2019年12月分
【人物紹介】
プニプニ勇者:二頭身でオムツ姿のプニプニな幼児な勇者。
従者 :勇者のお世話係。
千里眼と主 :勇者の動向を探る二人。
射手 :凍撃の矢と恐れられている冒険者。勇者大好き。
探偵 :とりあえず一話で事件を解決してくれる人。
魔学者 :魔法の力で色々な道具を作る研究者。
道化師 :ふざけてばかりの冒険者。
戦士 :クエスト時の準レギュラーな冒険者。
宿屋の夫妻 :勇者の定宿を営んでいる夫婦。
その他 :魔法薬師、密使、ゴロツキ、村長、眠りの番人、守猫、不死者。
【魔法薬師】
天才と言われる魔法薬師は難問に挑んでいた。毒の沼地のあらゆるダメージを無効化する薬を作るというものだ。それだけなら自信があった。しかし問題はそこでは無い。
「勇者様は苦いのが好きじゃないんです」
それを聞き、プニプニ勇者でも飲める美味しい薬に挑戦していたのである。
【ドシーン】
巨大な守護竜がドシーン、ドシーンと地面を震わせながらプニプニ勇者の前を通って行った。その姿が気に入り、勇者は四つん這いになって真似を始める。
「どょーん、どょーん」
強そうな音を自分の口で言っているが、その姿はトコトコかヨチヨチにしか見えない勇者であった。
【密使】
密使は目立たずに市場を移動し隅で止まった。後少し、そう思った時に何かが飛びついてきた。
「ちゅかまーた」
ギョッとしたがプニプニな幼児が遊んでいるだけだ。
(捕まる訳にはいかない。手紙を勇者に渡すまでは)
気を引き締める密使だったが、目の前の幼児がその勇者である。
【お留守番】
「勇者様、宿屋のおかみさんとお留守番できますか?」
「できる」
元気に答えたプニプニ勇者だが、従者が出掛けようとすると、自分の上着や帽子や鞄をかき集めて扉の前で待っている。
「ゆうちゃも!」
「ギルドで静かにできますか?」
「できる」
従者は笑って勇者に上着を着せた。
【千里眼 目線】
「千里眼、久方ぶりだな。主事のせいで多忙だったのだ」
「私もです」
「早速だが勇者を見せてくれ」
「はッ」
二人の視界にプニプニ勇者が映り、振り向いた。
「今、こっち見た!」
「目線合いましたよ、絶対!」
遠見なので在り得ないのだが、疲れた二人にはそう見えたのだった。
【魔砲】
クエスト攻略で悩む冒険者たちの前に、魔砲を持った魔学者が訪れた。
「魔砲は勇者の怒りを変換して攻撃するのです!」
試しに怒るように頼まれたプニプニ勇者は「ぷぅぷぅ」言いながら小さな手を振り上げたのだが、それを見て冒険者たちは思った。
あの魔砲、絶対役に立たない
【魔砲2】
怒りを攻撃に変える魔砲を使う為、プニプニ勇者が怒る状況を聞かれて従者は答えた。
「おやつを途中で止めたり、眠い時です」
魔学者は頻りに頷いていたが、冒険者たちは別だった。
(それは機嫌が悪いだけで怒りじゃない)
そして冒険者たちは決めた。魔砲は不使用でいこうと。
【魔学者 研究室】
プニプニ勇者と従者が魔学者を訪ねると、そこは油断禁物の研究室だった。
「これが魔石です。飴玉みたいでしょう?」
「おやちゅ」
「食物じゃないですよ、勇者様」
次に隣を指差す。
「果汁みたいなのがその石を溶かした液体です」
「じゅーちゅ」
「飲物じゃないですよ、勇者様」
【魔学者 魔器具】
魔学者はある部屋に案内した。繊細なガラスが複雑に曲がりながら、加熱や冷却や魔力照射を繰り返している器具が置いてある。それを見た途端、従者はプニプニ勇者を連れて飛び出した。
「あんなの、勇者様に壊してくれって言ってるようなものじゃないか!」
勘でオチが読めたのだ。
【ゴロツキ】
ゴロツキが従者の前を塞ぐ。
「懐の大事なものを渡してもらおうか」
覆っていた布が剥ぎ取られると、そこにはプニプニ勇者がゴロツキをジッと見つめていた。
「こんなプニプニ隠し持っていたのかよ!お、憶えてろ!」
(何を!?)
