テトラポッド
夏の海は大勢の客がいた。うんざりするぐらいにだ。
高校二年生の彼は焼きそばを焼きながら、いつバイトが終わるのかと考えていた。遊ぶためのバイトのはずが、遊ぶ時期を奪われるバイトのシフトになってしまった。
それもこれも、あの子のせいだ。
あの子は俺にバイトのシフトを無理矢理やらせるようにしやがった。最低だ。最低の女だ!
・・・好きだけど。
バイトのシフトの一件はそういうことだ。彼はなんとも言えない気持ちを抱えながら、焼きそばを焼いていた。
広島風と書きたいところだが、広島式お好み焼きと書いておこう。じゃけん使う人怖いもん。カッコいいけど。
閑話休題。
あの子は海に来ていた。
彼氏を連れて。
彼はそれを見て、うなだれながら、というか嫌気倍増で焼きそばに憎しみを込めていた。
あの子は楽しそうにしていた。
彼はイラつく。
あの子は彼氏に擦り寄る。それも水着だしなあ!!
彼はイラつく。
転転転。
なんやかんやで、あの子は海から帰った。
彼のバイトもいつの間にか終わっていた。
彼は思う。あの子はロクデモナイ女であると。
本当にロクデモナイと。
それでも彼のハートの火は消えない。
好きなんだからしかたねーじゃん!
海に沈む夕陽と彼のロクデモナイ恋の津波をテトラポッド如きでは遮ることはできなかった。