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【完結】アカシックレコード  作者: 白黒羊
外典I アナザーワールド
12/83

EPε 散リユク炎

僕は天井に通気口を見つけた。ジャンプで中に入る。

左腕についている、腕時計型通信機の地図モードを起動する。ゲートキーがあるのはゲート総責任者の部屋、そう必然的にシゲル・ネイサルドの部屋に行くことになる。だが彼のことは今は後だ。ライドンさんともそう約束した。

僕はもう一度、作戦の概要を思い出す。


『では、詳細を話していくぞ。まず施設への侵入の仕方だ。私がゲートシリコンバレーのメインコンピューターをハッキングして一時的に各施設の裏口の監視システムをダウンさせておく。その間に侵入するんだ』

「「「了解」」」

みんなが声を揃えて言う。

『そして無事侵入できたら、移動には通気口を使え。後で支給する通信機…支給するよな?』

「ああ、ちゃんと11人分あるぞ」

『よし、その通信機に各施設ごとの地図をダウンロードしておいた。それを使ってゲートキーのある、ゲート総責任者の部屋を目指せ。そしてゲートキーを入手したら、次は最下層の特別制御室に行け。ここは施設の中でも一部の人間しか知らない特別なエレベーターを使う必要がある。そのエレベーターの場所も地図を参照してくれ』

「「「了解」」」

『特別制御室に着いたら、あとはゲートキーを台に差し込んで全員の準備が完了するのを待つ。そして同時に回す。以上だ』

「ゲートの開放が終わったらすぐに各行政府庁に行き、"革命"の合図を防災用行政無線で流す。あとは民衆が一斉に反乱を起こす。放送後は、もう一度ここに集合だ。今後について話し合う」

「「「了解」」」

「さあ、みんな立ってくれ」

 ライドンさんが言う。

「え、何するの?」

マーシャルさんが尋ねる。

「みんなの無事と"革命"の成功を祈って円陣だ」

「お〜!いいっしょ、いいっしょ!」

全員が丸くなる。

「いくぞ。Re-BIRTH!ファイ!」

「「「オー!!!」」」


僕は任務中だが、思わず笑ってしまった。急に円陣が始まるあの雰囲気、僕は大好きだ。

よし、あの角を曲がって少し進めばネイサルドの部屋だ。

「ネイサルドさん、どちらへ?」

「王が私をお呼びになった。私は王に謁見してくる」

「承知しました」

…!僕はフリーズした。

仇が、真下にいる。いや待て、ネイサルドのことは後だ。今は、今は、任務に集中するんだ!

「私は一月ほど留守にするが、こちらのことは頼んだよ」

「お任せください」

もし、神がいるなら、なぜ神はこんなにも残酷なのだろう。王ってなんだ?どこにいる?仇はすぐそこにいるのに、1ヶ月も待たなくちゃいけないのか?どうする、どうする。

ああ、迷っているうちにも、奴は遠ざかっていく。早く決めなければ!僕のせいで、任務に支障が出たら、遅れが出たら?……いや、待てよ。人一人殺すのに、そんな時間はかからないんじゃないか?……ダメだ!これは悪魔の囁きだ!……悪魔が必ずしも間違っているわけではないんじゃないか?……通気口の出口は目の前。

『おい、No.10!何やってんだ!早くしろ!』

急に通信機から声がする。

「ん?今の声は何だ?」

まずい、気づかれたか?

『おい、応答しろ!おっ』

僕は電源を切った。こうなったら、やるべきことは一つ。僕は安全装置に手を掛けた。

――――――――――――――――――――

「No.9、準備完了!」

9は俺に与えられた番号だ。作戦中は、本名は使わない約束だ。それに顔を覆っているターバンも外さない。どれも身バレを避けるためだ。

『了解。あとはNo.10だけか。予定時刻2分前。ちゃんと来るだろうか…』

ライドンさんが不安になるのもわかる。ジンにはもう一つやるべきことがあるもんな。

「おい、No.10!何やってんだ!早くしろ!」

心配になった俺は思わず口走ってしまった。しかし、反応がない。

「おい、応答しろ!おい!あいつ、切ったのか!?」

『9、落ち着け。お前ならわかるだろ。あいつは絶対に来る』

ボスに叱られる。

「すいません、冷静じゃなかったです」

ジン、ちゃんと2分以内に来いよ。絶対だからな。

俺は心の中で、ジンに訴えた。

――――――――――――――――――――

ガシャン


僕は通気口の蓋を叩き落した。そして部屋の中へと飛び降りる。

「お前、何者だ!?」

「うるさい!」


パァン!


