2019年09月分
【主要登場人物】
プニプニ勇者:二頭身でオムツ姿のプニプニな幼児な勇者。
従者:勇者のお世話係。
それ以外にも話に合わせて色々登場します。
【眠りの魔法】
魔法使いは眠りの呪文を唱える。これで相手は深い眠りに落ち、朝まで起きないはずだ。しかし相手はパッチリと開いた目で魔法使いを見つめ、元気いっぱいに飛びついた。
「そろそろ寝る時間ですよ、勇者様」
苦笑いした従者が呟く。
プニプニ勇者に眠りの魔法は効かないのだ。
【不思議】
従者にとってそれは至極当然の現象だった。しかしプニプニ勇者には不思議で堪らないらしく、何度も従者に尋ねる。
「なんで?」
「勇者様が食べたからですよ」
「もっと」
「もうありませんよ」
同じやりとりを繰り返す。おやつは食べたら無くなる。ただそれだけの事なのに。
【探偵】
お菓子をアグアグ食べているプニプニ勇者を囲んで、皆が困惑していると探偵が現れた。
「手が届かない所にあるお菓子を、勇者がどうやって取得したのか疑問のようだが、それは謎でも何でもない。協力者がいたのだよ。そして協力者が誰かも分かっている。僕だ!」
事件は解決した。
【回復の泉】
疲労困憊の冒険者たちは、見つけた回復の泉の水を飲んでは歓喜の声をあげた。プニプニ勇者もコップに汲んでもらって口に入れる。その時の勇者の顔を従者は忘れないだろう。
世界がガラガラと崩れ落ちたかのような呆然とした表情。
きっとジュースだと思ってたのだと従者は察した。
【影が薄い】
錬金術師はプニプニ勇者の頬っぺたチェックを受けていた。従者曰く、初対面の冒険者にするらしい。
それ自体は嫌では無くむしろ好ましいが、問題は勇者のクエストに参加するのも頬っぺたチェックも3回目だということだ。
印象の薄い錬金術師は諦観して結果を待つしかなかった。
【万歳】
クエスト成功のため勇者は装備変更することにした。通常「コマンド→防具→新しい鎧」だが、プニプニ勇者の場合はそうではない。
「勇者様、万歳して下さい」
「ばんじゃーい」
これで現在の鎧を解除して新しい鎧を装備させる。だが途中で勇者がはしゃいでしまい長引く場合もある。
【聖竜の卵】
奪還した聖竜の卵をプニプニ勇者はギュッと抱えていた。卵は大人の頭ほどの大きさで、その姿は卵を温めているようで微笑ましかった。
しかし従者は勇者の言葉を聞いてしまったのである。
「ごっはん、ごっはん」
勇者のオムレツ好きを思い出し、従者はそっと卵から離すのだった。
【真似っこ】
踊り子はその華麗な踊りで仲間の体力を回復し、素早さや防御力を上げた。
その後、奇妙なことが起こる。冒険者たちが戦っていると、プニプニ勇者が笑顔でピョンピョンしながら手足をバタつかせているのだ。
(もしかして踊っているのか!?)
勇者の踊り子への道は遠そうである。
【闇の導師】
「部下の非礼をお許し下さい」
ゴロツキを自ら吹き飛ばし、闇の導師が現れた。
「それでは再度お願い申し上げます。その二頭身でオムツ姿の甘味を口に含み咀嚼しているプニプニな勇者を渡していただきましょうか」
丁寧であればあるほどシリアスが台無しだ、と冒険者たちは思った。
【前兆】
なぜ気付かなかったのかと従者は後悔した。初めての街で地理に疎く、強行軍で疲れていたとはいえ、通り過ぎる人々、独特の匂い、ソワソワしたプニプニ勇者など兆しはあったではないか。
市場の菓子売り場を目の前にして従者は頭を抱え、勇者はお菓子を買ってもらう気満々だった。
【射手 登場】
「俺の所を抜けてお前も丸くなったなッ?」
「ッんだとぉ!」
プニプニ勇者の頬っぺたチェックを受けている射手を傭兵長がからかい、一触即発の状態である。
「これは仕方なくだッ。お前らだって同じだろうが!」
「俺らはもう合格済みなんだよ!」
こちらも丸くなっていた。
【牙の城主】
「勇者が間も無く到着します」
「準備はどうだ?」
「既に整っております」
「では、今宵は勇者とやらを盛大にもてなしてやろうではないか!」
そう言って牙の城主は高笑いした。
しかしその頃、プニプニ勇者が寝てしまったので、一行は早目に野営して明日に備えていたのだった。
【聖杯】
「できる!たーちょぷ(大丈夫)」
手伝おうとする従者を振り払い、プニプニ勇者は小さな手に持った聖杯を勢いよく傾ける。本来なら口に入るはずの水は殆どがこぼれ落ちて服や床を濡らしてびしょびしょにしたが、それでも「ほら、飲めた」と言わんばかりに勇者は満足気であった。
【クルリクルリ】
従者が手を振っているのでプニプニ勇者も手を振った。遠ざかりまた近付く度に手を振る。先ほどからそれを何度も繰り返していた。
「勇者様、こっちに来てください!」
巨大なカラクリの端に乗っかってしまい、クルリクルリ回っていることに勇者はちっとも気付いていなかった。
【チャレンジ】
「できる、たーちょぷ」
プニプニ勇者チャレンジが始まった。今回は階段を下りる事に挑戦だ。
