尊さを分からせる為、子を産む際に、最上級の痛みを与える。さらに以後、レムリアンはヱデンを永久追放とする。最後にフィディ。お前は悪の権化。永遠に地を這いつくばって生きるがいい」


アニムスは右手に握っていた杖を一振りし、全てのレムリアンに服を与え、今度は杖で地を一度叩き、ヱデンの草花を全て消し去り、最後に杖をフィディに向け、彼女の姿を蛇に変えた。


アニムスは宇宙船レムリアに戻った。


「まさか王家に伝わるこの杖を使う機会がこんなにも早く訪れるとは。やはり願いを叶えてしまうこの力は絶大だ。封印が妥当か」

――――――――――――――――――――

それから時は流れた。

やがてアンドラスとジネカは死に、今はその曾孫たちも余生を全うしようとしていた。


あるところに、クピドゥスという男がいた。彼は労働という神から与えられた使命に背き、暴力を振るって人から物を奪ったり、他人の作物を横領したりなどと楽をして生きている男であった。


自分の力を過信したクピドゥスは、当時の指導者を殺し、世界の全てを手中に収めた。


そしてクピドゥスは、自分の力を神に知らしめる為に、天高く伸びる塔の建造を始めた。


人々は石の代わりに煉瓦を、漆喰の代わりにアスファルトを用いた。


クピドゥスは順調に積み上がっていくその塔をカエルムの塔と名付けた。


そして全てが自分の思い通りに運んでいる事を喜びこう言い放った。


「神よ!我らを造りし創造の主よ!見るがいい。私は働かずともここまで上り詰めた。つまり私は原罪を償う必要のない者だということだ。それ即ち私は神の一員であるということであろう!」

――――――――――――――――――――

アニムスは激怒した。働きもせず悪事を働いて生きていく堕落者が現れた事に。

その堕落者が権力を握った事に。

そして遂に、堕落者が神を自称したことに。


アニムスはレムリアンを抹殺することを決意した。


レムリア内の他のモナードヴェンは猛反対した。折角の苦労を無駄にするのかと。

そして反意を表する為、レムリアから出て行った。


だが、マーテルだけはアニムスの考えに賛同した。


マーテルは言った、「もう時効だ」と。

――――――――――――――――――――

宇宙船レムリアから逃げ出したモナードヴェン達は、宇宙船アトラスに辿り着いた。


モナードヴェン達は、シチエンにアニムスの事を話した。


「そうか、奴も恐ろしい事を考えるな」


シチエンは言った。


その後シチエンはテラエのレムリアンの生息地に降り立った。


姿形が見えぬよう、特殊な装置で自身の体を透明にした。


そして、カエルムの塔建造の為に働かされていた石工のヤシェルという男に、こう囁いた。


「正しき者、ヤシェルよ。間もなく洪水がこの地を地獄へと変える。だが、私の言うことを聞けば、お前とその家族だけは生き残ることができる。ゴフェルの木を使い、幅と長さの等しい立方体の方舟(はこぶね)を造るがいい。そして、私が与える全ての生き物の(つがい)と、お前の妻、子供、そして子の妻を乗せるがいい。さすれば救われるであろう」


ヤシェルは言われた通り方舟を造り、シチエンは全生物の雌雄それぞれの遺伝子が入ったカプセルをヤシェルに与えた。


ヤシェルは方舟の扉を閉め、家族と共にその時を待った。

――――――――――――――――――――

アニムスは地に降り立った。


そして、封印を解いた杖で空をかき回した。


やがて黒雲がテラエを包み込んだ。


アニムスはレムリアに戻り、テラエの周回軌道上に逃れた。


シチエンもまた、モナードヴェンとスラーヴォとフィディのレムリアンを乗せ、テラエの周回軌道上に逃れた。

――――――――――――――――――――

雨は1年もの間降り続け、テラエ上の全てを洗い流した。

カエルムの塔も薙ぎ倒され、粉々に砕けた。


それから、また1年が経過した。


ヤシェルは外が静かになった事に気づき、ヤタという名の(からす)を外に放った。


だがヤタは、とまるところがなく帰ってきた。


30日程経ち、もう一度ヤタを放った。


するとヤタはゴフェルの木の葉を咥え、帰ってきた。


さらに30日待ってヤタを放つと、もうヤタは帰っては来なかった。


ヤシェルはヤタを追い、外に出た。


ヤシェルの方舟は、ある山の頂上で座礁していた。


上を見上げると、空には虹がかかっていた。

――――――――――――――――――――

火ノ山ニテ―――


「そろそろ、決めなければならないな」

「えぇ、そうですね…」

「やはり、タケルか…?」

「私はそれが最適かと思います。でも、私は辛いです、我が子を差し出すなんて!」

「あぁ、何も好きでやるわけじゃ無い。俺だって、本当ならやりたくない。だが、仕方ないんだ。世界の為だ」

「えぇ、そうですね…」


その日、両親は、いつもの数倍僕に優しくしてくれた。

本当なら兄さんや姉さんや弟や妹の世話で忙しいはずなのに。

僕は生まれつき、目の色が赤かった。

僕以外そんな特殊な人はいないから、みんな僕を気味悪がった。

両親も、僕が自分のことをほとんど一人でできるようになった頃から、あからさまに僕を避けているのが分かっていた。

でも、昨日は違かった。

だって、いつもなら兄弟達でさえ行くことの許されない、火の山の頂上まで連れてってくれたんだ。

連れてってくれて…それで…気づいたら僕は一人だった。


大きな岩をくり抜いて作ったような部屋。石の扉か何かに塞がれて出ることは出来ない。この部屋には何もなかった。ただ一つ、祭壇を除いては。

助けを求める為に叫んだが、もはや誰にも届くことはないだろう。

僕はどうなるのだろう。食べる物も何もないし、死ぬのだろうな。死。全ての終わり。

僕はその場に寝そべった。岩のはずなのに、思いのほか暖かかった。体の中からじわじわと温まる感じ。ああ、気持ちがいい。

僕は目を閉じた。

この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。

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