お兄ちゃんと私 2
前の続きです。
倉庫の二階にある事務所のようなところに入ると、学生服を着た男の人が会社にあるような大きくて立派なソファーに座って携帯ゲーム機で遊んでいた。お兄ちゃんより年上っぽいから、きっと高校生くらいだろう。
『ケン、連れてきましたよ。』
ケンと呼ばれた人は、私たちの方を見上げて暫く固まることおよそ30秒。張りつめた糸がプツっと切れたように思いっきり爆笑し始めた。
『・・・あはははっ!!桜ちゃん、マジか!!かんなちゃんって、小学生かよ!!しかも、ランドセル背負ってるし!!あははははっ!!』
小学生がランドセル背負って何が悪い。
そもそも、下校途中だったんだ!!私は!!
それを、半ば強引に連れて来たのはお兄ちゃんだ。まぁ、断る勇気もなくのこのことついてきた私もどうかと思うケド。
ムッとした顔をしていると、お兄ちゃんがポンポンっと優しく頭を撫でてくれた。そのまま、私のランドセルを外してくれて床に置くとケンさんの向かいにあるソファーに腰を下ろした。
『かんな、あまりその男を見ちゃいけませんよ。襲われますからね?気をつけて下さい。さぁ、僕のそばにおいで。もうすぐ、飲み物とお菓子を持ってきてくれますから。』
襲…
変態か!!この人、変態なのか!?
茶髪でパーマをかけてピアスいっぱい耳につけてチャラチャラしてるけど、実は小学生とかが好きなのか!?
お兄ちゃんが、小学生とかもっと小さな女の子が好きな男の人もいるから触られそうになったらすぐに逃げなさいって言ってたけどまさか目の前に危険人物がいるとは…。
思わず、サッとお兄ちゃんの隣に座り抱き付いたのは言うまでもない。
『ねぇ、桜ちゃん。何だか、かんなちゃんに怖がられてるみたいなんだけど。俺、何かした?』
『幼女・小学生が好きな危険人物と判断したんでしょう。かんな、いい判断ですよ。』
お兄ちゃんは、私を抱きしめ返すと額に軽くチュッとキスを落とした。
『…俺からすると、お前が一番の危険人物だと思うんだけど。ねぇ、桜ちゃん。Yesロリータ、Noタッチって言葉知ってる?』
『僕は、ロリコンではありませんよ。僕をこんなにも駆り立てるのはこの子だけです。』
『…いや、ロリコンじゃなくてもその言い方だと自分のこと危険人物って言ってるもんだよ。まぁ、いいや。かんなちゃん、俺小学生の女の子に欲情するとかいう変態じゃないよ。俺、年上のお姉さんが好みだから。こう、ボンッ・キュッ・ボンみたいな、ね。だから、安心して。ケンさんは、怖くないお兄さんだよ~。』
ケンさんは、宙に女性像を描くと笑顔で危険人物じゃないとアピールしてきた。
『ほん、とう…?』
『ホント、ホント!!ケンさん嘘つかなーい!!あ、そうだ!!かんなちゃん、ケーキ好きなんでしょ?俺ね、今日かんなちゃんの為に作って持ってきたんだよ?食べてくれる?』
ケンさんは、そう言うと冷蔵庫から箱を取り出しケーキをお皿に取り分けてフォークと一緒に渡してくれた。
お皿に乗ったケーキは、チーズケーキだった。
しかも、ケーキ屋さんで売られているみたいに綺麗な仕上がりだ。
本当に、このチャラ男が作ったのだろうか?
『かんな。ケンは、お菓子作りが趣味なんです。それに、見た目だけでなく味も絶品なんですよ。チャラ男だから説得力に欠けると思いますけど。』
私が思ったことが顔に出ていたらしい。
お兄ちゃんが、すかさず補足してくれた。
『…頂きます。』
一口食べると、本当に美味しかった。程よい甘さだし、甘いのが苦手な男の人やチーズが嫌いな人でも食べられる気がする。この人、今すぐにでもお店出すことができるんじゃないだろうか。プロ顔負けの腕前だと思う。
『…美味しい。プロが作ったみたい。』
『本当?喜んでもらってよかったぁ。あぁ、やっと笑ってくれた。俺さぁ、桜ちゃんの大切な女の子と友達になりたかったんだぁ。まさか、小学生だとは思わなかったけど。俺と友達になってくれる?』
こんな美味しいケーキを作る人が悪い人なわけがない。
と、いうことで二つ返事で答えた。
『よかったぁ。俺、一人っ子だからさぁ妹とか欲しかったんだぁ。これから、よろしくね。』
ケンさんは、嬉しそうな顔をして私の頭を優しく撫でてくれた。
『はい、よろしくお願いします。』
それから、今日お兄ちゃんと一緒にいた怖そうな男の人達がジュースを持って入ってきて自己紹介をされた。皆、とてもいい人達で私に優しくしてくれた。餌付けされたせいか、私も打ち解けるのが早かった。
その時の私は、お兄ちゃんが1000人を超える不良グループのリーダーをしていたことなんて知らなかったし、ケンさんがお兄ちゃんの補佐役でNo2の立ち位置にいたことも知らなかった。
そして、ケンさんが大手芸能事務所の社長子息であったことも知らない。
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