傑作選「勇者と従者(01)」
ツイッターで投稿しているプニプニ勇者の物語です。
今回は「勇者と従者」中心の話を纏めました。
【登場人物】
プニプニ勇者:二頭身でオムツ姿のプニプニな幼児な勇者。
従者 :勇者のお世話係。
戦士 :勇者のクエストのメンバー。戦闘が得意。
冒険者たち :冒険を生業とする人々。勇者と共にクエストをする事が多い。
定宿兼食堂 :勇者や冒険者たちが冒険の拠点にしている宿屋
宿屋の夫妻 :勇者の定宿を営んでいる夫婦。
エルフ :精霊に近い森の種族。この個体はヒトに友好的。
守護者 :大地の神殿を守護する者。試練を与える役。
屈強な男 :勇者を訪ねて来た依頼人。
冒険者ギルド:冒険者にクエストを紹介する組合。及びその建物。
【プニプニ運搬競技会】
「そろそろ帰りますよ、勇者様」
「やー」
プニプニ勇者の返事を聞いて、従者はプニプニ運搬競技会を開催することにした。これは、まだ遊ぶ気満々のプニプニを、素早く安全に宿まで運ぶ競技である。
「あしょぶのー!」
暴れるプニプニを抱っこして、今日もゴールを目指すのだった。
【お約束】
・従者の手は離さない
・アイテムや物を勝手に触らない
・お話しするときはしーって話す
・お仕事中の冒険者さんには飛びつかない
「分りましたか?」
「わかる」
従者がダンジョン内のお約束について確認すると、プニプニ勇者はコクリと頷くが、守られたことはあまりない。
【勇者の剣】
ある所で勇者にしか抜けない剣を見つけ、従者が試してみるがビクともしない。
「ゆうちゃも!」
プニプニ勇者もやってみたいと言うので、従者が抱えると、小さな両手で剣を掴んでスッと抜いてしまったのである。
「勇者様、お手手離しましょうね」
とりあえず元に戻く事にした。
【プニプニ具合】
「今日の勇者様、何か違いませんか?」
プニプニ勇者のことを従者は定宿の主夫妻に相談していた。
「普通よ?」
「こんなもんだろ」
しかし夫妻には違いが分らない。
「でもいつもよりプニプニが多いんです!」
「お?」
従者は勇者のプニプニの量まで気になるようになっていた。
【ロールパン】
従者は抱っこしているプニプニ勇者に言った。
「勇者様の手はロールパンみたいですね」
服を掴むためにギュッと握っている手がそう見えたのだ。
すると勇者はパンという単語に反応してキョロキョロしだした。
「ぱん、どっこ?」
「どこでしょうね?」
従者はそう応えて笑った。
【沈黙】
「勇者様、これから先は口を閉じてないといけません。できますか?」
「できる」
従者が念を押すとプニプニ勇者は頷き、そして小さな両手で口を押さえた。
「その調子ですよ、勇者様」
喜んだ従者は更に言った。
「次はプニプニを抑えてみましょう!」
「できる」
注)できません。
【警戒のプニプニ】
探索中に宝箱が現れ、レンジャーが手を伸ばした時、従者が待ったをかけた。
「勇者様が警戒のプニプニを出しています!それは罠です」
「うー」
(警戒のプニプニって何?)
