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お兄ちゃんとケンさん 2 sideケン

「「続いては、ライチガールの登場です。」」


司会者の声と観客の歓声でハッと我に返った。

今、俺は生放送中の音楽番組のスタジオの隅で収録が終わるのを社長(俺の親父)と待っている。

出演者達が座って待機しているひな壇を見ると、その一番上に先程までとてつもない美貌と美声を観客と視聴者に披露していた藤城 桜也(ふじしろ おうや)が座っていた。

アイツが、ウチの会社の金の卵であり俺とヤンチャしまくった仲間でもあり俺がマネージャーしている相手だ。俺と目が合うと、はにかんだ笑顔でカメラに見えないように小さく手を振ってきた。


きっと、”うまくいったね”と伝えているんだろう。


何?あの、はにかんだ笑顔と仕草。ちょー可愛いんだけど。

社長(俺の親父)なんて、デレッデレした顔を隠しもせずスマホを取り出し写真を撮ろうとしてスタッフに止められた。気持ちはわからんでもないが、バカだ。俺も社長(親父)おうちゃんを溺愛している。長年一緒にいるからか、弟のようで可愛くて仕方がない。社長(親父)に至っては、息子というよりは娘のように可愛がっている節がある。


何十年も続いているこの音楽番組でシークレットゲストとして登場し、華々しい歌手デビューを飾るという演出は、おうちゃんが企画したものだった。


『あの番組で、シークレットゲストがいきなり登場して歌を披露するとかいう演出は今までにありませんでしたよね?今回、僕の歌手デビューにそれ使ってほしいんです。一声優でしかない僕に、番組関係者がOK出すとは思えないので、僕の写真と声優としての経歴を見せて初めてメディアに露出することを伝えて下さい。あとは、お金にモノを言わせたらイチコロです。だから、おじさん(社長)。僕の為に惜しみない労力とお金を使ってください。その代わり、僕の為に使ったお金は倍以上に会社の利益として還元させますから。』


おうちゃんは、純真無垢の天使のような笑顔で事務所の社長(俺の親父)や役員連中にそう言っていたが、俺には悪魔の囁き(誘惑)にしか思えなかった。まるで、言葉巧みに人をその気にさせ高額商品を買わせる悪徳商法のようだ。


『あの番組の演出まで変えるんだ。失敗でもしたら、ウチの会社の信用はガタ落ちだぞ?』


と、言う社長(俺の親父)の脅しにも、


『何を仰ってるんですか。失敗しないように段取りを組むのがおじさん(社長)の仕事ですよ?できますよね?それとも、僕に失敗させたいのですか?』


と、今にも泣き出しそうな顔で脅し返して自分が企画した演出を社長(親父)にポイ投げしていた。


『桜也の歌手デビューを失敗させるわけがないだろう!!俺も見に行くからな!!』


『本当ですか?それは、とても心強いですよ。おじさん(社長)、僕の為に頑張ってくださいね?』


おうちゃんが、パッと花が咲くような笑顔を見せると、それに安心したのか『まかせとけ!!』っと、社長(親父)がやる気を見せていた。


おうちゃんが、天使の顔をした悪魔だと思ったのは言うまでもない。

読んで頂きありがとうございます。まだケンさん視点続きます。

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