EPη 参上:ジェネレーター
「ねえねえ、お母さん、またお話読んでよ~」
青い瞳を輝かせた少女が、隣に横たわる母親の腕を揺さぶる。
「しょうがないわねえ。読み終わったら寝るのよ?」
「わ~い!やったぁ!」
渋々母親が、口を開く。
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遠い昔、敵対する種族との星間戦争に勝利した代償に、惑星カアスは、様々な宇宙線から星を守る役割を持つフェーロ層に深刻なダメージを受けてしまった。
予測では、近いうちに恒星エンケトラドスの大規模フレアが起こるとされている。
このフレアまでにフェーロ層を修復しなければ、カアスの生命は絶滅することになる。
そこでモナードヴェンの当時の王である、大王モナは、息子で科学者のシチエンにフェーロ層の修復に必要な物質、アウルムを探すように命じた。
シチエンは、数人の仲間と、18人のマルヴェンキントと呼ばれる、灰色の皮膚を持ち、大きな頭部に細い手足、扁桃型の目をした奴隷を合わせた計25人で長距離移動用居住施設併設型宇宙船・アトラスに乗り込み、アウルム採掘の旅に出発した。
そしてシチエンは、過去の文献や、惑星調査の結果から、生命がいると言われている惑星テラエに目を付け、そこに上陸した。
その頃のテラエは、恐竜という生物によって大地を支配されていた。
恐竜との意思疎通を断念したシチエン一行は、海中に多く眠っていたアウルムを採掘し始めた。
シチエンとその仲間達は、マルヴェンキントに全ての仕事を押し付けていた。
だがそのことにマルヴェンキントは反発し、遂にはストライキを起こした。
怒ったシチエンだったが、働き手がいなくなるのは自分にも都合が悪いと考え、マルヴェンキントの仲間を作ることにした。
シチエンは、科学者仲間であるシャンティ―サと共に、奴隷を作る計画、ジ・ミウルギア・プロジェクトを開始した。
シチエンは自らの遺伝子と、テラエを支配する恐竜の遺伝子を掛け合わせ、シャンティーサが細胞を培養し、シチエンと共にテラエに来た女性モナードヴェンの一人の子宮にその胚を移植した。
そして胚は子宮内で順調に育ち、遂に顔は恐竜、体はモナードヴェンである新たな生物が誕生した。
シチエンはその生物に"奴隷"という意味を込め、"スラーヴォ"と名付けた。
シチエンはスラーヴォを量産しようと考えたが、ここである問題が生じた。スラーヴォには、人工的に作られた生物のためか、生殖機能が備わっていなかったのである。
シチエンは悩んだ。仲間を苦しませてスラーヴォを産ませるか、母星にいるモナードヴェン達が散っていく姿を見届けるか。
やはり答えは一つであった。
シチエンは連れてきた3人の女性モナードヴェンにどんどんスラーヴォを産ませていった。
そして、産まれたスラーヴォにアトラス内の農園にある樹木になる"知恵のなる果実"を与え、積極的にスラーヴォ同士を競争させ、優秀な者には褒美をやり、役に立たない者は殺していった。
結果、マルヴェンキントとスラーヴォは協力して、大量のアウルムを採掘していった。
それはどんどんカアスへと送られ、無事にフェーロ層は回復し、フレアからカアスを守ることができた。
これでシチエン達も撤退…と思われていたが、カアスにいる科学者が、フェーロ層を修復する過程でアウルムを使った様々な実験を行い、なんと新たなエネルギー源として利用できることが判明したのである。
喜んだ大王モナは、引き続きアウルムを採掘するようシチエンに命じた。
シチエンはさらにスラーヴォを大量生産し、仕事に従事させていった。
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それから時は流れ、テラエにある危機が迫っていた。
直径50キロメートルの隕石が、テラエ目掛けやってきたのである。
シチエンはアトラスのレーザーで隕石を迎え討った。大きさは五分の一まで小さくすることができたが、代わりに隕石に大きな角度がつき、生物の大量絶滅を察したシチエンは、
マルヴェンキントとスラーヴォを連れて、隣の惑星、マールスに逃れた。
隕石がテラエにやってくる直前、大王モナはアウルム採掘の為、カアスにいるマルヴェンキントの80%をテラエに送っていた。
大勢のマルヴェンキントとスラーヴォの働きにより、もともと微量だったマールスのアウルムは、瞬く間に取り尽くされてしまった。
困ったシチエンはテラエに調査隊を派遣するが、調査隊は命からがら帰還し、とてもまともに作業できるような環境ではないことを報告した。
シチエンは他の惑星も調査するが、ほとんどがガス惑星であり、とてもアウルムがあるとは考えられなかった。
マールスの土地は開拓できるところがなくなり、シチエンは人口の削減を判断しなければならない状況にまで追い込まれてしまった。
そんな時、モナードヴェンに近い、位の高いマルヴェンキントは、人口削減の話を耳にし、自分の種族がまた迫害されるのを恐れ、スラーヴォを襲い始めた。
やがてマルヴェンキントとスラーヴォによる全面戦争が始まった。
この戦争に手を焼いたシチエンは、テラエが回復したという情報を受け、マルヴェンキントに荒れ果てたマールスを統治する権利を与え、強引に戦争を終わらせた。
宣言通り、シチエン達はスラーヴォを連れ、テラエに戻ることになった。
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少し遡り、シチエン達がマールスに逃れた後。
送られてくるアウルムの量が少なかなったことに怒った大王モナは、シチエンの異母兄弟であるアニムスに、アウルム採掘の任務に就かせた。
アニムスも、宇宙船レムリアに乗り、惑星テラエを目指した。
アニムスがテラエに降り立つ頃には、テラエは再生の道を歩んでいた。
緑が生い茂り、新たな生命が蔓延っていた。
アニムスはカアス内のマルヴェンキントの人数が少なくなっていたこともあり、数人の仲間だけを連れて来ていた。
そのため労働力となる者を確保しなければならなかった。
アニムスは共にテラエに来たマーテルと、
労働力となる奴隷の創造から取り掛かった。
アニムスとマーテルは、自らの遺伝子とテラエの様々な種類の生物の遺伝子とを掛け合わせていった。
時には半魚人、半牛人、沢山の動物の形質を持つ生命体など、色々な物が出来上がっていった。
しかし、どの生物も、生殖機能を有してはいなかった。それもそのはず、生殖機能を形成するのに必要だと考えられている遺伝子を組み込むと、どの生物も成熟する前に死んでしまったのである。
これが問題であった。考え抜いた末、未成熟の状態の胚を原子炉の中に入れ、放射線によるる遺伝子の突然変異を狙った。
実験は何度も失敗した。遺伝子だけでなく、放射能汚染で死んだケースも多々あった。
ただ時だけが流れ、大王モナから怒りの連絡を受けたことも稀ではなかった。
そして、ようやく完成した。生殖機能を持った、モナードヴェンに似た生命体が。
アニムスはこの種をレムリアンと名付け、さらにフィディという名前を与えた。
フィディは両性具有であった。
フィディは一人の子供を産んだ。
その子はアンドラスと名付けられ、逞しい男に育ったのであった。
アニムスは、フィディとアンドラスをレムリア内のヱデンという場所に住まわせ、自由に暮らさせた。
なんとアニムスは、フィディとアンドラスを我が子のように扱ったのだ。
やっとのことで生まれて来てくれた二人が、もがいて、もがいて、ようやく母親から産み落とされた胎児のように見え、とても愛おしく思えたのだろう。
いつしかアウルム採取も忘れ、テラエでは、ただ平穏な時間だけが流れた。
この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。