全員そう思ったが、プニプニ勇者を見るとピーマンを前にした時と同じ顔をしていたので信じることにした。
【ブンブン】
戦士の鍛練を見ていたプニプニ勇者は、従者に駆け寄った。
「ゆうちゃもブンブン!」
すると従者は、勇者の小さな手でも持てる小型で軽く、丸みのある剣を取り出した。
「人や物にぶつけないでくださいね」
それは世界を救った伝説の剣だが、今のところ出番はない。
「やー!」
【アミュレット】
「一族に伝わるアミュレットです。あなたを守ってくれるでしょう」
エルフはそう言うと聖木で作った飾りをプニプニ勇者へ渡す。
「お?」
勇者は不思議そうな顔で受取ると、それをアグアグしだした。
「食べ物じゃないですよ!」
口に入るようなものを勇者へ渡してはいけない。
【眠くない】
プニプニ勇者が欠伸をして目を擦っているので従者が声を掛けた。
「勇者様、布団に入りましょうね」
「(眠く)ない」
そう言って勇者はトタトタと逃げ回るのだが、最後は床の上で眠ってしまうのである。
(素直に寝ればいいのに)
勇者を運びながら従者はいつもそう思うのだった。
【試練】
「大地の神殿に入る為に、勇者は試験を受けなければいけません」
「ちゅけん」
守護者が告げると、従者はプニプニ勇者を抱っこしながら不安げに質問した。
「保護者同伴でいいですか?」
「不許可です」
その時の従者の決断は早かった。
「じゃあ止めます」
「諦めないでください」
【お腹が鳴る】
ダンジョンの出口が見つからず、焦りと苛立ちが募る中、従者が皆を集めた。
「何だ?」
訝しがっていると従者は勇者を持ち上げて言う。
「勇者様のお腹が鳴っています!」
その途端、グググーッという音が響いた。
「ごっはん!」
冒険者たちは取り敢えず食事にしようと思った。
【冒険服】
従者とプニプニ勇者は冒険服を買う為に市場へ来ていた。
「これ防御力が+2ですよ。どうです?」
「やー」
「こっちは炎耐性が付いてます!」
「ちじゃう」
「これは素早さ+1です!」
「ぷー」
勇者がうんと言わないのは、性能ではなくデザインの問題だと気付かない従者だった。
【勇者はどこ】
屈強な男が勇者を訪ねてきた。
「勇者はおられるか?」
「ゆうちゃよ!」
それに反応してプニプニが足にしがみ付く。
「宿屋の子供か?元気だな。それで勇者は?」
『そのプニプニが勇者様です』
男がプニプニ勇者を抱っこするのを見ながら、本当の事が言いにくい従者だった。
【買物】
「どうじょ」
買い物中、プニプニ勇者が従者にアイテムを持ってきた。
「ありがとうございます」
手伝ってくれたことに喜んで受け取ろうとすると、それは異形のアイテムである。
「これ何ですか!?」
尋ねても勇者は不思議そうな顔で差し出すので、結局買ってしまう従者だった。
【二人の従者】
二人の従者が現れ、どちらかを選べと言われた時、プニプニ勇者は迷わず本物の従者に飛びついた。
「じゅー」
「勇者様!」
只のプニプニではないところを見せた勇者を冒険者たちは称賛する。
「やるな、プニプニ!」
「ナイス!プニプニ」
勇者では無くプニプニの評価が上がった。
【抱っこ兼おんぶカバー】
クエスト前、冒険者たちの準備中に従者も何かを装着しだした。
「変わった防具だね」
一人が声を掛ける。
「これ、勇者様用の抱っこ兼おんぶカバーです」
「おんびゅ」
「防具は付けなくて大丈夫?」
「大丈夫じゃない時もあります」
それでいいのか、と冒険者たちは思った。
【椅子】
「ちゅわる」
プニプニ勇者が椅子に掴ってそう言った。
「椅子に座りたいんですか?」
従者が尋ねるとコクリと頷くので、持ち上げて勇者用の椅子に座らせると、ご機嫌で足をバタつかせる。
「ごっはん」
「ご飯はまだですよ」
椅子に座れば食事が出て来ると思っている勇者だった。
【散歩】
「どこに行きますか?」
「あっち」
散歩中、トコトコと歩くプニプニ勇者に付いて行きながら、いつもの広場や河原の方向では無い事に気付き、従者は尋ねた。
「勇者様、もしかして冒険に行く気ですか?」
「お?」
勇者は何の前触れもなく冒険に出ようとするので注意が必要だ。
【お菓子売り場】
(なぜ気付かなかったんだろう…)
従者は頭を抱えた。初めての街で地理に疎く、強行軍で疲れていたとはいえ、通り過ぎる人々、独特の匂い、ソワソワしたプニプニ勇者など兆しはあったではないか。
