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第六章に入りました。
誤字脱字報告いただけると、とても嬉しいです。
どうしてこうなったのかわからない。
いや、以前シュラが第一騎士団長であるジェンド団長とそんな話をしていたのは見かけた。
「騎士団総合合同訓練」
ヒリングス副団長の書類仕事をしていると、至急扱いで入ってきた書類がそれだった。
総合と言うことは一から十の騎士団すべてということなのだろう。
日時と場所が書かれ、訓練内容も細かく書かれている。
五回に分けて行われる内容となっていて、それならば、日常の業務に支障は出ないだろうとは思うのだが……。
問題は最終日だ。
「各騎士団の精鋭のみを集めたなかに、なぜ私が入って……。後方支援で、お偉いさんへのお茶出し係などではないのですか?」
「そんなわけはないだろう。あれだけ派手にやっておいて、目を付けられぬはずがあるまい」
ソファで優雅にお茶を飲んでいるヒリングス副団長が、愉快げに言う。
「あれ、とは、なんのことでしょうか」
どのことなのかわからずに、素直に尋ねれば、にやりと笑まれた。
「豊穣の巫女の市中警備には、我々第五も当たるだろう。魔獣に遭遇した場所は、どこだったか覚えているな?」
確かに我々の管轄内でしたが、いつもサボっているのだから、あの日だっていつも通りサボっていたに違いないのに。
「ふふん、私とて腐っても副団長だぞ。魔獣に関わる男を捕らえるために、骨を折ったのだ。まぁ、魔獣自体はお前が下したから、予想よりは楽だったがな」
ボルテス団長がいたのは知っているが、まさかこの人までとは。
確かに腐っても副団長で、魔法の扱いは一級品だものな。
「あれは面白い技だ、魔獣の魔力を奪っていただろう?」
興味深げに聞いてくる彼に、なんと答えて良いものやら。魔力吸収について、教えてもいいものか否か。
「お前の従騎士が、私には無理だと言っていたな。私のように魔力総量の多い人間は、魔力の器を空けてからでないと、魔力吸収できないのだと。私は総量も多いし、魔力の回復も早いから、実に残念だ」
自慢しているのか、それとも本当に残念に思っているのか、微妙なところだ。
「だがお前は魔力の器に余裕があるんだな。離れた場所からでも魔力を抜けるというのは、実に素晴らしい、有意義な技だ。魔力渡しのように、副作用はないのか?」
ぎくりとした内心を押さえて、処理すべき書類を整えていく。
「魔力渡しとは違いますが、多少はあります。副団長、右手が空いているのでしたら、こちらの書類をお任せしていいでしょうか」
「いかんいかん、重要な用事を忘れていた。ではバルザクト・アーバイツ、頼んだぞ」
「承知致しました」
そそくさと逃げた副団長が閉めたドアにため息を吐きながら、次の書類へと取りかかった。




