酔った勢いで朝チュン展開のOLの気持ちがなんとなくわかりました。
一旦ここで完結です。
目を閉じていても、薄っすら覚醒していくのがわかった。
私の体内時計は、土曜日と日曜日だけ正確に作動するらしい。
平日は、目覚まし時計が鳴っても無意識に止めてしまいバタバタと学校に行くというパターンがほとんどだ。だけど、休みの日となると目覚まし時計をかけてないにもかかわらず朝早くから目が覚める。
何故だ。
子供が、日曜日の朝早くから一人で起きて戦隊モノや魔法少女系のアニメを生きがいに見てるのと同じなのだろうか。まぁ、私も朝早くから起きるもんだからごはん食べながら見てるんだけど。要するに、まだ私は子供なのか。そうなのか。自分でその考えに行きついて少しヘコんだ。
ヘコんでも、寝れば忘れて元気になる。今日は、土曜日。まだゆっくり寝れる。そう思って、寝返りを打って眠りに入ろうとしたらフワっと優しく人肌に包まれた。あったかい。それに、私の好きな爽やかな香りがする。あぁ、そうだ。お兄ちゃんの香りなんだ。何だか安心する。何だか眠くなってきた。このまま二度寝に突入しよう…ん?お兄ちゃんの香り?お兄ちゃん?
バチッと目を開けると、人肌…ていうか胸板?が見えた。それに、私の唇がその肌をかすめていた。
思いっきりガバッと起き上がると、とてつもない美貌の持ち主が少し眉間にシワ寄せて「んーっ」と唸っている。まだ完全に覚醒しきれていないようだ。また眠りに入りそうな感じだし。
ていうか、お兄ちゃん裸!?何で!?
頭が真っ白になるっていうのは、きっとこのことだ。何か、マンガとか小説とかでよくある酔った勢いで…的な展開。私の場合、未成年だからお酒は飲めないから酔った勢いということはない。昨日、何かあった!?思い出そうとしても、お兄ちゃんと一緒にいた記憶が全くない。思わず、自分の格好を確認してみるとウサ耳がついたパイル地のフード付きノースリーブと短パンのセットのパジャマ。昨日、お風呂上りに着たものと同じ格好だ。なぜ、お兄ちゃんが私の部屋にいるんだ…?それに、裸だし。お兄ちゃんを睨みつけるも、当の本人は気持ちよさそうに寝ている。何だかイラッとした。酔った勢いでやらかしたOLさんの気持ちがなんとなくわかった。
それにしても、まるで一枚の絵のようだ。乙女ゲーム風で言うとスチルってことかな。美形なお兄ちゃんは、寝顔も美形なんだと改めて思った。まぁ、顔の造り自体が美形なんだから当たり前なんだけどさ、口を開けて寝てたりイビキをかいてよだれを垂らして寝てたら美形が半減するでしょ?そういう所があれば、お兄ちゃんも人間味溢れるんだけど、そういうのが全くないってところがやっぱりお兄ちゃんだよね。それにさ、勉強も凄くできるんだよ?小学校から大学まであるエスカレーター式のハイレベルな私立の学校で、常にテストでは一位を取り続けて大学でもそれを更新し続けているらしい。だから、小学校からずっと授業料免除され続けているんだって。なんて親孝行な息子だろう。
それに、ケンカも強くて数年前まで1000人以上いる不良グループのリーダーしてたしね。今は、もう解散したんだけどそのほとんどがお兄ちゃんに憧れて必死で勉強して同じ学校に行ったり、ケンさんと同じ大学に通いながら藤城グループのボディーガードとして雇ってもらいお兄ちゃんの護衛についたりしてるってケンさんから聞いた。彼らの勉強も、お兄ちゃんが見ていたらしくて親御さんからかなり感謝されて信者のようになってるんだって。今やお兄ちゃんは、不良を改心させた天使様って呼ばれてるらしい。歌手デビューしたこともあり、これから先どんどん桜也信者が増えていきそうだ。お兄ちゃんが、異世界から来た王子様かはたまた遠い宇宙からきた宇宙人のように思えてならない。
だって、ハイスペックすぎるでしょ?
