『2』
「これで全部かな。」
目の前のかげろうが消えて行く。
自らの肉片を燃え尽きる意志が、何となく、眩しい。
「居所や家族、友もまとめたし。」
用あり気な顔して、『神』が近づいてくる。
「はい、ここで問題。」
顔が近い。息が触れる。
頬をなでる指から熱が伝わる。
「君は、誰?」
「わた…し?」
真っ白だった頭に突然、新たな情報が押しかける。
名前はリカー。家族はいない。
友人や知り合いなど、一人もいない。
だって、私は…。
「…リカー。」
このお方によって作られた人形だから。
「やればできるじゃない。まあ、当然のことか。もともと君は、諦めが悪い性格だし。おかげさまで君の姉にも苦労させちゃー。」
「ア…ネ…?」
知らない単語に反応する鼓動。
その意味はわからないはず。
なのに、なんでだろう。
胸がちりちりと痛み出す。
「おっと、今の聞いた?」
「…っ!」
突然、経験のない激しい頭痛が体を支配する。
淡い風景、微かな記憶。
掴めそう、掴めない薄明かり。
「お、お姉、ちゃん…。」
「ああ、やっちゃった。まじやばっ。」
手と手が合う瞬間、時間が止まる。
手を叩く音が私を支配する。
心も、体も。
たった一度の拍手で、私は私ではなくなる。
「今のは忘れろ。ちなみに、これは命令。」
音が耳の奥を遠し、脳を貫く。
『メイレイ』と言う言葉が心に染み透る。
動けるようになった時、もはや痛みは消えていた。
それより私、どうして苦しんでいたっけ…?
「おや、ノワールさまからのお呼びか。人溜まりは苦手だけど、リカーの初公開だし、飾らないと。」