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男装の騎士は異世界転移主人公を翻弄する  作者: こる.
第二章

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20/66

■□■5■□■

 今日の割り当てを確認して町に出る、途中までは今回ペアを組んだヒリングス副団長と従騎士のケンセルも一緒に歩いていたが、自分は町中をまわるから私たちは中心から離れたところを巡回をするようにと言うと、練習用の擁壁のある公園を落ち合い場所にして別れてしまっていた。


 近場を巡回して空いた時間は自宅にでも戻り、暇を潰してくるのだろう。仕事はさぼるが、あからさまに騎士団に泥を塗るようなことをするような人ではないことが、せめてもの救いだろう。


「巡回に俺、いえ、自分のような若輩者が付いていってもいいんですか?」

「従騎士を連れて歩くのは、なんら問題ない。今後騎士になるための訓練だからな」


 心配そうに聞いてきたシュラに、安心させるようにそう答える。


「そうなんですね、よかったです。それにしても、従騎士の座学では、巡回は騎士が二人ひと組で行うと聞いてたんですけど、いいんですか?」


 一人で巡回すると咄嗟の場合の対処や、あるいは単独行動で何か良くないことをする者が出かねないので、二名場合によっては複数名での巡回が義務づけられている。勿論この時の人数に、従騎士は含まれない。


「よくはない」


 苦り切った顔で答えると、察してくれたのか彼はそれ以上聞いてはこなかった。

 恥だ、恥ずかしい。苦い思いが胸を満たし、いつもより早く足を動かす。


「路地や町の様子に注意を払うんだ」

「はいっ」


 私の後に従う彼に言葉少なに指示を出す。目と耳、それから気配。五感を使って周囲を警戒するのだ。

 ちらりと振り向いて見たシュラは、控え目に周囲を観察している。その目は一生懸命に、ここの地理を覚えようとしているように見える。


 大まかなところは覚えていると言っていたので、記憶とすりあわせをしているのだろう。

 言われずとも自分のできることをしようとするその姿勢が、とても好ましい。


「座学で習ったかもしれないが。我が第五騎士団が平時に担当しているのは、王宮の東側にある貴族が多く住む地域の警戒だ。西側は第四騎士団が担当しており、平民の住む地域は第六、第七騎士団が担当だ」

「はい」


 より有力な貴族は西側に多く、東側には生粋の貴族だけでなく、第二擁壁に近づくほど一代貴族や大商人の邸宅も多くあり、高級な店が建ち並ぶ。そして第二擁壁とぐるりと王都を取り囲んで建っている第三擁壁の間に、平民の住居や店が密集している


 第二擁壁のみ平時は下りているから閉塞感は無いが、まるで平民街と貴族街を分けるようにある第二擁壁……有事の際は皆を内側に入れて擁壁を上げるが、逃げ遅れる者も居るだろう、そしてそれはこの擁壁よりも遠い場所に居を構える平民に違いないんだ。

 シュラが言っていた魔獣の暴走がおこれば、最悪の場合第二擁壁でさえも突破されるかもしれない。


 腹がキリッと痛くなる。


 暴走を起こさずに済む方法というのもあるらしいが、それは絶対ではなく。その手順とやらを辿るために、手助けしてくれと請われた。

 未来への手順。未来というのは、いくつもの分岐を辿っていくのだという。

 その先にある出来事を、分岐を彼は知るのだと言う。


「バルザクト様、あそこが第二擁壁ですか?」


 声を掛けられて、ハッと意識を戻す。いかんな、周囲に注意を払えと言っておいて、自分がぼんやりするなんて。

 気を取り直すと、興味津々で先を行く彼の後に続いて、第二擁壁が下りているその場所へ行く。


「凄いですね、ずーっと向こうまで続いてる。画面で見たよりも、ずっと綺麗だ」


 感動を露わに、彼は公園を見渡している。

 擁壁の周囲は公園として広く空間が取られており、ほどよい緑のその公園が東西に延びているのだ。だが、公園にはほとんどひとけがない。


「出店とかあれば、もっと賑わうんじゃないですか? もったいないな、こんなに気持ちのいい場所なのに」

「出店は禁止されている。擁壁ありきの場所だからな、人が居ないくらいのほうがいいんだ」

「そういうものなんですか」


 残念そうな彼の声には返事をせずに公園内を巡回していると、正面から同じような騎士服を着た人物が四名こちらに向かっているのが見えた。「第六騎士団の人たちでしょうか? でも……」


 彼らの顔を視認できる距離で、口ごもったシュラの言いたいことを察する。


 そうだな、第六騎士団は同じ基地に所属しているが、あの四人は見たことが無いな。第六は平民からのたたき上げだから、必ず従騎士になってから騎士になっているはずで、第五騎士団よりも勤続年数が長い。


 親しくはしていないので名などは知らずとも、顔の見覚えくらいはあるものだ。それに従騎士連れでないことも怪しいし、人相の悪さ……それはまぁ、第六の面々とそう変わらないか。


「これ、イベントです。声、掛けてもいいですか」


 低く問う彼の声に、私は内心の動揺を隠して承諾した。


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