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夏への扉
娘は絶望してしまった。
救いは自ら死ぬことを選ばないで、コールドスリープで100年後に目覚めることにしたことだ。
まさか人工冬眠技術が確立されているとは思わなかった。
娘が愛読書だと言ってコールドスリープの前に置いていった、古典SFの『夏への扉』を読んでみた。どんな気持ちでこんな古い本を置いていったのだろう? ――それは古い時代に未来を予想して書いた奇妙な未来予測だった――名作だと思った以上に娘も夏への扉を見つけて、幸せを掴んでハッピーエンドへ向かって欲しいと思った。
100年後に目覚める娘に向けて手紙を書こう。そして娘が好きだと言ってくれた、私の料理を100年後にも再現出来る最先端技術で保存してもらって、目覚めた娘に食べてもらおう。
100年後の世界はどうなっているだろう?
でも
でも会いたい。
起きているあなたに会いたい。
その未来に発明されていたなら、タイムマシンで会いに来てくれないかな?




