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Chimera Park On-line  作者: カカセオ
第1章 クローズドβ
6/20

01-06 2日目

 呼び鈴の音が静かな室内に鳴り響く。

 動くものは何も無い、そんな中に何度もチャイムが鳴り響く。


「…ぅあ?」


 もぞもぞと床に転がっていた塊が動き出し、体を起こす。

 一つ背伸びをすると、いまだ鳴り続けるインターフォンを取る。


「…うっせーな。何だよ朝っぱらから」


『朝って、もう正午は過ぎたよ。昨日の賭け、忘れてないだろう?』


「ぁあ?…ちっ、あそこで蹴り決まってりゃ俺の勝ちだったのによ」


『ははは、それくらいは予想してたよ』


「はぁ…準備すっからちょっと待ってろ」


『了解』


 程なくして野美人(のびと)が出てきた。

 相変わらずのぼさぼさ頭によれよれのTシャツとズボン。


「いつものとこで良いだろ?」


「異論は無いな」


 てくてくと近所のファミレスへと向かう。

 平日の昼間、それなりに混雑していたがちょうど入れ替わる頃のようですんなりと席につけた。

 真治(しんじ)がメニューから高めのものを選択していく。


「相変わらず容赦ねぇな」


「これ位で痛む懐じゃないだろう」


「そりゃそうだが…」


 株や数字選択式くじで贅沢しなければ一生困らない程度には稼いでいる。

 付き合いで買った真治にも実家にある程度送ってなお、仕送りやバイトがなくても生活していける位の貯金があったりするのだが。

 気を取り直して野美人も注文するものを選ぶ。


「そういや、この後どうすんだ?」


「授業入ってるから出るよ。向こうに行けるのは夕方からだな」


「そっか」


「ノビは目一杯やるつもりなんだろう。

 制作の方は大丈夫なのか?締め切り来週だろう」


「ちょこちょこやってるぜ。ブツ出さねぇと単位出ねぇし」


 野美人は芸術学部に通っているが、この大学のは少し変わっている。

 教養部分は1年で殆ど終わらせ、残りは毎月1つ以上の作品の提出を義務付け、それの評価がそのまま単位になる。

 学部設立者はこう言った。


『芸術家になるにはまず第一に作品を創り上げる事、第二に作品を創り続ける事が大事だ。

 作品を創り上げれない者に芸術家たる資格なく、作品を創れなくなった者はただの元芸術家に過ぎない。

 我が学部はその様な者たちを一切認めない』


 閑話休題。


 その後も2人は他愛も無い話をしながら食事が運ばれてくるのを待った。



―――



『Chimera Park On-lineクローズドβのテストしていただきありがとうございます。

 メンテナンスによりアップデートを行いました。

 内容は以下の通りです。

 ・ゴーストモードの実装

 ・ログイン時の処理の変更

 ・死亡時の処理の変更

 ・転生時の復活地点の変更


 ログアウト時にゴーストモードを選択することが出来ます。

 選択した場合、PCプレイヤーキャラクターと同じ外見、能力を持つNPCノンプレイヤーキャラクターがログアウト地点に出現します。

 このNPCをゴーストと呼称します。ゴーストはPL(プレイヤー)の行動を学習したAIが操作します。

 ゴーストは白い煙のようなエフェクト(特殊効果)を足元から立ち上らせており、PCと見分けることが出来ます。

 ゴーストは死亡するか、PLがログインするまで存在します。ゴーストに再出現(リポップ)はありません。

 ゴーストは成長しませんが成長補正を蓄積し、次回ログイン時PCに付与されます。

 ただしゴーストが死亡した場合、寿命減少も付与されます。

 また、ゴーストが戦闘中にログインした場合、戦闘終了まで冥界(ロビー)でお待ちいただきます。その戦闘が終了しますとゴーストは消失いたします。

 その間、観戦が可能です。


 ログイン時の処理が変更となります。

 これまではログインした場合、ログアウトした地点にて開始されましたが、今後は冥界中央広場から開始されます。

