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お兄ちゃんとケンさんの出会い side ケン

かなり長くなったのでわけました。

俺達は、まだ挨拶していない番組関係者に急いで挨拶し漸く地下駐車場に停めてある高級外車に乗り込んだのは深夜0時を回った頃だった。今日は、親父と一緒に来たため運転は専属運転手に任せて俺は助手席に座った。


桜ちゃんは、心なしか疲れた表情を見せながら親父と一緒に後部座席へと乗り込んだ。


きっと、疲れの原因は最後に挨拶したアイドルグループのライチガールだ。

彼女達は、10代だけあってパワフルだった。桜ちゃんを見つけるやいなや捕って食う勢いで抱き付いて泣くわ喚くわ大騒ぎだった。はっきり言って、俺はドン引きした。まるで、一頭のインパラに群がるメスライオンまたは飴玉に群がる蟻のようだった。そんな中、場を収めたのは彼女達の食糧とされかけていた張本人だった。王子声で『お嬢様方、まずは深呼吸しましょう。せーの…』と言えば一瞬で静かになり彼女達は顔を赤らめながら深呼吸をしていた。桜ちゃんには悪いが、俺と親父はただ見てるだけしかできなかった。あんな肉食獣がたくさんいる中に飛び込むのはマジ自殺行為だ。自分の身は、自分で守る。それ、大事。

よくよく彼女達の話を聞けば、みんな声優としての桜ちゃんの大ファンらしい。今、若い女の子達の間で人気のフルボイス化したアプリゲーム(乙女ゲーム)で桜ちゃんが担当したキャラクター(学園の王子様的存在だけど腹黒い)が特に彼女達のお気に入りで攻略しようと躍起になっているらしい。


今まで、メディアに露出するどころかプロフィール非公開(もちろんプロフィール写真なんてものもない)なうえゲームやアニメのイベントなどにも参加しなかったので、藤城 桜也という声優は実はパソコンでいろんな男性声優を掛け合わせて一つの声に作り上げられたものだとまことしやかに囁かれていた。

それが、実際には存在しかなりの美貌(ゲームからそのまま抜け出してきたかのような王子顔)をさらけ出したとしたらファンにとっては、発狂ものなのだろう。


桜ちゃんは、一人一人に丁寧に対応し『これからも、頑張っていきますので応援よろしくお願いしますね。』と、天使の微笑みで言えば、『桜也様がたくさん活躍できるように私たちも微力ながらお手伝いします!!』とアイドルの女の子達はファンから信者へと見事な変身を遂げた。最後に彼女たちと一緒に写真を撮ったものが今日明日中にSNSサイト等で公開されるだろう。それをきっかけに、桜ちゃんが声優を務めたアニメやゲームが話題となり売上が伸びていくだろうと踏んだアイツ(と、おそらく親父も)は、写真の取扱いについて特に言及しなかった。あれだけ、メディアに露出するのを拒んでいたくせに。


今まで、桜ちゃんは親父にメディアに露出しろと散々言われていたのだ。まだ学生だから勉学に影響するとか最もなことを言って断り続けていたのだが。それが、ここ最近になって急に歌手デビューしたいと言い出した。どういった心境の変化があったのかはわからないが、親父は漸くメディアに露出する気になった桜ちゃんに気が変わらないうちにと即答で了承し段取りを取り始めた。


そこで、俺はどういった心境の変化があったのか後部座席に座っている桜ちゃんに聞いてみると、


「そんなの、かんなが言ったからに決まっているじゃありませんか。今、放送されているアニメで僕が声優を務めてるキャラクターが歌手デビューする場面をかんなが偶々見てたらしくて、お兄ちゃんも一緒に歌手デビューしたら面白いんじゃない?歌上手いし。って言ったんですよ。かんな、これで僕のこともっと好きになってくれましたかね?あぁ、早く彼女に会いたいです。僕、もう帰ってもいいですか?家まで送って下さい。」


と、なんとも俺達にとって微妙な回答だった。かんなちゃんの何気ない一言で俺達が振り回された感がある。だけど、会社にとって多大な利益があるとわかっているから文句は言えない。

いや、桜ちゃんがこんなヤツだってわかってたんだけどさ。かんなちゃんの意見が全てで、それに沿うように自分の人生を平気で変える。決して、俺が言っているのは大げさなんかじゃない。


あの時もそうだ。

俺と桜ちゃんが初めて会った時…高1の頃、俺はヤンチャしてるチーム(いわゆる不良グループ)のNo.2の位置にいた。だけど、今がよければいいと思うリーダーとチームをある程度拡大して平穏に過ごしたいと思う俺とでは意見が合わず仲が悪かった。俺の意見に賛同するほとんどのヤツらは、早めにリーダーを潰した方がいいと言っていたが俺は話し合いで何とかなると思ってそのままにしていた。結果的に、それが甘い考えだった。俺が一人で繁華街をぷらぷらと歩いている時、いきなり数人の男たちに取り囲まれて路地裏に連れていかれた。よくよく見ると、リーダーとそれに賛同するヤツらだった。


しまった!!俺が、一人になる時を狙ってたのか!!


そう思った時には、既に遅く抵抗する間もなく鉄パイプでボコボコにされていた。


意識が朦朧としてきて、殴られ続けてるにも関わらず体の痛みもわからなくなってきた時一人の少年が俺に向かって歩いてきた。少しあどけなさはあるが、今まで見たこともないくらいに綺麗な顔をしていて天使ってコイツのこと言うんじゃないかと思ったくらいだ。幻覚かとも思ったが、もし本物の人間だったら何の関係もないヤツが巻き込まれることになる。


『早く逃げろ!!巻き込まれるぞ!!』


大声で言ったせいか、頭がフラッとして地面に倒れ込んでしまった。

やべぇ、マジ死ぬかも。

そんなことを思っていると、ふんわりと俺の頭を誰かが撫でた。

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