殺人計画
俺は弱い人間が嫌いだ。
誰だって大変だっていうのに、ちょっとのことで傷ついただの地雷だのふざけんなよ!
弱い人間の地雷を踏んでバラバラに吹き飛ばすことが出来たらとても愉快なんじゃないかな?
自殺に追い込んで息の根を止めることができたら世の中のためになると思う。
まあ、自分を弱いと言っている人間は割としぶとかったりするんだけどな。
俺はネット小説を読む層に一定の割合で弱い人間が潜んでいそうなことを嗅ぎつけて、そいつらを自殺に追い込むほど破壊力のある地雷作品を書くことによる殺人計画を立てた。
いきなり地雷作品を書いても弱い人間を多く殺すことは出来ない。まずは癒し系の作品を書いて罠を張るのだ。
そうして書いた俺の癒し系の作品は多くの人を惹きつけて人気作となり書籍化の話が来た。当初の予定とは違うけど罠を大きく張ることが出来、殺人計画は順調だ。
数年が経ち、俺は癒しの作家としてとても有名になった。平凡ではあるが可愛い動物と子供達、包み込むような大自然や人情味のある下町などを舞台にした作品は良い意味でマンネリで安定した世界観がヒーリング効果をもたらしていた。
俺はいよいよ殺人計画を実行する時が来たと思った。癒しの作品に亀裂を入れ絶望へと導いてゆくのだ。
いつもは、ほのぼのとした作風にするため、執筆前はリラックス出来るハーブティーを飲んでいたが、今回はテンションを上げるため、カフェインの錠剤を多めに飲んで、精神を興奮状態にさせて執筆を始めた。
まず、主人公の子供が可愛がっていたペットのウサギを殺して自分も自殺する場面を冒頭にもってきた。
俺はかなり久しぶりのダークな展開に興奮が高まっていき、さらにエスカレートさせようとカフェインの錠剤を追加で飲んだ。
興奮して心臓がドキドキする。ドキドキしすぎて心臓麻痺を起こし俺は意識を失った。
癒しの作家の死は、その遺作から、カフェイン自殺ではないかと思われた。
そして彼は繊細で弱い人間であったのだろうと思われた。




