無形の剣【 0 】
「諸君、入学おめでとう、ようこそグラシア特別学校へ。
私が学校長の セオフィラス = グラシア だ。
諸君達は、もう分かっているとは思うが、ここは普通の学校ではない。
教師や、ほか職員全員がこの学校を拠点とする特別な構成員である。
世界は、昔のように安全ではなくなった。
今や、混沌こそがこの世界である!」
校長の長話が始まった。
この学校の校長は話が長いと、入学する前から耳にはしていたので心構えはできていた。
時間にしておよそ40分ほど経ってやっと校長の話が終わり、私達は自分達のクラスへ移動する。
「はい、じゃあ全員席についてください。空いている席ならどこでもかまいません。」
私は窓側の後ろの方に座った。
「全員座りましたか、じゃあ自己紹介します。私があなた方 〈 C 〉クラスを受け持つ
ヘリベルトです。よろしくお願いします。」
生徒たちから拍手がおこり、私も拍手をした。
「校長の話は無駄な事を言っている部分もありわかりにくいので私からもう一度皆さんに簡潔に説明します。」
(最初からあの校長に話をさせるなよ!
無駄に長すぎんだよ!)
「このグラシア特別学校は世界中から仕事の依頼を受けています。民間人からであったり、企業からであったりします。
あなた方の生徒はここで様々な訓練を行い、依頼を遂行してもらいます。
生徒はこの依頼の報酬として出るお金から学費、寮費などを全て払っていただきます。」
(生徒が全員真剣な顔になってるから、本当の事なんだろうな)
「皆さんも知っての通り、今は昔とは違い、人だけでなく、突然変異種であったり私たちの住んでいる星の外から来た生物がそこら中に生息し、とても危険な状態です。
依頼の7割以上が戦闘、討伐の仕事なので命を落とす可能性が極めて高い。
その可能性を少しでも低くするために訓練をするのがこの学校です。」
私も入学前から聞いてはいたけれど、改めて聞くと恐怖や不安が襲って来そうな話だ。
「以上で説明は終了です。質問のある生徒は後で聞きに来てください。皆さんは一度寮へ行き学校規定の装備に着替え、2時間には訓練用体育館へ移動してください。」
全員がぞろぞろと寮へと歩き出した。
どうやら寮は3人部屋らしいのだが、人数の関係で私は1人だけらしい。
「うぉ〜…」
(わかってはいたけれど、3人用の部屋で1人だと広くていいな!
むしろ3人でも広すぎるくらいの大きさの部屋だろ…)
私は荷物を整理し着替えた
「まだ集合まで1時間はあるな…」
(部屋でじっとしとくのも性に合わないし、見学がてらぶらぶらして体育館いくか。)
この学校は広い。1時間では回りきれないほどの施設、設備がある。
「ーー!」
「ー。」
「ん?」
騒がしく話す声が聞こえた
「おい新入生君、ぶつかっといて謝りもなしか?あん?」
「俺はぶつかってなんかいません。そっちからぶつかって来たんじゃ無いですか、センパイ。」
「おいおいおい…お前、〈 A 〉クラスだからって調子に乗るなよ?クラスは上でも経験の差で俺たち先輩の方が強えんだぜ?」
「はぁ…じゃあ好きにしてください。痛いのは嫌なので抵抗はしますけど」
(うわぁ…入学早々喧嘩かよ…学校の外も中も治安悪いなぁ)
私は影からこっそり見ていた。
「…相当自信があるみたいだなぁ…先輩に楯突くとどうなるか教えてやるよ」
「はいはい。どうぞ、セ ン パ イ 」
「このクソガキがぁっ!!」
いきなり殴りかかる攻撃をその絡まれてた男は当たり前のように避ける
「くそがぁ!うぐっ!」
空振った勢いで転びそうになりながらももう一度追撃するが、今度はカウンターを顔面に食らった
「もういいですか先輩?」
何事もなかったかのようにそう告げる。
「…いいぜ、もう手加減は無しだ。」
先輩と呼ばれる男の雰囲気が変わり始めた
身長は2メートル以上、長い爪、耳は尖り、鼻先が伸びていき鋭い牙生え、体は毛に覆われた。
そう例えるならば狼男だ。
「死んで後悔しろ。」
そう告げ、今にも襲い掛かりそうなその先輩と呼ばれていた存在を彼は無言で見つめていた
(やばいな…さすがにそろそろ、ん?)
違和感を覚えた、怖がるでもなく、逃げるでもなく、何もしない。
一つ変わったとすれば、表情から読み取れる 呆れた という感情そして彼の目は完全にその異形の狼男を見下していた
「『雷よ』」
彼がそう呟くと彼の手から電気が発せられ
狼男を襲った
「ぐぎゃあああ!!!」
声を張り上げ倒れる狼男。
倒れると姿は元の人の姿に戻っていた。
「手加減してあげたのに…この程度で気絶するなんて、経験値足りて無いじゃあないですか、センパイ?」
心配する様子はなく、当たり前のように話しかける彼
「そこの影からこっそり見てる人も出て来てくださいよ」
(あらま、バレてたのか。)
姿を現すことになった私
「あなたも、この先輩の連れですか」
「のー。ちげーよ。この人とは全くもってカンケーなし!いやあ、それにしても初めて見たよ、あれが《信仰による魔法》ってやつ?
手加減してあれとは、すげーな」
「盗み見るなんて、いい趣味じゃないな」
「盗み見してたわけじゃあねーけど、最悪止めに入らないとと思ってたからな」
「心配されるほど弱くない、じゃあな」
「おい、この失神してるやつどうすんだよー」
「ほっとけばそのうち目がさめる」
彼はそう言って立ち去った
(なんだあいつ、無愛想だな…とりあえずこのままだとアレだから医務室に運ぶか。)
「うぐっ…重い…!」
男1人を持ち上げるのは女の力では難しいものである、まして運ぶなど無理難題。
「君、大丈夫?手伝おうか?」
「おお?」
1人の青年が手を貸してくれた
「おお、助かる!」
「まあ女の子には厳しいだろうからね」
よいしょと軽く持ち上げ、医務室に運んでくれた
(いい奴も居るんだな!)
少しこの学校での生活に期待が膨らんだ。