呆然とする従者を残しゴロツキは去っていった。
【ゴロツキの兄貴】
ゴロツキが兄貴分を連れてきた。
「うちの者が世話になったな」
身構える従者を余所に兄貴分はプニプニ勇者の頬っぺたを指でやさしく突く。
「こりゃあプニプニだ」
すると勇者も小さな手で握り返した。
「今日の所は見逃してやる」
(何で!?)
ゴロツキたちは去っていった。
【冬の到来】
その日は特に寒く曇天だったが、プニプニ勇者は外に出たがり、出た後も両手を空に伸ばして笑いながら走り回っていた。はしゃいでいる勇者を不思議に思いながら従者は見ていたが、しばらくして理由が分かった。チラチラと雪が降ってきたのである。勇者には冬の到来が見えていたのだ。
【勇者の噂】
プニプニ勇者と冒険者たちを村長が歓迎してくれた。
「勇者様の噂は聞いております。プニプニな身ながら魔物をなぎ倒し、海を割り、一声で竜を召喚し、魔法で夜を昼に変えるとか」
聞いていた冒険者たちは思った。
そんな勇者、知らない
噂に尾鰭がついて凄い事になっていた。
【頬っぺたぷぅ】
不機嫌なプニプニ勇者が頬っぺたを最大限に膨らませて「ぷぅ」としている。頬っぺたは風船のようになり飛んで行きそうだったが、従者が食事の準備ができたと声を掛けると、途端にシュッと萎んで元に戻った。
「ごっはん!」
勇者の頬っぺたには謎の膨張機能が付いているのだ。
【眠りの番人】
その巨人は眠りの番人と呼ばれていた。谷の入り口で眠りながら通る者を監視していて、物音を立てれば即座に起き上がり排除するという。
冒険者たちはプニプニ勇者が谷を通り抜ける間、静かにしていられるかが心配だったが、従者は自信を持って答えた。
「無理です」
「だよね」
【掃除】
従者が宿屋の手伝いで掃除をしていると、プニプニ勇者もやりたいと言い出したので、清潔な布を渡すと床や壁を拭き始めたのだが、その内、対象は意外なものに移っていた。
「勇者様、冒険者さんたちは拭かなくて良いんですよ」
「お?」
手が届けば何でも拭いていた勇者だった。
【千里眼 菓子】
千里眼とその主がプニプニ勇者の動向を確認していると、ある物が目に留まった。
「あの菓子懐かしいな」
「私も昔食べておりました。大して甘くないのですが、たまに食べると美味しいです」
「明日の菓子はあれにしよう」
「良いですね」
今日も二人は休憩時間を満喫していた。
【探偵 玉石】
大粒の玉石が消え、プニプニ勇者の頬っぺたが膨らんでいる。皆、その中に玉石があるのではと当惑していると、探偵が現れた。
「勇者が玉石を菓子と間違って食べてしまったと思っているようだが、それは違う。頬の中身は僕があげた菓子であり、玉石は盗られないように僕がちゃんと持っているからだ!」
事件は解決した。
【勇者の意見】
疲労しているメンバーを見て、戦士は休憩を取る事にした。
「勇者の意見を聞きたい」
従者は頷き、おんぶしていたプニプニ勇者を降ろす。
「勇者、このクエストどう思う?」
質問された勇者はニコニコしながら答えた。
「ちゅき」
それを聞きクエスト続行を決める戦士だった。
【にゃん】
守猫ダンジョンは入り口の守猫にニャーと挨拶して合格しなければ入れない。だから従者はプニプニ勇者に何度も確認した。
「勇者様、ニャーですよ、ニャー」
そして勇者の番になった。
「にゃん!」
確実にワンが入っていたが、合格したので勇者を連れて足早に離れる従者だった。
【道化師 擬音】
勇者が歩く。
ぽにゅ、ぽにゅ、ぽにゅ
勇者が座る。
ぽてりん
勇者がしがみ付く。
ぽきゅ!
