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第10話:逃げ場

「寒っ…」



どのくらい走っただろうか?

嫌というほど雨水を吸いこんだ服が重たい。

そしてなにより、すごく寒かった。



この国「シャナグフィア」は砂漠に隣接している小国だ。

その影響もあってか、雨が降ることは多くない。

今日のような雨の日はとても珍しいのだ。



そんな他愛もないことをぼんやり考えている自分に苦笑いが漏れる。

思いの外、一人になっていても冷静だった。



取り残してきたティアナは今頃、どうしているだろうか。

城へ戻ったのかもしれない。

そうすれば、俺の人生は終わりだ。

ティアナの口から王へ俺のことが伝えられれば、即刻兵士たちが探しにくるだろう。



逃げ場のない俺は容易く捕まり…



処刑される─…



あの正義感の強い王が人3人を殺し、さらに窃盗までをもした自分を

見逃すなんてことはありえない。



どうせ殺される運命にあるのならば、自分の手で自分の罪を葬ろう。

母親の面影を残した、あの家で。



そう決意し、顔をあげた。

途端、虚を突かれ息を飲む。



「…どうやら神様は罪を犯した人間を簡単には死なせてくれないらしい」



ぽつりと呟いた。



目の前にはジョゼフとエレナがいた。

片手に傘を持ち、肩を上下に激しく動かしている。




「アッシュ…」



「来るな!何で…何で来たんだよ!俺は、アッシュじゃない!」



「全部、ティアナ姫から聞いたよ」



「え…?」




エレナの予想もしなかった答えにレオは言葉に詰まった。




「驚いたさ。急に店の中に姫が慌ててかけこんできて、アッシュを助けて

って言われるんだからさ。急いで店じまいをして飛び出してきたんだよ」




レオは黙って俯いた。

自分が今、どうするべきか分からない。

記憶を取り戻し、自分が犯罪者であるとわかった。

もうエレナ達のそばに居る訳にはいけないだろう。迷惑がかかる。




「俺…は」




しずくが一筋頬を伝った。

これは雨なのか、涙なのか…



ぐらりと身体が傾いた。

全身が熱い。



薄れゆく意識の中でレオは心の中で問いかけた。



【母さん…おれ、どうすればいいの…?】



今は居ぬ愛しい母親に向かって…

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