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第三章
「第一騎士団長からの依頼ですか?」
怪訝な顔をする私に、ボルテス団長は頷く。
「ああ、明日の午後いちで行ってくれ。従騎士は連れずにひとりで来て欲しいそうだ」
「承知致しました」
有無を言わさぬ命令に、依頼内容を聞くこともせずに頷いた。
「そんな……馬鹿な。てっきり仮面舞踏会イベントは無くなったものだと……」
私が第一騎士団長に呼び出されたのをシュラに伝えれば、彼は顔色を変えてブツブツと呟いた。
「仮面舞踏会イベント?」
「はい。本来のヒロインが、第一騎士団長からの依頼で、騎士団員ならば後腐れがないだろうとのことで、舞踏会のパートナーを依頼されるというイベントなんですが。なぜ、バルザクト様に……」
戸惑う視線が私に向けられるが、私とて理由を聞かされていないので答えようがない。
「呼び出されはしたが、舞踏会がらみではないだろう。別件だと考えるのが妥当だと思うが」
「あっ!」
私の言葉に、彼はハッと目を見開き、それから恥ずかしそうに頭を掻いた。
「そう、ですよね。男性であるバルザクト様に、パートナーを頼むとか、あるわけないですよね。自分、早とちりしてしまいました」
そんな会話をしていたのだがなぁ……。
◇◆◇
第一騎士団が所属する基地。
同じ騎士だが、市中警備が主である我が第五騎士団とは一線を画す、貴族出の騎士のみで構成された第一騎士団は、騎士として一番の花形だ。
王族の警護や要人警護を司り、魔法も体術も一流の精鋭達。
基本的に接点が無いその第一の団長が、私を名指しで、一体どんな用なのだろうか。
そういえば窃盗団を捕まえたあの日、第一の団長が現場に居たが、それとなにか関係があるのだろうか。
騎士である矜持を胸に、怯みそうになる足を叱咤して、第一騎士団の団長の部屋を目指す。
騎士団の基地というのは同じなのに、ここは何だが空気が違う。粗野な口調や態度を見せる騎士など見かけないし、どの人物も部外者である私を静かに無視しているのに、動向はすべて見られている。
情けないが緊張で背中が濡れている、そっと魔法で乾かすがすぐにまた濡れるだろう。
顔には緊張を出さぬまま、騎士団長の部屋にたどり着いた。ひとつ呼吸してから、重厚なドアをノックする。
「第五騎士団所属、バルザクト・アーバイツです」
すぐに中から、従騎士の青年がドアを開けてくれた。
「忙しいところすまないな。まずは、掛けてくれ」
部屋に通されるとすぐに第一騎士団の団長である騎士ジェンド・フレグラントは、際立つ容姿はしていないが、人好きのする穏やかな表情で出迎えソファを勧めてくれた。
さすがは騎士団の花形である第一をまとめる方だ、目下の者に対しても如才ない。
「ありがとうございます」
一礼してジェンド団長の向かいに座ると、彼と彼のうしろに控えている従騎士の青年から観察するような視線を向けられるのを感じる。
居心地の悪さを感じつつも、背筋を伸ばして正面のジェンド団長を見る。
「そう緊張しないでくれ、実は大変申し訳ない願いがあるのだ」
「どのようなことでしょうか」
他に所属している騎士に依頼するのだから、よっぽどの事案であるとは思うのだが。私に白羽の矢が立った理由が、わかるはずもなく。
居住まいを正した私に、ジェンド団長は少し躊躇してから口をひらいた。
11月がラスト1週間だー!
秋の大創業祭、じゃなくて大完結祭りに間に合わないー! 大変だー!!(涙目)




