ファンクラブ
宇宙人のその申し出は魅力的過ぎたので日本政府は多少の葛藤はあったが受け入れることにした。
その宇宙人達はどこかの星の代表とかではなくて、自分達は単なるファンクラブだと言っていた。彼らの種族は精神感応能力に優れているが、感受性自体は非常に鈍く、何をするのにもあまり感動せず、例えば食事するのも、単に栄養を淡々と摂るだけで、楽しんでするものではなかった。
しかし、同族の中で食事にしても、何にしても感受性が強く感動しやすい個体が現れると精神感応によって、多くの人がその感動を共有することが出来、楽しむことが出来るのだった。そういう感受性豊かな個体は『能力者』と呼ばれファンクラブが出来たりした。
やがて彼らの種族も宇宙に進出するようになり、他の惑星の知的生命体に出会い、精神感応してみると、その感受性の強さは同族以上に芳醇で瑞々しいことが多く、彼らは技術提供や貿易などの有利な条件と引き換えに、精神感応で感動を味わう権利を得るのだった。
そして彼らは地球の日本という国に約百人くらいの逸材がいることを発見し、ファンクラブが出来た。精神感応で感動を共有するだけなら、こっそり出来るけど、彼らは日本の能力者に奨励金を出し、金銭的な援助をして、よりよい食事や旅行や読書、映画、アニメなどの娯楽を味わい、より強い感動を引き出すように誘導したかった。
日本政府には地震や火山噴火や台風などの災害で被害起こらないように、彼らの技術力によって援助し、また精神感応力によって世界の他の国の首脳や重要人物が何を考えているかを読み取り、日本政府にリークした。その代り、非課税扱いで日本の能力者に奨励金を支給した。
そして五年が経ち、宇宙人達のファンクラブは、十分に日本の能力者の感受性を楽しんだ。しかし、贅沢に慣れた日本の能力者達は感動がマンネリになり、感受性が鈍ったのと宇宙人達は日本人の感性に飽きてきたので、日本人へのファンクラブは解散となり、新しい能力者を求めて他の星へと去って行った。