このまま、世界を征服しそうで何だか怖い。
「ん…?かんな、もう起きたの?」
お兄ちゃんの顔見ながらいろいろと思い出してたら、起きたみたい。敬語じゃないってことは、まだ寝ぼけてるみたいだけど。
「お兄ちゃん、何で私の部屋で寝てるの?しかも、裸だし!!」
「ん?家でお風呂に入った後、一刻も早くかんなに会いたかったですから吊り橋渡ってかんなの部屋に入りました。裸なのは、上半身だけで下半身はきちんと穿いてますよ。昨日、シャツを着る間もなく疲れて寝たようです。」
上半身裸の状態で吊り橋渡って来たのか。この人。
吊り橋とは、私が小さい頃に隣家の二階にあるお兄ちゃんの部屋と二階の私の部屋を繋げた長い橋だ。二階同士を繋げた橋は高さもありアスレチック感覚でよく遊んでいた。部屋に入るのも、お互いが持っているドアの鍵で開くことができる。つまり、私の両親とお兄ちゃんの両親は緊急時に使えるようにと思って作ったみたいだが、困ったことにいつでも出入り可能な状態なのだ。特にお兄ちゃんが。
「上半身裸で、吊り橋渡って来ないでよ。通報されるよ?」
「あんな夜中に誰も見てませんよ。そういえば、昨日テレビ見てくれましたか?」
「見たよ。かなりびっくりしたんだけど。お兄ちゃん何も言ってくれなかったし!!おかけで、飲んでたコーヒー牛乳吹き出すわ鼻からコーヒー牛乳出るわで大変だったんだけど。どうしてくれるの?」
「あははははっ!!そうだったんですか?シークレットゲストで出演するっていう企画は、大成功のようですね。ねぇ、かんな。僕は、歌手デビューを果たしました。僕のこと、もっと好きにってくれましたか?」
お兄ちゃんは、クスクス笑いながら私に向かって手を伸ばすと優しく頬を撫でた。
「ん?お兄ちゃんのこと大好きだよ?別に歌手デビューをしたからどうとかないんだけど。」
お兄ちゃんは、フリーズしたようにピキッと一瞬固まると真剣な顔で私の顔をじっと見つめてきた。
「え…?な、なに?」
「かんな、来年16歳になりますよね?」
「な、なるけど。」
「結婚しましょう。」
はぁぁぁ!?
「ちょ、いきなり結婚って!!いろいろすっ飛ばしすぎだし!!学生結婚だし!!いろいろ問題が…」
「問題なんてありませんよ。僕が、問題そのものを作らせませんから。まだ、16歳になるまでには時間がありますからその間に僕のことをもっともっと好きにさせてみせますね。まずは、恋人になりましょう。手始めに、キスから練習していきましょうか。」
お兄ちゃんは、今までに見たこともないくらい嬉しそうな顔するとむくっと起き上がり私をトンっと押し倒した。え…?と、思った時にはお兄ちゃんの顔が目の前にいて唇と唇が当たっていた。
「かんな、キスをする時は目を閉じるものですよ?」
いたずらっぽく言うお兄ちゃんの言葉を受けて慌てて目をギュッと閉じた。
お兄ちゃんがクスクス笑いながらも、もう一度キスをしてくる。
「んっ…」
「かんな、本当のキスというものはこんなものではありませんからね?朝もまだ早いことですし、たくさん練習しましょう。」
世界がお兄ちゃんに征服されるよりも、早くも私が征服されそうで何だか怖い。
これにて一旦完結にします。まだ書き足らない部分もありますので、恋人になった後の話は、番外編で書いていけたらなと思ってます。
お兄ちゃんの甘々っぷりの過保護っぷりが発揮されそうですが。
これまで、たくさんの方に読んで頂きありがとうございました。
これからもよろしくお願いいたします。