壁に手をつきながら下の段を見つめ、右足を下ろして次に左足を揃える。一段一段ゆっくりと下りていく。
「じゅー(従者)、だっこ」
そして途中で満足すると抱っこしてもらうのだった。
【人形師 新しい人形】
(また新しい人形だ)
人形師は足元にある幼児の人形を抱えて思った。大体この城には人形が多すぎる。しかも勝手に出たり消えたりするのだから始末に負えない。
(それにしてもプニプニだな)
疲労した人形師は、それが迷い込んだプニプニ勇者だと気付くまでしばらく掛かった。
【人形師 勘違い】
「お前は何の人形だい?」
「ゆうちゃ」
「勇者の人形がプニプニしてるはずないだろう?え、ご飯?人形は飯は食べないよ。本当に変わった人形だな」
人形に囲まれすぎて未だに勘違いしている人形師だが、それとは関係無くプニプニ勇者は自由だった。
「いてて、髪を掴まないでくれ」
【人形師 出入口】
プニプニ勇者が外に出たいと人形師にしがみつく。
「無理だよ。私も出方を知らない」
それでも騒ぐので、駄目元でメイド人形に頼むと、あっという間に外への出入り口と階段が出来上がった。
「こんなに簡単だったのか」
プニプニ勇者は従者に再会し、人形師は城に戻ることにした。
【雨上がり】
それは必然だった。雨が上がればプニプニ勇者が外に出たがるのは分かっていた。そして青い空と白い雲が写っている水溜りを避けるはずがない。むしろ好んでその中を歩くだろう。靴や服が濡れたってお構いなしだ。そして言うのである。
「だっこ」
だから従者が濡れるのは必然なのだ。
【リミット】
「随分、時間が掛かっていますね」
試験官の無機質な声がテスト中の従者に聞こえてきた。
「あと少しです!」
焦る従者へ試験官が静かに告げる。
「急いだ方が良いですよ。勇者ちゃんが意味不明の言葉で抗議し始めました」
従者のリミットはプニプニ勇者がぐずるまでである。
【封印】
「後は勇者の印を施すだけです」
最後に封印師はプニプニ勇者に棒状の封印道具を渡した。勇者は何かを描き始めたが、それはグニャグニャな線の塊である。
皆が心配する中、封印師は笑顔だった。
「大丈夫です。上手い下手は関係ないので」
そう言って慣れた感じで対応してくれた。
【立った】
コロコロと床を転がって遊んでいたプニプニ勇者は、従者と目が合うとヨイショと立ち上がった。
「たった」
そう言って得意そうである。
「立てましたねー」
従者が褒めると嬉しそうに抱き付いてきた。立つのが初めてでもないし特別な立ち方でもないが、とにかく楽しそうである。
【勘違い】
ある町に勇者が現れたと聞き、従者とプニプニ勇者が見に行くと、そこには戦士の若者が居て、優しく強く勇敢で町の人々から慕われていた。そして従者は思った。
「あっちの方が勇者っぽい!」
できればそのまま魔王を倒して欲しいと考え浮かんだが、結局、町人の勘違いであった。
【射手 フォロー】
ある冒険者がプニプニ勇者を見て子鼠の方がマシだとからかうと、凍撃の矢と恐れられる射手が口を開いた。
「おい、そのプニプニを侮るなよ。魔物を一撃で仕留めないとヤバイ場面だろうと、遊べと言って飛びついてくるぜ」
(フォローになってない!)
射手は更に丸くなっていた。
【素直】
「勇者様、今日は晴れてるから外でお昼にしましょうか?」
「そっと」
「勇者様、この辺りでご飯にしますか?」
「ごっはん」
「勇者様、美味しいですか?」
「あぐあぐ」
「勇者様、調子が悪いんですかッ!?」
プニプニ勇者が素直だと、それはそれで心配な従者だった。
【お歌】
歌姫は荒れ狂う魍魎の前に立ち塞がり、美しく力強い旋律を響かせる。魍魎は動きを止めてこのまま静まるかと思われたが、突如、プニプニ勇者により中断された。
「あーおーあーあー」
「勇者様、お歌は後にしましょうねー」
慌てて従者が止めに入り、取り敢えず何とかなった。
【祭り】
黄昏の空に光の模様が浮かび、同衣装の人々が神楽を舞いながら進んでいた。
「勇者様のお陰で百年に一度の祭りが開催できました。この光景を勇者様だけご覧頂けないなんて残念です…」
神司はそう言って涙した。プニプニ勇者は朝からはしゃぎ過ぎてついさっき寝てしまったのである。
【隙間】
プニプニ勇者は物と物の隙間が大好きだ。隙間を見つけては入り込むのだが、身動きできなくなると、半分怒って半分泣きながら従者を呼ぶのである。
その度に従者は「隙間に入らなければ良いんですよ」と言うのだが、勇者は良く分からないので隙間を見つけるとまた入り込むのだった。
【治癒師】
プニプニ勇者を診た治癒師が告げた。
「大丈夫ですよ。勇者様は眠っているだけです。正常なプニプニが出ていますので、もうすぐ眼覚めると思います」
冒険者たちは安堵したが一つ疑問があった。
(正常なプニプニって何?)
そして従者は心の中で治癒者をプニプニ同志に認定した。
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