深窓令嬢と山賊
実際に居そうな気がしますが、居ないでしょw
と、彼女に笑われた過去があるので、居ないのでしょう。
昔あるところある街に、大富豪の大きな大きなお屋敷がありました。
世界一の大富豪には、一人の娘が居ます。
奥さんに先立たれた大富豪には、もう家族は一人娘しかいませんでした。
大富豪は、それはそれは誰が見ても仲睦まじく、娘と幸せに暮らしていました。
しかし、その幸せは長く続かなかったのです。
ある日、大富豪の住む街がある国と、お隣の国との間で、不幸な戦争が起きてしまったのです。
激しく長い争いの中で、大富豪の住む街が責められ、大富豪の娘以外の人々が犠牲になってしまいました。
一人残された大富豪の娘は、花よ蝶よと育てられたせいで、一人でどうやって生きて行けばいいのか分かりません。
燃え落ちたお屋敷の庭で、途方に暮れる娘の元に、火事場泥棒をしようとやって来た山賊達の、お頭がやって来ます。
お頭は、大富豪の娘のあまりの美しさに、心を奪われてしまいました。
そして、山賊のお頭は、娘に一緒に来るかと、訪ねたそうです。
『おい!娘。そんなところに居ても、のたれ死ぬだけだぞ、俺と一緒に来い』
言葉は乱暴な山賊そのものでしたが、お頭は一生懸命に娘に伝えたそうです。
「私は貴方と、ご一緒してもよろしいの かしら?」
『おっ……おう!よろしい、よろしいんだ、それよりも、名乗る前からよく俺様が、頭だと分かったな』
こうして、一人生き残った大富豪の娘は、山賊のお頭に連れられて、山賊達と暮らす事となりました。
貧乏で何でもしないと生きていけなかった山賊達と、大富豪の娘として、世間から隔離され育てられた娘との、少し奇妙な生活が始まりました。
娘は、山賊達に連れられて、山賊達のアジトへと、やって来ました。
「ここが、私が暮らす新しいお家なの かしら?」
娘の言った言葉に、娘の近くにたまたま居た、子分の山賊が答えます。
『おう! ここが、俺達のアジトだ! それと俺は、お頭じゃねぇ!』
娘は、山賊のお頭の顔を、ちゃんと覚えていましたので、子分の言葉を聞いて、心の中で思います。
(変な子分さん、私ちゃんとお頭の顔を覚えてるんだから、間違える訳無いじゃない)
今までに味わった事の無い暮らしの日々に、苦労する事も多かったのですが、娘は苦労すら楽しみ、笑顔で暮らします。
「今日のご飯は、シチューですよ、それよりも、今日はちゃんと獲物にありつけたの かしら?」
『おう! 今日は、街道を行く、荷馬車を襲って、たんまりお宝を戴いて来たぜ! 後、何回も言ってるが俺は、お頭じゃねぇからな!』
山賊達も、時々、自分達子分の事をお頭と呼ぶ娘の事を、変な娘だな、そう思いながらも、娘の笑顔に癒されて暮らしていきました。
こうして、深窓の令嬢と山賊達の、少し奇妙な暮らしは、いつまでもいつまでも長く続いて行きましたとさ。
めでたし、めでたし。
おしまい。
彼女曰く。女性が語尾に『かしら』を付けて話す必要がある場面は、この話の様に【山賊の頭】と話す時か【焼き鳥屋】のどちらか。しか無いって、私の事をバカにして、笑って来た話が元になっております。
女性「大将、とりあえず生ビールね」
大将『へいまいど!何焼きましょ?』
女性「そうね~、モモとハツ……それと砂肝も」
大将『へい! モモ、ハツ、砂肝入りました~!』
女性「あっ! 後は、かしら」
大将『へい! かしら追加で~』