緑の水玉
ある国の出来事です。ある日、国民のほぼ全ての世帯の郵便受けに世帯人数分の薬が届けられました。そして薬の説明書きには安楽死できる薬だと書いてありました。
いたずらにしては悪質で大規模過ぎますが、どんな組織の仕業なのかわかりませんでした。潜在的に安楽死願望のある人は一定数いても、さすがにすぐに飲んだりはしないで様子を見る人がほとんどです。
しかし、ためらわず飲んでしまった人も一定数いてその人達は死なず、肌に緑の水玉模様が現れ、一週間で消えるという現象が起きました。
専門家による薬の分析もされて、人体に有害な物質ではないということがわかったので、この問題は調査を続けるものの実際には放置されました。
さて、そうなるとこの薬の用途です。この薬を飲んで、緑の水玉を肌に浮かべた姿で悲しみを表現したり、社会への不満がある人が「緑の水玉」デモをしてみたりして、自分の気持ちを表すのに使われ始めました。
これに目をつけた製薬会社がこの薬の成分の研究をして、色々な模様が肌に浮かぶ薬を開発しました。ストライプ、チェック、花柄、色々な色の水玉、ハート、四葉のクローバーなど様々です。
この国では気分に合わせて肌に模様を浮かびあがらせるのが大流行しました。髪の色を染めるように、化粧をするように、ボディペインティングをするようにです。
この国の流行は世界の他の国では奇異なものに映り、世界的な流行にはなりませんでしたが、そんなことは気にせずに楽しむ国民性でした。
そんな様子を観察していたある研究者はつぶやきました「真面目な社会実験だったのに・・・」




