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プロローグ

「いいかい、ばあちゃんもじいちゃんも幽霊が視えるんだ」

 見間違いとは言えなかった。目を凝らしても頬をつねってもそれは消えなかった。

 恐怖で何もできなかったのが、幸いしたのだと今は思う。

「お前のパパやママもそうだ。今は、まだはっきりと視ることができないだろうけど、

いつか視えるときがくる。だけど驚いたり、話しかけたりしちゃいけないよ。

視えると気づかれるととり憑かれるからね」

 ばあちゃんがしがみつきながら聞いたのを覚えている。

「そして絶対に恐れてはいけないよ」

 そのあと、少し間をあけて

「絶対に恐れてはいけないよ」

 大事なことだから二回言った。


 その日はよく晴れた、ああ、そうだな。分かりやすく表現するならばそろそろ押入れの奥にある扇風機を出そうか、いやでも一番奥底にしまっているよな。めんどくさい! いいや明日にしようと思うぐらいの陽気だ。南向きの窓からはサンサンと光が差し込み、明るすぎてTVが観にくいほど。机の上にはやりかけの宿題、俺の体勢はベットに転がりマンガ片手にほんのわずかな休憩の最中。

 最初は、カーテンの揺らぎかと思った。

 でも、それはカーテンの揺らぎではなく。

 それでいて生きている生き物が起こす動きでもない。

 べつに視えるのは、今日が初めてと言うわけではない、俺の家系は由緒正しきそういうのが視えてしまう家系のようだから。普段なら気にもとめない、何もしなければ何もしなから。

 でも、いつもよりはっきり視えた。

 長く燃えるような赤い髪、ほっそりとした肢体。それは窓から部屋に入り込むとゆっくりと音もなく俺のもとに向かってくる。赤い髪に隠された顔が徐々に上を向き、吸い込まれるような赤い瞳が俺を視る。

 その瞬間、何年も前に死んだばあちゃんの言葉が頭をよぎった。

 でも、あまりにはっきり視えたので触れるのではないかと思った。

 これが真夜中に起きた出来事なら恐怖よりも好奇心が上回るなどということはなかっただろう。

 赤い長い髪の幽霊少女は、よく晴れた昼下がりにちょうど台所にいた妹が「お兄ちゃんオヤツだよ!」と俺を呼んだ時に現れたのだ。



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