思わず発砲してしまった。弾は額に命中したようだ。ネイサルドと話していた男が倒れる。

僕は扉を開け廊下に出る。少し離れたところに男の背中がある。

「シゲル・ネイサルドォォォ!!」

男が振り返る。間違いない、夢に出てきたのは、あいつだ。


パァン、パァン!


二発の弾丸はネイサルドの両太ももに命中する。

「ぐぁっ」

ネイサルドが崩れ落ち、膝立ちの状態になる。

「お前は、何者だ…」

「覚えてないのか?なら教えてやるよ!」

僕は顔を覆っていた布を外す。

「僕はジン!ジン・オーガスト!クロウリー・オーガストとレーナ・オーガストの息子だァァァッッ!」

僕はネイサルドのもとへ駆け寄る。

そして彼を蹴り倒し、胸に銃口を突きつける。

「ジン、お前がジンか…。大きくなったな」

「何言ってんだよ。親戚みたいなツラしてんじゃねーよ!」

「ははは、確かに親戚ではないな。だが覚えてはいないだろうが、レーナが入院していた時、私は君の面倒を見ていた。小さくて可愛かったぞ」

「ふざけんじゃねーよ!」

僕はネイサルドの腹を踏み付ける。

「ゴハァッ」

「お前のせいで、母さんは、レーナ・オーガストはおかしくなったんだ!なんで尋問台なんて使ったんだ!母さんが何をしたって言うだよ!」

僕は何度も何度も踏み付ける。

「それは…知っているんじゃ…ないのか?」

僕は足を止める。

「レーナは…極秘の、プロジェクトJに関する、情報を…知ってしまった」

「ゲート・シリコンバレーのパスワードのことか」

「なんだ、知ってるじゃないか」

「それはそんなに大事だったのか」

「ああ、そうさ。ほんのひと握りの人間しか知ることはない情報だ。レーナを尋問した当時、私もその情報は知らなかった。ただ上司に命令されて、仕方なくやっただけのことなんだ!だから、私は、悪くない!」

「悪くないだと?母さんを洗脳したじゃないか!」

「それも、上の、命令だ。あの時は、まさか記憶が無くなるとは、思いもしなかった。だからそれも、仕方なくだ」

「でも、お前が母さんをおかしくした事実は変わらない!だから僕は、お前を、殺す!」

――――――――――――――――――――

『残り10秒』

『もう間に合わない。総員準備だ』

「待ってくださいよ!絶対来ますから!」

『悪いな。時間切れだ』

『あいつとは二人で開くから、ゲートのことは心配するな』

「…わかりました」

『よし、ではいくぞ。カウント3!』

俺は鍵穴にゲートキーを差し込む。

『2』

頼む、来てくれ、ジン!

『1』

くそっ、何でだ。


ガチャ


俺達は鍵を右に回した。すると、どこからか機械の声がした。

『ロック解除。自爆装置作動。残リ1分』

「自爆装置ってどういうことですか!?」

『分からない。まさかデータが全て書き換えられていた…!?そんな、まさか。ありえない、探知されているはずはないのに…』

『と、とにかく時間がない。総員撤退!出来るだけ離れろ!後は会って話そう』

『『『了解』』』

俺も急いで部屋を出る。

エレベーターのボタンを押す。

「くそっ、まだ来ないじゃねーか」

辺りを見回すが他に脱出口は見当たらない。俺はボタンを連打する。

「早く、来てくれ!」

『残リ30秒』

――――――――――――――――――――

『ネイサルド府長!10のゲートの自爆装置がカウントを開始しました!』

ネイサルドの通信機から、声が聞こえる。

「自爆装置?ど、どういうことだ?」

「ふっ、11ある世界中のゲートは全てのキーを同時に回さないと、機能しない。そして全て揃わずにキーを回すと、自爆装置が作動する。つまり、この東京以外が吹き飛ぶんだ。お前のせいでな、ジン」

