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【完結】アカシックレコード  作者: 白黒羊
第弐章 奪還奪取篇
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EP11 魂の継承

やがて日は昇り、タケルは目覚める。


うつ伏せで寝ていた俺は身体を起こす。地面にあぐらをかいて座る。

頭が、ジンジンする。俺は…何をしていたんだっけ。

ふと、下を見る。そこには、黒ずんだ肉と骨があった。俺は頭を抱える。

「ああああぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!」

これが、これがサイトウさんなのか…?嫌だ、そんなの嫌だ!

俺は立ち上がり、逃げる様に駆け出す。

「わっ」

俺は小石か何かにつまづいて転ぶ。

「いてて…」

顔を上げると、今度はまた別の死体があった。それは、見るに堪えないものだった。周囲に青い血が飛び散り、死体には首が無かった。

これは…何だ?俺は、何をした?

また俺はその場に座り込み、死体を見つめながら必死に思い出す。そして、すぐに後悔した。

「オエッ」

俺は吐いた。

「ゲホ、ゲホッ、ゲホ、オッ、オエェッ」

目からは涙が溢れ出し、見ていられなくなって急いで傍を離れる。だが、それも無駄であった。

俺は気付いた。周囲に転がっているモノは、全て死体であるということ。

「アアアアアァァァァァッッッ!!!!」

なんで、なんで、なんで、なんで、なんで!なんで俺はこんなことしたんだ!

頭を掻きむしり、その場に崩れ落ちる。

この黒焦げた死体、そう、スベテ、俺がコロしたんだ!俺が、この手で…。

全部はっきりと思い出した。鮮明に。感触までもが、ありありと蘇ってくる気さえする。

「オエェェェ」

俺は何度も吐いた。身体が震える。寒気がする。

そして俺はうづくまった。うずくまって、ただひたすら悔やんだ。

死んでしまいたい。消えてしまいたい。もう、嫌だ。何もかも。

俺は、目を瞑った。

――――――――――――――――――――

「そうか、ドラゴニュートが目醒めたか。ティラーノと20人の兵士は、必要な犠牲だった。まもなく、ドラゴニュートはここにやってくるだろう。結託できるのも時間の問題だ」

窓から雲を見下ろしていたトクォーノが、振り返る。

「そのための、大切な人質だからな」

そしてトクォーノは、ニヤリと笑う。

そこには、カプセルに閉じ込められた、元地球防衛軍メンバーと、ビオロがいた。

「引き続き監視を続けてくれ、ルーノ将軍」

――――――――――――――――――――

「タケル」

誰かに、呼ばれた気がした。あれから、何秒、何分、何時間、何日、何ヶ月、何年、経った?

俺は顔を上げる。そこは、真っ暗な深い闇があった。

俺は、死んだのか?

「タケル」

まただ、また誰かに呼ばれた。

俺は立ち上がって、後ろを振り向く。一気に目が慣れ、声の主の姿が見える。

そこには、ボルケーノがいた。

「ボルケーノ…?」

「久シブリダナ、タケル」

「ボ、ボルケーノ!!」

俺はボルケーノに抱き着く。また涙が、溢れ出す。

「わあーん、ボルケーノ!どこ行ってたんだよ!ぐすっ、俺を置いてさあ!俺、俺…寂しかったんだぞ…!」

ボルケーノの手が、そっと俺の背中に触れる。俺はボルケーノに抱きしめられる。

「本当ニ、済マナカッタ。ゴメンナ、タケル」

「うぅ、いいよぉ、またこうして会えたんだからぁ…」

「アリガトウ」

ボルケーノは、凄く暖かかった。

「ずっとこうしていたいよ、ボルケーノ」

「ソノ気持チハ痛イホド分カルガ、ソレハ出来ナイ」

俺はうづくめていた顔を離し、ボルケーノの顔を見上げる。

「な、なんでだよ。俺が、俺が殺人鬼だからか?たくさんの命を奪った、最低な奴だからか!!」

俺は後ろに一歩下がって言う。

「タケル、ソノ様子ダト、全テ思イ出シテイルヨウダナ」

「ああ、そうだよ。覚えているよ!血がはじけ飛ぶ光景とか、肉が潰れる感触とか!何から何まで覚えているよ!」

「ソウカ。ソレデモタケル、聞イテ欲シイ」

「なんだよ…!」

「オ前ハマダ、戦ワナケレバナラナイ」

「どうしてだよ!もうあんな思いなんかしたくないよ!」

「マイケル司令達ガ、捕マッテイルンダゾ?」

「…!で、でも、助けに行ったところで、どうせまたあの力が発動して、止められなくなって、気づいたらたくさん人を殺してるんだ!そんなのもううんざりだよ!」

「タケル、ソレハ本当ニ、スマナカッタ」

「な、なんでボルケーノが謝るんだよ」

「俺ヲ食ベタ事モ、思イ出シタダロ?」

「…うん…」

「アノ時、時間ガ無クテ、一ツヤリ忘レテイタ事ガアル」

「なんだよ、それ」

「魂ノ、継承ダ。コレヲ行エバ、暴走ハ治マル。ソモソモ、暴走ハ、ドラゴニュートノ(チカラ)ヲタケル自身ガ制御出来テイナイセイデ起キタ事ナンダ。制御出来ナイカラ、命ノ危機ニナッタ時ダケ、第二ノ心臓ガ、鳴リ出シタンダ。ガ、ソレモモウ、解決スル。力ヲ制御出来レバ、暴走スル事モナイ。自分ノ意思デ、動ケルカラナ」