「おかしゅ」
市場の菓子売り場の前で、勇者はお菓子を買ってもらう気満々だった。
【勇者チャレンジ 階段下り】
「できる」
プニプニ勇者チャレンジである。今回は「階段を下りる」に挑戦だ。
「おりりゅ」
壁に手をつきながら下の段を見つめ、右足を下ろして次に左足を揃え、一段一段ゆっくりと下りていく。
「じゅー、だっこ」
そして途中で満足した場合は従者に抱っこしてもらうのだった。
【立ち上がる】
コロコロと床を転がって遊んでいたプニプニ勇者は、従者と目が合うとヨイショと立ち上がった。
「たった」
そう言って得意そうである。
「立てましたねー」
従者が褒めると嬉しそうに抱き付いてきた。立つのが初めてでもないし特別な立ち方でもないが、とにかく楽しそうである。
【隙間】
プニプニ勇者は物と物の隙間が大好きだ。
「じゅー!」
隙間を見つけては入り込むのだが、身動きできなくなると、ぐずって従者を呼ぶのである。
「隙間に入らなければ良いんですよ?」
その度に従者は諭すのだが、勇者は良く分からないので隙間を見つけるとまた入り込むのだった。
【ジッと見る】
プニプニ勇者がジッと何かを見ていたので、勇者には世界の色んな物が珍しく感じるんだろうと従者は思った。
「あれ、なあに?」
「どれですか?」
しかし質問された従者は言葉が出なかった。何故なら何も見えないからだ。
「…どんな形ですか?」
それでも努力はする従者だった。
【食いしん坊】
おやつがもっと食べたいというプニプニ勇者に対して従者は意見する。
「勇者様、そんなに食べると食いしん坊キャラだと思われますよ?」
その一言に冒険者たちは驚いた。
(違うの!?)
従者は気付いていなかったが、冒険者たちの間で勇者は既に食いしん坊キャラなのである。
【人違い】
「じゅー、だっこ」
そう言ってプニプニ勇者が足にしがみ付いたのは別人だった。
「どうしたんだい?」
「お?」
「勇者様、俺はこっちですよ」
すぐ傍で買い物をしていた従者は苦笑して勇者を抱っこする。
従者の偽物はすぐに見破ったのに、一般人とはよく間違える勇者だった。
【ゴロンゴロン】
腕を上に伸ばし、床に横になって転がっているプニプニ勇者に、従者は何をしているのか尋ねた。
「ゴリョンゴリョン!」
得意気に答える勇者を見て、床でゴロンゴロンする遊びなのだと悟った従者は、何が面白いのかは不明だが本人が楽しそうなので、暫く足元に気を付けようと思った。
【お留守番】
「勇者様、宿屋のおかみさんとお留守番できますか?」
「できる」
元気に答えたプニプニ勇者だが、従者が出掛けようとすると、自分の上着や帽子や鞄をかき集めて扉の前で待っている。
「ゆうちゃも!」
「静かにできますか?」
「できる」
従者は笑って勇者に上着を着せるのだった。
【冬の到来】
その日は特に寒く曇天だったが、プニプニ勇者は両手を空に伸ばして笑いながら走り回っていた。
「ぴゃー!」
はしゃぐ勇者を不思議に思いながら従者は見ていたが、しばらくして理由が分かった。
「あ、雪」
チラチラと雪が降ってきたのである。勇者は冬の到来に気付いていたのだ。
【冒険好き】
冬夜祭には贈物を贈り合う。祭が近付き、従者はプニプニ勇者に質問した。
「勇者様、贈物は何が良いですか?」
「ぼーけん!」
「好きなお菓子とかオモチャとか…」
「ぼーけん!」
勇者が何故そんなに冒険好きなのか疑問は残るものの、急遽ギルドに冒険者の募集を出す従者だった。
【従者の務め】
「すまん、お前一人に役目を押し付けて」
「これも勇者の従者としての務めです。気にしないで下さい」
戦士は従者の言葉に頷く。
「後で必ず会おう」
「すぐに追いかけます。勇者様のトイレが終わったら」
「とりれ」
プニプニ勇者のトイレ休憩では別行動になる事もあるのだった。
【奥義】
従者が見ると、プニプニ勇者は眉をひそめ、口をギュッと閉じ、頬っぺたは膨らんでいた。
(このままでは勇者様の奥義が出てしまう)
奥義、それは「抱っこしてくれないと泣くぞ」である!
「抱っこですか、勇者様?」
「だっこ」
経験則で見極めができるようになった従者だった。
※この話は書き下ろしになります。勇者は従者に抱っこしてもらうと安心します。
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