「何言ってんだ。デタラメなんか信じないぞ。そうだ、お前は、母さんを、おかしくした。そんな奴の言うことなんて、信じれるもんか!」

「ふっ」

ネイサルドが微笑む。

「何がおかしい!」

「お前は、何も分かっていない」

――――――――――――――――――――

『残リ10秒』

俺はエレベーターの扉を叩く。

「早く!早く!」

『5』

扉が開き始める。

『4』

俺はこじ開け、中に飛び込む。

『3』

そして"閉"のボタンを連打する。

『2』

「ああ、全部、お前のせいだ。ジン…」

『1』

――――――――――――――――――――

「うるさい、お前こそ、僕の何が分かるんだ!」


パァン!


僕は発砲した。その途端、激しい揺れに襲われた。揺れの影響か、停電が起こる。


『ああ、全部、お前のせいだ。ジン…』


クリートの声がした気がした。いや、まさかな。通信機の電源は切ってるんだし。

……はっ。まずい、まずいぞ。僕は電源を入れなおす。任務のことをすっかり忘れていた!

「こちら、No.10!誰か!応答して下さい!」

なんで、誰も出ないんだ?

「誰か応答して下さい!遅れてすいません!すぐ行きます!だから!だから!」

くそ、みんな、怒ってるのか…?そりゃそうだ。僕は任務を放棄しちゃったんだ。でも、誰も諦めたなんて言ってないぞ。

僕は腕時計の、地図モードとライトモードを起動する。

ネイサルドの部屋に戻り、ゲート・東京のゲートキーを取る。

本来なら通気口を使うべきなんだが、きっとこの暗さなら、バレないだろう。

僕は廊下を走り出す。秘密のエレベーターの場所へと。


その途中、ネイサルドの傍を通った時、僕は思わず奴の顔を見てしまった。

その死に顔は、笑っていた。まるで悪魔の様に。

そして僕はふと、ネイサルドとの会話を思い出した。

"11ある世界中のゲートは全てのキーを同時に回さないと、機能しない。そして全て揃わずにキーを回すと、自爆装置が作動する。つまり、この東京以外が吹き飛ぶんだ。お前のせいでな、ジン"

僕は頭の中で全てが繋がった気がした。

思わず足が止まる。

まさか、いやまさか、そんなはずはない。さっきの地震が、10個のゲートが吹き飛んだ衝撃によるものだなんて。ありえない。でも、そうだとすれば、辻褄が合う。なんでみんな、通信に出ないのか。そうか、みんな、死んだんだ。僕のせいで。

「はぁ、はぁ、はぁっ!」

息がだんだん早くなる。

「あああああああああああぁぁぁぁぁっっっっっ!!!!!」

僕はその場に崩れ落ちる。

「嘘だ!嘘だ!そんなの噓だ!嘘に決まってる!」

僕は何度も頭を床に叩きつける。

「嫌だ!嫌だ!そんなの嫌だ!」

何度も何度も、叩きつける。


『ああ、全部、お前のせいだ。ジン…』


また、あのクリートの声がする。

「違う、違う違う違う!僕のせいじゃない!僕のせいなもんか!お前らが悪いんだ!僕を置いていったからだ!そうだ!全部あいつらのせいだ!僕は悪くないっっ!」

僕は自分の頬を殴った。

「それも違う!僕は大馬鹿者だ!みんなは何も、悪くない!」

目からは涙がこぼれ落ちる。額からは血が垂れる。

「ああああああああああああっっっっ!!!ぐす、がぁぁぁぁぁっっ!!」

僕はひたすら泣き叫んだ。

――――――――――――――――――――

「ポステ王。東京以外の全エリアが、ゲートの自爆システムにより、壊滅的被害を受けました」

「分かった。ならばオペレーション・プルーヴィを実行に移せ」

「この状況でオペレーション・プルーヴィですか!?」

「この状況だからだ。さっさと実行に移せ」

「申し訳ありません。仰せのままに」

この話はフィクションです。実在する個人、団体、出来事などとは一切関係ありません。

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