01-07 窮犀
『今入ったけど、何処に居るんだ?』
「ぁあ?…今日はソロでやりてぇから、ほっといてくれ」
『…そうか、わかった。
怪我には気をつけるんだよ』
「一々うっせーな。んじゃな」
『安全確認は怠らず、危険なことは…って、ちょ―』
プチッと念話を切る。
「さてと、どうすっかな…」
ドドドドドっと地響きがこだまする。
後ろには十数体のフォレストベア。
今、ヤサイは森の中で命がけの追いかけっこをしていた。
―――
ヤサイはセーフエリアから更に東へと向かった。
理由はなんとなく。
西から来たので、そちら以外なら何処でもよかったのだ。
しばらく進むとフォレストベアを見つけた。
周辺の気配を調べ、そいつ1体だけなのを確認すると気配を殺し静かに後ろへと回った。
後ろへ回った後、少しずつ距離を詰めていくと耳がヒクヒクッと動くのが見えたので一気に駆け出した。
「『GUOOOO!!』」
「『GAAAAA!!』」
敵を見かけると雄叫びをあげて身を竦ませさせる。
猛獣としての迫力も満点で、HANTでは初心者の壁の1つとされている。
こちらも雄叫びをあげて相殺し距離を詰めると、フォレストベアは2本足で立向かう姿勢を取った。
身を翻してヤサイは逃げる。
虚を突かれたフォレストベアだが、直ぐに追いかけた。
しばらくその追いかけっこは続いた。
追い付かれそうになりながら逃げ続けるヤサイの前に倒木が立ち塞がる。
ヤサイは倒木の手前で前足を上げる。
「グオオッ!」
飛び越えると判断したフォレストベアは逃がすかと言わんばかりに吼え、更にスピードを上げた。
「グギッ!」
途端、猛烈な痛みに貫かれ、目には火花が飛び散った。
ヤサイは元々倒木を飛び越える気などなかった。
前足を倒木に叩きつけその反動を込めて後足を跳ね上げる。
その足はフォレストベアの顎を直撃し、頭部を高くかちあげた。
上がった顔面に更に蹴りを叩き込み、体の下に潜り込んで落ちてくる顎へ向けて角を叩き込んだ。
さすがにヤサイにも衝撃が走ったが、最初の一撃で弱っていたのだろう。
ゴリュッと角が突き刺さり、延髄を貫いた。
フォレストベアの体から力が抜け、覆いかぶさってきたので首を引いて角を抜き、体の下から抜け出す。
まだ、息をしていたので、頭を踏み潰して止めを刺した。
「さて、喰う……ぁあ?」
食事に取り掛かろうとした次の瞬間、感知範囲に大量の気配が現れた。
必死な気配と大量の敵意。
必死な気配はすぐに消えたが、大量の敵意の一部がこちらへ向かってくる気配がした。
血塗れな以上隠れることはできない。
先ほど走り回っていたので潤沢にSTがあるわけではない。
回復と相手を見極めるため待機していると、現れたのは大量のフォレストベア。
実力省みないで突っ込んだ挙句、逃げ回って集めたのだろう。
顔も見ていない馬鹿に特大の呪詛を送りつつ、逃げに走る。
そして、冒頭に戻る。
―――
気配に注意し、察知すればそこから反れることを繰り返す。
人を巻き込まないと共に、こいつらにリンクしてくる奴が出ないようにだが、このままではジリ貧だ。
前方の広範囲に多数の気配が散らばっていた。
こうなりゃ一矢ぐらいは報いてやると、身を翻す。
コンソールを開き、分けている《ライノー種:硬皮》を1つにして防御力を上げ、フォレストベアの群れに突っ込んだ。
「『GAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!!!!!!!』」
逃げていた相手がいきなり向かってきたのに戸惑っているフォレストベアたちへ向けて、最大限の雄叫びを叩きつける。
一瞬硬直した群れの戦闘を跳び越え、纏まって追いかけていたので避ける隙間の無い1体を踏み潰す。
ごすっという感じと共に重さに耐え切れず潰れたが、倒せた感じはしない。
「「グオオッ!!!」」
周りのフォレストベアが立ち上がり、腕を振り上げ爪を振るう。
後ろにいるのを蹴り飛ばし、爪は肩や背中で受けるよう動く。
台になっている奴が起き上がろうとすれば踏みつける。
硬皮が削れ、傷が刻まれていった。
四方を相手にぐるぐると向きを変えながら、どかばきごすげしと攻撃され、攻撃する。
クリティカルは避けていたが、HPは削られていく。
足元がぐちゃぐちゃする様になった頃目がかすみ始めた、限界は近い。
何体か倒した気がするが、まだまだフォレストベアは残っている。
(あと1体、ぶっ倒す!)
目の前の1体を見据えると、ヤサイはその首に噛付いた。
周りのフォレストベアが殴ってくるが構わず、力の全てをそれに込める。
「…ッ…!!」
ゴキッという感触と共に視界は真っ白に包まれた。
[どちらを選択しますか? 復活地点/冥界]
―――
草食攻略東編5死目
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48:敵強すぎ。攻略すすまねぇ・・・
49:セーフエリアから南が蜘蛛で東が熊、北はなんだっけ?
50:毒の沼地が広がってるよ。近づくだけで毒状態、死ねる
51:東の奥へ行こうとトループ組んで行ったけど、熊さんには勝てません。逃げ回ったけどだんだん増えて結局美味しくいただかれましたorz
52:なむ
53:なむー
54:沢山集まっても周りの熊呼び寄せるから、少数推奨。だが少数草食獣じゃ火力足りない・・・
55:カバが、カバさえいれば・・・
56:いやいや(笑)
57:なんだよ、カバ馬鹿にすんなよ。ライオンだってかみ殺せるんだぞー
58:うんまあ、ゾウぐらい居ればいいけど、こっちに来てた?
59:ゾウっぽいのが北のほうへ向かったという報告はあるな。
60:ゾウっぽい?
61:なんでも頭から直接足が生えてて、耳が皮膜状の翼になっていたと
62:・・・他になんかいないのか?
63:そういえば角生えた馬っぽいのが森の奥へ行ったけどどんなもん?
64:ああ、なんかいたな。でも、何かとろそうじゃねぇ?
65:うーん、でも硬そうだったから盾にはなるんじゃねぇ?
66:・・・ななななんだ、なんだ今の?!
67:おおお?!ボスモンスターの鳴き声か?!
68:セーフエリアに居るのに震えが止まらない・・・
69:・・・もしかして、こっち難易度すっごく高いんじゃねぇ?
70:かもしれんな、別方向先に攻略するか
71:賛成
72:対反
73:なんだ対反って
74:反対の反対
75:・・・おまえいくつよ(笑)
76:わかった時点でおまえも同類だ(笑)
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