世界平和
高校時代の友人達と初詣で神社に来ていた。どうせだから絵馬に願いを書こうということになってみんなそれぞれ願いを書いてはしゃいでいた。俺はと言えばそんな友人達に水を差すようなことはしなかったが、正直、神様に何か願っても叶うとは全然信じていなかった。物心ついてから習慣として毎年初詣をしていたが、切実な願いからささやかな望みまで一つとして叶ったものはなかったのだ。神様はいないし、いたとしても願いを叶えたりしないだろうという結論に達していた。
「おい、まだ何書くか決まらないのか?」と友人に声をかけられ
「そうだな。どうせならでっかいお願いをするとしよう」
と俺は単なる付き合いで絵馬に「世界平和」と書いたが何の感情も込められていなかった。
それから一か月後くらい、神様の世界では今年の当番である、日本の神々の代表達がどの願いを叶えるかの会議をしていた。神様は世界中で一年に一件だけ願いを叶えていたのである。日本の神々は絵馬の中から叶える願いを選ぼうという方針を決めた。そして欲にまみれたものではなく、何の思い入れも感じられない、透明感のある清らかな願いを叶えることにして絵馬を選別すると、「世界平和」と書いてあるものが選ばれた。
こうして世界平和は実現した。




