無形の剣 【 模擬戦闘 本番1 】
学校内の医務室とは別、敷地内の病院。
「…。」
病室の椅子に黙って座るレオン。
「ほら、りんご剥けたぞ」
「お、サンキュー。てか包丁使えるのか、流石だな。」
「まあ、近接特化型だし、刃物の使うのは慣れてるし、一応女の子ですから!」
「あらまwこれは失礼マドモワゼルw」
「分かればよろしくてよw」
レイナルドと私が2人でふざけあっていると
「よろしくてよ、じゃねぇよ」
「何怒ってんだレオ、りんご欲しいのかー」
「そうだぞレオ、欲しいなら欲しいって言わねぇと」
「「ねー」」
「ねーじゃねぇよ!」
〜6時間前〜
勢い良く走る足音が聞こえる
「レイナルド!!」
声の主は病院だということを忘れているのだろうか、いや、覚えていても親友が大怪我をしたのだから、焦るのも無理はない
「…まだ処置している最中だ。」
「っ!相手は誰だ!」
「仕返しでもする気か?」
「当たり前だ!」
「そうか、だけどそれはレイナルドが助かってからにしろ」
「!!」
レオンは驚きの表情を隠せない
「傷は…酷いのか」
「…氷の槍が刺さって、身体に穴が空いている。腕と足は、穴が大きすぎて殆どが千切れかけているらしい」
「っ…!」
レオンは悔しさから顔を歪ませ涙を目に溜めている
「…レイナルドは…助かったとしても、もう自分の足で立つ事も、誰かを守る為に剣を振る腕を動かす事も…出来ないのか…!!」
「っ…くくっ…」
私はレオンを騙していた。
「っ…レオ、お前知らねーの?」
「え?…」
驚きと戸惑いを足して2条したような顔をしている
「ここは戦闘要員を育成する為の施設でもあるんだぞ、ましてや模擬戦闘で全員が本気で戦うんだ、腕が千切れたり、足が千切れたり、身体が穴に空いたりするのは日常茶飯事だぞーw」
「え、え」
「まだ、理解出来ないのか?wこの病院には最新の医療器具、医療技術が揃ってるから腕、この病院にすぐ運べる環境であればミキサーなんかでかき混ぜられない限り死ぬ事はねーんだよ!」
私は笑いながらそうレオンに言った。
「…!!」
やっと理解したレオンは戸惑いと怒りの表情を浮かべる。
「お!おま…おまえ!」
「うっせー、ばかー、黙れー。ココ、ビョウイン、サケブト、ホカノヒト、メイワク、オーケー?」
「くそっ…」
レオンは悔しそうに施術室の椅子に座る
「出来ないのかっ、うるうるw」
「黙れ!!」
「お前がシャラップだよバカ。」
「〜てな事があってなーw」
「あらまw青春ですわね奥さんw」
「「ねーw」」
「だからねー!じゃねぇよ!」
病院で騒ぐ3人、さぞ迷惑な事だろう。
「なんだよレオ、何が気に食わないんだ?」
レイナルドはレオンにそう言う
「なんだよって…俺がどんだけ心配したか…」
「おい、レイ、りんご。口、オープンザプライス。」
「お、あーん」
私はレイナルドにりんごを食べらせる
「あーんじゃねぇんだよ!しかもなんでお前がレイって呼んだんだよ!」
「いいじゃねーか別に。重症だったのには変わりねーし、腕はひっついてもしばらく痛くて動かせないと思うって病院の先生も言ってただろー」
「ソフィア…聞いてくれ…、俺の親友がな、痛いのを我慢して自分で食べろと…強要してくるんだ…すんすん」
わざとらしく泣き真似をするレイナルド。
「なんとまあ!心配しないでレイ!私が看病してあげるわ!」
その悪ノリに悪ノリで答える私。
「だああああ!ちげぇよ!」
「だったらなんだよー、もしかしてお前もあーんしてほしいのか?ほら口あけろよ、あーん。」
私はレオンに口を開ける様に指示する
「なっ!…」
顔を真っ赤にして戸惑うレオンを見て、ニヤニヤするレイナルド
「も、う帰るぞ!明日、また来るからな!」
急いで帰ろうとするレオン
「りんご美味いけどくわないのかー?」
「いらねぇよ!あとレイナルド!ニヤニヤすんじゃねぇよ!バーカ!」
勢い良くドアを閉め足早に病室から離れるレオン
レイナルドはその様子を見て爆笑する
「なんだよあいつ。」
「まあまあソフィア、レオンああ見えて女の子に耐性ない子だからw」
と、レオンを擁護しながらも笑いすぎて涙を浮かべている
「まったく、ソフィアもレオも面白くて俺笑い死にしちゃうぜ」
「そりゃよかったな、ほらりんご最後の一切れ」
「おう、サンキュー」
シャリシャリといい音を立てながら咀嚼するレイナルド
「うし、レイも元気なったし、一安心したから私も今日はかえるぞー」
「おう、気をつけてな!」
「はいはーい」
手をひらひらと振り、私もレイナルドの病室を後にした。