表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/14

『1』

瞼さえ動けない私のため、『神』は自ら私の目を閉じてやる。

彼の手が触れると魔法みたいに目が閉じる。自然に眠りにつく。


「ー。」


夢の中でも、私は動けない。『神』の許しを得てないから。

真っ白な頭のように、誰も存在しない世界。

曇った視線でただ、『神』を待つ。


「なあ、リカー。」


遅れてくる『神』は、夢まで操る。

不思議な力。ふわふわする。


「あれは、君と僕の思い出さ。」

「あ…。」


彼の声と共に、空白の世界は満たされ始める。

見知らぬ人々、見たことない景色。

何か間違ってるような、不安な気持。


「どうした、変な顔して。いつもの町じゃない。」

「い…つも…。」

「そう、ここが君と僕の居場所だ。僕たちはずっといっしょだった。幸せな日々だった…。」


溜った違和感は彼の声に崩れてしまう。

『神』の言葉は、いつでも真実。疑うわけない。


「ほら、感じるだろう?胸が満たされる、愛や希望、喜びを。」

「うん…。」


暖かい何かが満ちてくる。何となく幸せ。

見るだけで、いつのまにか、口はそっと開けていた。


「ある日。」


『神』の指が唇を触る。

接した指は、いずれ唇の上を走る。

反射的に体が震える。


「神の使いを名乗る奴らが現れて、僕たちの日常は壊された。」


景色が色あせてしまう。

モノクロの世界、息さえ聞こえない。

辛くはない。どうせ何も見えなかったから。

滲み霞んだ眼差しの果、暗闇が形を組む。


「見ろ。」


指を鳴らす音が耳を通して脳や心そのものを撫でる。

跡形さえなく、変えてしまう。

やっと冴えた世界。向き合ってる陰に気が付く。


「その目に刻むのがいい。僕たちの『敵』を。」

「テキ…。」


呟くと、何故か胸裂かれる気がする。

目の前の人たちから目が離せない。

誰かの形を描いてる陰は、むしろ、懐かしい。


「忘れるな。幸せは偽り。不幸は近い。希望は絶望への鍵。だからこそ奪うべき。」


降り頻る長文の口説き。

意味もわからないまま暗記し、繰り返す。


「…。」


何か可笑しい。

ただこれが、単語の暗記が、私の生きる理由、なの?


「よしよし。」


このままで大丈夫か、悩んでいると。

冷たい手が頭を触れる感覚。


「リカーは良い子だな。」


もう、何もかもわからなくなってー。


「頑張ろう、リカー。世界の希望を奪うため。」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