記憶(3)
アッシュくんの過去編、長くなってます。
多分、4話で終わるかと思われます・・・汗
ティアナに頼み込み、秘宝を見せてもらうことになった。
もう後には引けない。罪悪感など、抱えている余裕はないのだ。
男に言い渡された、計画の実行は明日に迫ってきている。
「よくきけ。君は秘宝を見せられたあと、すぐにそれを王の手から奪いとれ。
それからは君の仲間がすぐに迎えに来て、手助けをしてくれる。それまで、余計なことは考えずに指示い黙って従うんだ。いいね?」
これが男の言った計画だった。
朝食を摂ろうにも食欲が出ず、結局何も食べずに家を後にした。
出る時に母親が見せた笑顔に、胸がしめつけられるような思いだった。
「レオ、お父様が呼んでるわ。ふふっ、よかったわね。レオがあんなに見たがってた秘宝を見れるんだもの。言っておくけど、とても綺麗よ。私が欲しいくらいに」
無邪気に笑う、ティアナ。
その笑顔に対して、レオはひきつった笑みしか返すことができなかった。
「レオ、よく来た。正直、君のような若者が秘宝に興味があるとは思わなかったぞ。
まあ、無駄話はここまでにして、早速、見せようではないか」
現王様、ベルホルトが真っ白で豊かなひげを揺らし、寛大にレオを迎え入れる。
嬉しそうに指を鳴らし、例の物を執事に持ってこさせた。
それは、対になっている二つの黄金の腕輪。きれいな紋様とたくさんの宝石が上品にデザインされている。その美しさにしばらく見とれてしまった。
…なるほど、確かに秘宝と呼ばれているのも頷ける。
そう思ったのもつかの間、部屋は突然暗闇に包まれた。
男の計画が実行されたのだ。夜目がきくレオには驚き、固まったベルホルトと不安そうに青ざめているティアナの表情が見て取れた。
すぐにベルホルトが正気を取り戻し、何かを怒鳴っている。
その時にレオは動き出した。
わずかに空気を動かす音が響く。
素早く、秘宝を持っている執事に間合いを詰め、鳩尾に拳を見舞わせる。
執事は気を失い、膝から崩れ落ちる。ゴロン、と床に転げた秘宝を両手で丁寧に拾い、懐にしまった。あとは窓から逃げるだけ。
「レオ…?レオがやったのね…?」
震えたティアナの声。
一瞬、思考回路が停止する。心臓が早鐘をうつ。呼吸がひどく乱れた。
「動揺するな。俺達にしっかり掴まりな。窓から飛び降りるぜ」
ぶっきらぼうな声とともに体が宙を舞った。きれいな円を描き、地上で着地する。
いつの間にか二人の男に挟まれていた。そのまま、手をひかれて走り出す。
馬に乗せられ、城をあとにする。
そのころにやっと城内に明かりが戻った。今頃、秘宝がなくなって大騒ぎになっているだろう。
「ティアナ…ごめん…」
ぽつりと呟き、レオは夜の闇へと身を消した…。




