表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
6/14

『5』

目を覚ましてから2日。

誰も私に近づいたり、声をかけたりしない。

可笑しいぐらい、誰からも認められない。


「くっそ、覚えてろよ!」


仮面で顔を隠すことができてよかった。

感情を出さずに生きるのは、以外と便利。そして、少しだけ辛い。


「お帰りなさい、ウィックド様。」

「げっ!」

「怪我をなさっております。すぐ薬を…。」

「こら!びっくりしたんじゃない!」

「申し訳ありません。」

「あたしに構うなよ、迷惑だから!」

「でも、怪我人を見捨てるわけにはー。」

「うるさい!近づくな!あっち行け!」

「わかりました。お大事になさってください。」


本当によかった。

悲しみや寂しさなんて、見せたくないから。

仮面の奥、隠してしまおう。


「おっと、失礼。」

「うぎゃっ?!」

「え…。」


躓き倒れるデストロイ様と、後ろで笑うポイズン様。

たぶんこれあは、ポイズン様のいたずら。

火を見るより明らか。


「どけ!」


デストロイ様が叫ぶ。

でも、私は躱せない。

あの方は欺罔王国の幹部。

私なんかが醂せるわけがない。

不可能に体を縛られたら、目を閉じ、運命を待つしかない。


「いてて…。」


気が付いたとき、私は見てしまった。

怪我どころか痛みもない。

苦しんでるのは、むしろデストロイ様。

そしてー。

デストロイ様がぶつかった、透き通るシールド。

透明な警戒の向う、吹きすさぶ怒り。


「退けろって言っただろう!無視するのか!」

「デストロイ様の動きを避けるなんて、私に出来るはずがありません。」

「って、ふざけんな!お前、実は俺よりー。」

「いい加減にしろ。」

「ノ、ノワール様?!」

「…!」


いつのまに、ノワール様が私たちを見下ろしていらっしゃる。

どこから現れただろう。さすが、驚くべきの力。

デストロイ様も、後ろのポイズン様も、急いで跪く。


「悪意者が近づくと自動的にシールドが出来る。敵も見方も手出さないようにな。」

「でも!」

「ちなみに、幹部に歯向かうこともできない。そうプログラムされてるんだ。」


誰もがお互いの顔色をうかがう。

誰か異議を差し挟んで欲しい、悔しい顔。

でも、ここは欺罔王国。力こそ全て。

だから、誰も文句は言わない。


「次のターゲットが決まった。我に勝利を捧げる者はないのか。」

「それが、最近あいつら本気出してるし、けっこう怖くてー。」


突然、地面が揺れる。

これは自然現象ではない。

ノワール様が生み成す怒り。


「も、申し訳ございません!」


でも、その次にも、前に出る者はない。

このままでは、ノワール様が爆発する。

止めなきゃー。


「あの、ノワール様。よかったら、私がー。」

「なんだと?」


感じる視線。

ざわめく声。


「お前が?」


何となく、恥ずかしい。

そういえば、気が早過ぎ。

戦う方法も知らない。実戦経験もない。

私のくせに、あまりにも勝手な事をしちゃった。

わがまますぎな私を、皆、呆れた目で見つめる。


「じゃ、このあたし、ウィックドにおまかせください!」

「今先逃げてきたくせに。」

「なに?」


ああ、また始まった。

なんで喧嘩しつづけるだろう。

仲間同士、仲良くして欲しいのに。


(っ…。)


仲間。

その言葉が、なにかを呼び起こす。

暖かくて、優しい気持。

モノクロのパノラマが、いずれ切れてしまう。


「静かに!今度はポイズン、お前が行ってこい。」

「はい!」


ポイズン様が消え、皆元の場所へ戻る。

見方なのに、いじめる理由はないのに。

私が、足りないから…?

寂しさが満ちると、唇を噛む。


「つかまえた!」

「ベイン様…。」


後ろから抱きしめる、冷たくて鋭い感覚。

見なくてもわかる。ベイン様だ。


「私も、役に立ちたいと思ってー。」

「へえ、十分役に立てると思うけど?」

「でも、私はずっと戦わずにいるから…。」


語を継ぐことは出来ない。

あまりにも怖い目付き。

襲い掛かる恐ろしさ。

私は、言葉さえできない。


「ベイン、様?」

「何のつもりだ、お前。もし、ここから逃げ出す気か?」

「そんな…。」


私の両肩をつかむベイン様の手に力が入った。

痛い、辛い、なにより、不愉快。


「君は僕のそばにいればいい。どこにも行かせない。」

「っ…。」

「良いだろう?」

「はい…。」


何度も頷いたのは、痛みから解放されたくて。

帰り道のベイン様は、なんとなく不安そう。

だから私は、絶対『神』を不安にさせない、そう決めた。

でも、約束も誓いも、すぐ破れてしまった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