 その後、新たに設置された降臨門から現世(フィールド)へと向かっていただきます。

 降りる場所はログアウトした地点から半径100mの円内で自由に選択できます。ただし、高低差によっては選択範囲に含まれない場合があります。

 ログアウト地点はゲーム内で1時間以上経過した後でなければ更新されませんので、ログインログアウトを繰り返してのワープは事実上不可能となります。

 なお、ゴーストモードを使用し、死亡していた場合は復活地点から開始となります。


 死亡時の処理が変更となります。

 死亡した場合、即座に復活地点へ向かうか、冥界へ向かうかを選択できるようになりました。

 冥界で各種施設を利用し、降臨門を通って復活地点へ向かうことが出来ます。

 なお、死亡時の寿命減少の結果寿命が尽きる場合、選択肢が出ずに寿命として冥界へ送られます。

 これに伴い、冥界滞在時のステータス状態枠に死亡時ならば[死亡]、寿命時ならば[寿命]と表記されます。

 ゴースト死亡時の場合も同様の処理が行われます。


 転生時の復活地点が変更となります。

 これまでは死亡又は転生する際は直前に訪れたセーフエリアが自動的に復活地点となりました。

 しかし、そのままでは生存が困難な状況に陥るとの意見が多数ございましたので、転生する際の復活地点をこれまで訪れたセーフエリアの中から選択できるように変更いたします。


 ログイン時及び死亡時にも転生門を利用することは可能です。

 ただし、生存時間から算出されるFPは寿命によって冥界に来た場合にのみ支給されます。

 また、ゴーストの蓄積した成長補正は降臨門を使用した場合にのみ付与されます。


 それでは、引き続きChimera Park On-lineクローズドβのテストをよろしくお願いいたします』



―――



「さてと、そろそろ森に行ってみっか」


 成体2になり、ヤサイは先へ進む決意をした。

 Wikiの情報によると草食獣開始地点のセーフエリア(石舞台)から東に行った森の中に新たなセーフエリアがあるという。

 なぜ東と判るのかというと、セーフエリアは真四角でそれぞれの角に東西南北と書かれた石碑がたっているからだ。

 セーフエリアの近くに居るのは狼、鹿、猪だが、森の中にはその他にもまだまだいるという。

 ヤサイが態々森を選んだのには理由がある。

 エイプ種―トールの野望に必要な因子だ。

 初期選択できる種族にモンキー種もエイプ種も無かったので、PCには存在せずトループ組んで食うのは無理だろう。

 今のところ見つかってはいないので、そのセーフエリアを拠点に森の探索を行うとしよう。

 見つけた所ですぐにどうにかできるとはヤサイも思っていない。

 樹上に対する恒常的な攻撃手段を持っていないからだ。

 これがタイガー種などならば、木に登っていけるのだろうが、さすがにこの体では無理だろう。

 木を蹴倒せるか、最低でも強く揺すって落とせるぐらいになるのが相手取る最低限度。

 このゲームには寿命という制限があるので、時間と相談して育成計画を立てる必要があり、生息区域の確認はその材料の一つだ。


(《肉食》の借り返さねぇとな)


 こうしてヤサイは鬱蒼とした森に踏み込んでいった。

 辺りの気配を調べて安全と判断し、とりあえず木を齧ってみる。

 《肉食》を取ったからか、肉は肉の味が、草は草の味がするようになった。

 それでは木はどんな味がするかと思ったのだ、鹿の食害がどうのと聞いた覚えもあるしたぶん食えるだろう。

 ぼりぼりと噛み砕くと、塩煎餅のような味がした。

 他の木も齧ってみたが、同じ種類の木なのだろう、同じような味がした。

 ふと、木を齧って斬り倒すのはどうだろうと思ったが、その間攻撃受け続ける可能性と、自分の方に倒れてくる可能性を考慮し、廃案とすることにした。

 食うのを止め、しばらく森を進むと前方から音がした。

 音を立てないように近づき目を凝らす。

 濃緑色の猪―フォレストボアだ。

 地面に顔を突っ込んで何かを食べている。

 もしかして、アレがあるのだろうか?

