日記収集家
友人のTはどんな本のジャンルよりも、他人の日記を読むのを趣味にしており、収集している。遺品整理業者に頼んだり、オークションで落札したり、掲示板に載せたり、あらゆる伝手を使って集め、他人の日記の数々を読破してきた。
「それで、他人の日記ってどんな感じ?」
「人によって色々だね。その日の出来事に対してどう感じたか? 自分の感想を沢山書く人もいるし、天気や体重や気温やその日の食事のデータを淡々と書く人もいるし、家計簿かと思うほど、お金の出し入れに重点を置いて書く人もいるし・・・まあ、大抵その日の出来事を時系列で書いているかな」
「日記を沢山読んで、人生とは何か? とかわかった?」
「いや、人生というか特に詳しくなったのは、よその家の食事のメニューかな? 人生とは食べることとも言えるね。あと限られた時間の中でそれぞれ頑張っているよ。日記には時間が閉じ込められているからね。でも一番重要なのは行間を読むことだよ」
「行間には何が書かれている?」
「大抵トイレに行っている」
「おまえ変態?」
「というのは冗談で、絶えず呼吸している。生きている。それを感じる」




