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桜色の風
まだ小学生の頃のことでした。学校の帰り道を一人でいろいろなことを空想しながら歩いていると桜の木から桜の花の花びらが風に吹かれてクルクルと舞っているのに出会いました。
その様子を見ているうちになんだか心がわくわくしてきて、花びらが下に落ちないうちに捕まえてみようという気持ちになって、桜の木の下で、一所懸命桜の花びらを追いかけました。
しかし、つかもうとしてはヒラリと手から遠ざかり結局、やっと花びらをつかむまでにずいぶん時間がかかったような気がします。
それから一時間ぐらいは桜の木の下で、風に舞う花びらを追いかけて遊んでいました。
桜の香りと共に風に乗って私の小さな手のひらにやってきた桜の花びらの、あるかなしかの軽くて柔らかな感触は、あの時の桜色をした風の感触です。
新聞の読者の投稿ページで、テーマ「風」で募集があった時、書いたものです。採用されませんでした。ちなみにテーマ「映画」で投稿したものは紙面に掲載され記念品として三色ボールペンが送られてきました。