「でも、そんなこと言ったって結局助けに行ったら、殺さなくちゃいけないじゃないか!だから、俺は行かない!」

「救エル力ガアルノニ、何モシナイノカ?」

「別に俺が望んで手に入れた力じゃないんだ!だから、どうしようが俺の勝手だろ!」

「タケル、約束シタダロ。俺達デ世界ヲ守ルッテ。例エ望マヌ力デモ、オ前ガヤラナキャイケナインダ。イヤ、タケルニシカ、出来ナイ事ナンダ。コレガタケルノ、使命ナンダ」

「俺の、使命…」

「アア」

俺にしか、出来ない事。俺が、やらなければいけない事。…くそっ。

「まだ、間に合うのか?」

「問題ナイ」

「そっか。じゃあ、やろう。魂の継承を」

「分カッタ。始メヨウ」

「どうやるんだ?」

「俺ノ魂ヲ、タケルガ食ウンダ」

俺は絶句する。

「そんな…」

「心配スルナ。ココハタケルノ心ノ中ダ。イツデモ会エルサ」

「本当に?」

「本当サ」

「分かったよ。ボルケーノを信じる」

「アリガトウ。ヨシ、始メルゾ」

「うん」


タケルがそう言うと、途端にボルケーノは眩い光を放ち出し、体が、まるで内部の一点に吸い込まれていくように見えた。

そしてそこには、ビー玉ぐらいの大きさの、赤い玉が浮いていた。


俺はボルケーノの魂に近づく。

「いただき、ます」

俺はそれを口に入れる。


パキン!


そして噛み砕くと、俺は荒れ果てた荒野の上にうずくまっていた。


俺の、使命。


そう反芻して、立ち上がる。

自分の意思。ボルケーノはそれで動けると言った。でも、どうすればいいんだ?

意思、俺の意思。それはなんだ。

俺は目を瞑って考える。


…みんなを助けたい。戦いを終わらせたい。この手で。


そう思うと、急に全身が熱くなる。

頭と背中と腰に一瞬の痛みを感じて、何かが解き離たれた感覚になる。


タケルは目を開ける。

真っ赤な目に、黒い虹彩が浮かび上がる。


手を握りしめてみる。脳の命令通り、しっかりと右手は拳を作った。

背中に力を入れると、翼が動き出す。


よし、これなら、いける。


俺は地面を蹴るのと同時に翼で空気を押す。


タケルは飛び立った。

空には蠢く、真っ黒な、分厚い雲…。

――――――――――――――――――――

目下にあるのは、地球。

司令達はどこにいるのだろう。


『海ノ上ノ、ピラミッドダ』


体の内側から声が響く。この声は間違いなくボルケーノのものだ。

「ありがとう、ボルケーノ」

俺は地球の周りを回って海の上のピラミッドを探す。

そして遂に、雲の上に浮かぶ黒いピラミッドを見つけた。


俺はピラミッド目掛け、頭から落ちていく。空中で回転し、ピラミッドの上部に蹴りを入れる。


大きな穴を開け、俺は着地する。

「タケル!」

聞き覚えのある声がする。声のした方を見ると、そこには髪の赤く、肌が真っ白で、青い目をした、綺麗な少女がいた。

「ビオロ…?」

「そうよ。良かった、無事だったのね」

ビオロはカプセルの中に閉じ込められていた。よく見ると、同じカプセルが部屋中に立っている。捕まっている人達はみんな、見覚えのある元地球防衛軍の人達である。

「今、助けるよ」

俺はカプセルに近づく。すると、背後で声がする。

「やっと来たか。ドラゴニュート」

「…!」

俺は振り向く。

「トクォーノッッ!!」

そこには、玉座に座ったトクォーノがいた。

「どうやらティラーノを殺したそうだな」

「あ、ああ。そうだよ。次は、お前だ」

指先をトクォーノに向ける。

「ふっはははははは!そうかそうか」

突然、トクォーノが目の前に現れる。

俺は左足で地面を蹴って後ろに下がり、着地した右足でもう一度地面を蹴り、その勢いでトクォーノの胸元にパンチを食らわす。


パチッ


「ッッ!!」

「…おや?」

俺の右拳は確かにトクォーノの胸に当たっている。でも、トクォーノはびくともしない。

…ダメだ。明らかにパワーが足りない。俺は一体どうしちゃったんだよ!


タケルはそのまま左手で顔を殴ろうとするも、受け止められ、しかもそのまま持ち上げられて投げ飛ばされた。


「ぐはっ」


俺はビオロのカプセルに背中を打ちつけた。

「どうしたドラゴニュート。ティラーノはこんな奴に殺されたのか?情けない。呆れる」

「グァァァッッ!!」


ダン!


俺はもう一度殴りかかる。しかし、今度は蹴り上げられてしまう。

「ぐほっ」

「ここまで戻ってこれるかな?」

そして、また投げ飛ばされる。


バリン!


俺は吹っ飛び、そのまま窓を突き破る。

下から銃撃を受け、翼に穴が空いて俺は落下する。


すぐに起き上がって、辺りを見回す。


俺は、大量のスラーヴォに囲まれていた。

――――――――――――――――――――

『ルーノ将軍、ジャイルモード起動だ』

「了解」

ルーノがブラックナイト衛星内の制御コンピューターを操作する。

「アトラス・ピラミッド、ジャイルモード起動」

アトラスの中央にある通称アトラス・ピラミッドの最上部が上昇を開始する。


ブラックナイトに、新たな影が降り立つ。


「な、なぜだ!何故貴様が、ここにいるんだ!…ドラゴニュート!」


影がニヤリと笑う。


ブシャッ!


ルーノの肉体が弾け飛ぶ。


影は、ブラックナイトのコンピューターを操っていた。


「…レムリア、起動」

この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。

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