「道化師さん、勇者様に変な擬音を付けないで下さい!」
「だって付けたくなるんだよ、勇者の動きを見てたら!」
変な擬音を付けられても違和感のないプニプニ勇者だった。
【鼻ムギュ】
プニプニ勇者には困った癖がある。それは依頼者が勇者と話す為に屈む時に起こる。
「初めてお目に掛かります」
ムギュ
顔を近付け過ぎると鼻を掴むのだ。
「勇者様!イタイイタイだから放しましょうね」
何度も言い聞かせているのだが、鼻は掴むものだと思っているらしい。
【冬夜祭 勇者】
冬夜祭には贈物を贈り合う。祭が近付き、従者はプニプニ勇者に質問した。
「勇者様、贈物は何が良いですか?」
「ぼーけん!」
「好きなお菓子とかオモチャとか…」
「ぼーけん!」
勇者が何故そんなに冒険好きなのか疑問は残るものの、急遽ギルドに冒険者の募集を出す従者だった。
【冬夜祭 冒険者】
夜祭当日、プニプニ勇者への贈物であるクエストを終え、従者が冒険者たちに礼を言うと「勇者の為だから」と笑顔で返された。中には礼は不要だと言う者もいた。
「予定が無い奴もいたからな。俺は違うけど」
「私も違うけど」
「同じく」
その後、皆で宿屋での祭宴を楽しんだ。
【冬夜祭 贈物】
従者にプニプニ勇者からの贈物があった。宿屋のおかみが勇者と一緒に用意してくれたという。包みを開けると意外な物が入っていた。
「枝?」
「枝だな」
「枝ね」
「勇者ちゃんがこれがいいって」
それは勇者が拾ってきたお気に入りの木の枝だったので、従者は大事に飾る事にした。
■後日談
部屋に飾られた木の枝はプニプニ勇者に見つかり、まるで初めて見たように目をキラキラさせて欲しがったので、結局、枝は勇者の元に戻ったのだった。
【行商人】
プニプニ勇者がはしゃいでクエストが進まない所に、怪しい行商人が現れた。
「プニプニでお困りのようですな。この薬を使えばプニプニ要素が消えますぞ」
驚いた冒険者たちが口々に言う。
「プニプニは必要だよ!」
「大事な要素よ!」
冒険者たちは結局プニプニが好きだった。
【モコモコ】
寒い日に出かける時、心配性な従者によりプニプニ勇者は重ね着でモコモコにされる。その為、手足が動かしづらく走ってもすぐに捕まってしまい、自由に行動できない。よって宿屋に戻って身軽になると大暴れを始める。
「どうした!勇者!?」
そして冒険者たちを驚かせるのだった。
【従者の務め】
「すまん、お前一人に役目を押し付けて」
「これも勇者の従者としての務めです。気にしないで下さい」
戦士は従者の言葉に頷く。
「後で必ず会おう」
「すぐに追いかけます。勇者様のトイレが終わったら」
時間の都合でプニプニ勇者のトイレ休憩では別行動になる事もあるのだった。
【射手 待ち伏せ】
射手は困っていた。プニプニ勇者が椅子の陰からワクワクした顔で飛びつく機会を窺っているがバレバレなのだ。しかし従者からは驚いた振りをして欲しいと頼まれている。
その時、勇者が飛びついた。
「わ、あ、驚いた」
拙い芝居だったが、勇者が満足気なので良しとする事にした。
【不死者】
「勇者よ、永遠の命を得たくはないか?」
「そんなものは要らない!」
「ならば戦うしかないな」
ここで不死者は一人芝居を止めて凹んだ。
「…みたいな予定だったのに、相手が幼児じゃ台無しだよ!」
それを聞いて、プニプニ勇者を抱っこした従者は逆に申し訳なく思うのだった。
【寝相観察会】
「これは新しい寝相ね」
「体が捩れて手足がいろんな方向に延びてるな」
「こんな体勢なのに寝顔は幸せそうなんです」
プニプニ勇者の寝相が変わっていると本人の知らぬ間に寝相観察会が行わる。そして、どんなにおかしな寝相でも勇者はスヤスヤと気持ち良さそうに寝ているのだった。
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