物語葬
あなたにはないだろうか? とてもお気に入りの物語。本やゲームなどのストーリーが。その物語の世界から離れがたく心の一部を持って行かれてしまうような感覚。
完全なフルダイブ型のゲームは人体の生理的な事情によって実現出来なかったが、死後の魂的な何かの解明は進んでいった。
そして、現在、「物語葬」というものが出来るようになった。ゲームクリエイターから派生した職業である物語細工師が作る、特殊な骨壺の中に遺骨を納めることにより、死後、魂的な何かは、生前好きだった物語の世界に漂うことが出来る。骨壺には出口の穴があり、その物語への執着が無くなれば本来の死後の世界へ戻って行くことも出来る。
人気があり有名な物語の物語葬用骨壺は、大手の企業により大量生産されて比較的安く手に入れることが出来る。しかし、需要の少ない物語の場合、高額にはなるが、物語細工師にオーダーメイドで作ってもらうことになる。
私もオーダーメイドで優秀な物語細工師に物語葬用の骨壺を作ってもらうことにした。その物語は私自身が書いたオリジナルな物語だ。
一言で言えば、ゆっくりと休んでくつろげる物語世界だ。ほのぼのとしているのが売りの大量生産された物語骨壺とは違う。あれは農業をしてみたり、イベントが結構あったりする。私は、そんなことはしないで本当に休みたいのだ。
魂的な何かの解明により、死後も色々とイベントがあり、本当に休むことが出来なそうだということが分かった。だから、私は本当に休める物語葬を選ぶ。