 森茸塊(もりだけかい)、ふざけた名前だがHANTに在る食材で所謂トリュフだ。

 色は油膜光沢のある緑で、中までその色に染まっている。

 生えてる間はフォレストボアだけが嗅ぎ取れる匂いを出すという設定で、フォレストボアを調教(テイミング)したPLの良い稼ぎになっていた。

 3時のおやつにちょうど良い、そう考えたヤサイは一気に距離を詰めた。

 フォレストボアがこちらに気づき顔を上げる。


「!! 何奴?!」


「『GAAAAA!!』」


 雄叫びを全力でぶつけ、居竦みによる硬直を狙う。

 狙い通り硬直し目を白黒させてる隙に更に距離を縮め、直前で身を翻して後足で顔面に蹴り付ける。


「へぶるっ!!…|いああ、おうおあっああ《貴様、良くもやったな》! |ああいあおあいいいえうえう《我が牙の錆にしてくれる》!!」


 一撃では落ちなかったようだ。

 が、基本的に頭部は弱点、それなりのダメージは期待できる。

 フォレストボアの顔面は血だらけで舌が回っていない上、ふらついている。


うあえ(喰らえ)!!」


 突進、なんだろうがその状態で十全の力が発揮できるはずも無い。

 ヤサイは飛び上がり、四足を揃えて真上から蹴り付ける。


「ぶべらっ!!」


 ごぎっと背骨が折れる感じがして、フォレストボアが潰れた。

 ヒクヒクっとしていたが起き上がる様子は無く、やがて止まった。

 ヤサイは周辺の安全を確認し、フォレストボアが顔を突っ込んでいた地面に目を下ろす。

 予想通りてかてかした緑色の欠片が埋まっていた。

 フォレストボアの食いかけだが構わず口にする。

 トールに匹敵する旨さだった、一口分しかなかったが

 隠しアイテムな分、成長補正が高いのだろう。

 成長補正と旨さは比例すると考えた方がよさそうだ。


(そういや今土一緒に食ったな。…石とか食ったら成長補正つくようになんのか?)


 HANTでは鉱石の外殻を持ったモンスターも存在していた。

 もしかしたら、鉱石を食べ続けていれば身に付くのかもしれない。

 しかし、どこまでHANT準拠の設定なのだろうか。

 HANTでは植物系のモンスターも存在していた。

 こちらでも何処かに居るのだろうか、今のところ見かけないが。

 考えていても仕方が無い。

 エイプ種を見つけた後にでも山行って洞窟探して石食いつつ色々と掘ってみよう。

 その為には何か掘る為の形態が必要だ。

 足裏に角付けて削岩機とかやれないだろうかと考え、コンソールを開き、角を前足の裏に付けてみる。

 結論から言うと可能だった。

 角は一本しかないので片足にしか付ける事が出来ず高さのバランスが合わなかったので出来るだけ縮める。

 試しに木に叩きつけてみると、木にめぎっと足型が付いた。

 角を沢山とって付ければ掘削に効果あるだろう。

 左右の偏りで歩き方に変な癖が付くと困るので、角を頭に戻す。

 フォレストボアを食べて森の奥へと進んだ。

 その後、フォレストディアーやフォレストウルフ、フォレストキャタピラーに出合いそれなりに美味しくいただいた。

 そして、休憩を挟みながらの翌日の夕方にようやくセーフエリアに辿りついた。



―――



 キメラボ変態4着替え目


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 ・


202:何か出尽くした感があるな・・・


203:そうだな、因子それほど取れてないから部位増やすぐらいしか替えようないしな。後ガチャ


204:因子の条件出てたっけ?


205:トループ組んでた奴の死体食べたら、その奴のが付いたって聞いたな


206:まじか。よしトループ組んでくる


207:付かない場合もある。というか同じトループでも同じ死体食べてもある奴はついて別の奴だとつかないとか分けわかんない状況らしい


208:うへ、条件不明か。とりあえず殺し合い始まりそうだ


209:うぃきに付いた時の状況報告上がってたけど、寿命で死んだパターンが一番多いよ


210:そうか、仲間は大切にしましょう。年寄り大歓迎


211:(笑)


212:後は特定の種類を一定量食べると付くらしいとかかな。ラビット種は確認済み


213:なに、そんなにあくまが居るのか?!


214:あくま?


215:草食獣だと言葉話すんだよ。しかも無駄に設定の凝ってんの(笑)


216:うへ、さすが運営。でも、言語のSAS切ればいいんじゃねぇ?


217:その手があったか! だが、俺にはあのもふもふは殺せない・・・


218:うん、まあ強く生きろ(笑)


219:流れ無視してずざっと報告。頭と胴がくっついた


220:えっ、何言ってんの。普通じゃねぇ?


221:あっ、すまん判りづらかったな。頭と胴が合成できた


222:へ?


223:?!


224:なにっ?!


225:(笑)


226:肢も目も全部つけれる。大きさは頭と胴の中間が基本で形状はほぼ頭


227:運営は俺たちに一体何をさせたいんだ・・・


228:頭って弱点っぽいのに的でかくなるとか(笑)


229:口が大きくなるから噛付きには向くんじゃないか?(笑)


230:1頭身始まったな(笑)


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